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■ ビネツ 永井するみ
4093797358ビネツ
永井 するみ
小学館 2005-05

by G-Tools

エステ業界と、そこで働く女性たちの人間関係を描いた・・・ミステリー。一応ミステリーなんですよね、これ。6年前に「神の手」を持つ、と言われたサリさんというエスティシャンが、強盗殺人で亡くなったという事件の、真相を追っているんです。でも、どうもこの本筋が、中途半端というか。本筋だけど、なくても良かったんじゃないの、そのエピソード、という状態になっています。そのほかの部分が、濃厚で、興味深かったからです。

主人公は、マッサージを得意とするエステティシャン・麻美。彼女は、高級エステティックサロン「ヴィーナスの手」の社長・京子に、あなたは「神の手」を持っている、と、スカウトされ「ヴィーナスの手」で働くようになります。そこで、6年前に死んだサリさんの後釜として雇われた事を知り、サリさんの事件に興味を持ち、調べ始めるのですが・・・ミステリーであれば探偵役であるはずの麻美は、途中からその事件への興味をじょじょに失い、あるものに魅入られ夢中になってしまうのです。

やはりこの本の見所は、ドロドロの人間関係。「ヴィーナスの手」の社長・京子と、夫・安芸津弘庸、弘庸の連れ子である息子柊也、弘庸の愛人・みどり、そしてそこに巻き込まれていく麻美。このあたりの人間関係は、曖昧に微妙にぼかされつつも、ドロドロでした。それに「ヴィーナスの手」に、麻美より前にスカウトされた、結花というエステティシャンの嫉妬と悪意はやっぱりドロドロ。また、「ヴィーナスの手」の客である綾乃と舞の関係もすごいです。高慢で、同僚である舞を見下げる発言を繰り返すわりに、舞の足を引っ張り、舞を傷つける事に余念がない綾乃。仕事はできるのに、要領が悪く、自分に自信がなくて、綾乃の真似ばかりしている舞。お互いの競争心は本当にもう子供っぽくて、ドロドロ。どこもかしこもドロドロで、読み応え、ありました。

ただ・・・麻美という主人公は、好きになれなかったなあ。仕事に情熱を持っていて、自分の可能性を信じてて、努力家で、でも弱かったり、騙されやすいところもあって。好感を持てそうな主人公なのに、なぜか好きになれなかった。

本人が「エステティシャンにはお客様の気分を感じ取れることが大事」とかなんとか、しょっちゅう言っているわりに、他人の気持ちを全然考えてない自己中な女性だったから、かな。出る杭にならないようにと仕事の手を抜いてみたり、スカウトされればされたで他のスタッフを見下していたり。柊也があらわれたとたん、今まで甘えっぱなしだった彼氏をあっさり振って、でも励まして欲しい時には電話して。

ミステリーとしての結末は、単純じゃないところが、私は好きでした。はっきりとは描かれていないたくさんの恐ろしい犯罪。この先、麻美はその何も知らないまま、崖っぷち人生を歩いていくんだ、と、思うとぞっとしました。余韻の残るうまい終わらせ方だと思います。それからやはり、私は全然詳しくないので、エステ業界の裏側を描いた業界ものとしておもしろかったです。
| な行(永井するみ) | 18:04 | - | - |
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