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▲ 世界中が雨だったら 市川拓司 
4104767018世界中が雨だったら
市川 拓司
新潮社 2005-06-29

by G-Tools

らしくない。これが最初の感想です。

市川拓司さんといえば・・・というイメージは、私の中ではすっかり固まっています。私の好きな「恋愛写真」も、「いま、会いに行きます」も、「Separation」も「弘海」も。登場人物はどこまでも優しくて、ストーリーはとても切なくて、愛に満ちた本を書く人。泣かせてやる!という意欲に燃えた本を書く人(笑)でもあります。

でも、この本は違います。きれいな表紙とタイトルから、今までの市川さんと似たような作品を予想していたので驚いてしまいました。物語が黒いんです。ダークなんです。死の近くにある物語であるという点は、市川さんらしいのですが、読みながら途中で、何度か作者を確認してしまったくらいです。

・琥珀の中に
華奢な女性ばかりを描いていたイメージのある市川さんですが、この作品の恋人は、太っています。それだけでも十分意外なのに、ストーリーも暗かった・・・。主人公は高校生で、高校生活がテンポ良く描かれて、読みやすいんです。でも、終盤、少女の内側にある闇が描かれるにつれ、市川さんに対するイメージを改めざるを得ませんでした。

・世界中が雨だったら
一番印象的だった物語。テーマはいじめと、虐待。さびしくて、悲しくて。胸をしめつけられる物語です。いじめられっこの「僕」に起こる「何か重大な事」は暗示されるだけで、はっきりとは書かれないままストーリーが進んでいきます。その謎は、終盤で明かされるのですが、「僕」の能動的な行動だったところが、好きでした。そして、お姉さんと「僕」を好きだった少女の会話や、その後のお姉さんの考えにはすごく共感しました。ただ・・・最後のページは、私はいらなかったな・・・。

・循環不安
26歳になっても、一度も女性と付き合った事がない。愛し方がわからない青年が、愛を求めて転がり落ちていく様子を描いています。母親との関係がちょっと・・・ついていけませんでしたけど。この作品はジャンルとしてはホラーになっちゃうんだと思います。

「琥珀の中に」以外は、最近書かれたというわけではなく、市川さんがベストセラー作家になる前に書かれたもののようです。つまり、もともと、彼にはこういう引き出しもあったんですね。帯に「ここにいるのはもうひとりの僕です」と、あるのですが、つまりはそういうことなんでしょう。まだまだ色んな作品が書ける作家さんなんですね。これからに期待できそうで嬉しいです。

ただ、この本はあまりにも、乙一さんに似すぎている。そして、勇気を出して言えば、どれをとっても、乙一さんの似たような作品に負けている、と、思いました。(ああ、言っちゃったよ・・・)
| あ行(市川拓司) | 12:39 | - | - |
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