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● 黄昏の百合の骨 恩田陸
4062123320黄昏の百合の骨
恩田 陸
講談社 2004-03

by G-Tools

『三月は深き紅の淵を』『麦の海に沈む果実』『図書室の海』、それから『殺人鬼の放課後ミステリ・アンソロジー2』の中の「水晶の夜、翡翠の朝」にリンクしている作品です。(他の作品にもリンクしているかもしれません。)これらの作品をすでに読んだ人には、ぜひオススメです。特に、『麦の海に沈む果実』が好きな人は絶対に読まないと。続編ですから。

最近多作だったわりに、わたし的にはイマイチ、な感じだった恩田陸作品ですが、久しぶりにこれは好きでした。まずタイトルが好き。装丁も素敵。今回は図書館で借りて読んだのですが、ハードカバーで買っちゃおうかなあ。

主人公は『麦の海に沈む果実』の理瀬です。中学生の頃より賢く、現実的に、そしてよりブラックになっています。美人で物静かで頭が良くて生まれついての悪女。でもまだ高校生で「憧れの従兄弟」や「気になる男の子」がいたりする。とても、魅力的な主人公です。理瀬のキャラクターといい、ストーリーといい、タイトルといい、道具立てといい、「アンニュイ」という言葉がピッタリです。

理瀬が「魔女の家」と噂される洋館に、祖母の遺言に従ってやってくるところから物語は始まります。遺言は「自分が死んでも、理瀬が半年以上住まない限り、家は処分してはならない」というものです。この家にはそれぞれいわくのありそうな、理瀬の二人の叔母が住んでおり、祖母の一周忌には、理瀬の従兄弟である稔と亘もやってきます(「図書室の海」の稔と亘です)。

理瀬が、2人の叔母や同級生の朋子と繰り広げる、女同士の心理戦。祖母の残した奇妙な遺言の意味や、百合の匂いのたえない洋館に残されたジュピターという言葉の謎。行方不明の少年と愚かで残酷な少女の恋物語。見所は満載です。

この本を単独で読むと、いくらかとまどう部分もあるとは思います。何人かの人間の言動が意味不明だったり、思わせぶりに登場する「理瀬の父」や「ヨハン」という人物(「殺人鬼の放課後」に出てくる)について何の説明もなかったり、日本の田舎町で起きているはずの事件に、なぜかヨーロッパの巨大組織などが出てきてしまったりするので。でも、とりあえず、この本単独でも、ミステリー&ホラーとしてしっかり完成していました。それに、シリーズとしてはまだまだ続きそうです。

恩田陸さんの作品に関して、私はよく、大風呂敷広げすぎてたためなかった感じ、と偉そうに批評するのですが、(実はこの本に関してもそう思っていますが)こんな風にいくつかの作品がリンクしたり、続編が書かれたりして、いつか綺麗に収束するのかもしれません。私はその日を待ってしまうと思います。恩田陸さんの「大風呂敷」は、それだけ魅力的ですし、それを収束させるだけの力がある作家さんだとも思っていますから。



そういえば『三月は深き紅の淵を』と『黒と茶の幻想』もリンクしてるんだよね。短編集はあっちこっちでリンクしまくって、もう何が何やら。私が好きな作家さんには、そういう方が多いようです。思いついたことをどこかで全部説明したいという欲求にかられるのか、自分のキャラクターを全部同じ世界で遊ばせたいのか。新井素子さんもそうだし、茅田砂湖さんもそうだし、榎木洋子さんもそうですね。ファンに色んな楽しみを提供してくれるという点では嬉しいのですが、そのせいで一つ一つの作品の完成度が下がってしまう時には悲しくなります。少なくともこの『黄昏の百合の骨』は、大丈夫な感じ・・・と、思いました。
| あ行(恩田陸) | 18:41 | - | - |
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