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● デッドエンドの思い出 よしもとばなな
4163220100デッドエンドの思い出
よしもと ばなな
文藝春秋 2003-07-26

by G-Tools

あとがきで著者が、「出産をひかえて、過去のつらかったことを全部あわてて精算しようとしたのではないか?」と述べているような短編集。5編収録されていますが、すべて若い女性が主人公で、しかも、全員が相当ハードでシビアな環境にあります。彼女達が、じっと傷を癒し、静かに世界と折り合っていく様子を、丁寧に描いています。

・「おかあさーん!」
幼少時母親から虐待を受け、祖父母に育てられた「私」は、同棲中の婚約者とやりがいのある仕事があって、すぐ目の前に幸せがあるのに、なかなかそれを受け入れられません。そんなある日、彼女は社員食堂で、毒を盛られて倒れてしまいます。退院後すぐに仕事に復帰する彼女ですが、本当は身体も心も無理をしている事に、自分で気付く事ができず、どんどん追い詰められていきます。「虐待を受けた子どもは、自分の体の痛みと心を切り離すことができる」という仮説が、その理由としてあげられています。

わたしも、自分の「無理」に気がつけないタイプで、大きな失敗を何度もしているので、かなり身につまされるものがありました。そして、「無理」をしないために大切なことは、周囲の人たちの優しさや親切を、ひねくれずに受け止めることだと、常々思っています。(迷惑をかけていいという意味ではないけど)。だから、この小説は、けっこう好きでした。

・ともちゃんの幸せ
この本で、一番短い小説。神様の存在についてはどっかにおいておいて、ともちゃんには、絶対幸せになって欲しいなあ。

・デッドエンドの思い出
遠距離恋愛中の婚約者にあいに行ってみたら、そこで彼は別の女性と暮らしており、彼女と婚約し、結婚の日程も決まっていた。という最悪の状態から始まります。主人公のミミは、実家の家族がとても仲が良くて、たくさん愛されて、安定した環境にいる、育ちのいいお嬢さん。ミミが実家に「え〜ん!」と泣きつくのではなく、これは自分の悲しみだから、今は家族と距離を置こう、と考える。その部分が好きでした。

これこそまさに、この短編集のほかの主人公達が持ち得なかった、生きていく上のたくましさだと思います。本当の育ちの良さって、こういうことだよね、たぶん。一見無防備で、弱く見えるミミが、実際には一番強く、賢い。

ミミが居候することになる、バーの店主西山君も、素敵な人でした。さすがタイトルロール。短編集の最後を飾るにふさわしい、後味のいい小説でした。
| や行(よしもとばなな) | 21:39 | - | - |
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