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■ 水の繭 大島真寿美
4043808011水の繭
大島 真寿美
角川書店 2005-12

by G-Tools

母親は、双子の兄だけを連れて、家を出て行った。父は死んでしまった。それ以来、家に閉じこもりがちになり、ただぼんやりと日々をすごすようになった、とうこ。そこに居候として飛び込んできたのが、行動力と生命力にあふれた、従妹の瑠璃です。瑠璃によって外に引っ張り出されるようになったとうこは、父親の一周忌や、双子の兄・陸との再会をへて、少しづつ、自分の知らなかった、父や、母や、兄の、心情を知っていきます。自分を責め、いなくなった人たちを恨み、漂っていたとうこが、新しい一歩を踏出すまでの、一夏の物語です。

印象的だったのは、とうこが「絶対的な孤独の中にいる」と自分を表現するのに対し、瑠璃は「相対的に楽しいって事を確認する」という描写です。面白いなあ、と、思いました。

前半のとうこが感じている事の描写がとても上手だなあ、って思います。泣けないし、戒名も唱えられないけど、吐いてしまう。自分から腐臭を感じる。夏の暑さに周囲が蒸し暑くよどむなかで、自分だけが冷凍庫に入っているように寒い。

逆に、たくさんのページ数をさいて描かれている割に、瑠璃は薄いです。瑠璃は狂言回しの役だし、重要な台詞を言ったりもするキャラなんだけど、瑠璃本人の人物描写はなんとなく薄くて、なぜか魅力的でも印象的でもない…。瑠璃を、とうこと同じくらいの重さで分厚く描いてくれれば…と残念な気がします。

後半の、とうこと、兄・陸のエピソードはよかったです。陸は、瑠璃ほどたくさん登場するわけじゃないけど、インパクトは抜群のキャラクター。この本はそこに絞って、「とうこと陸のお話で、脇役に瑠璃とおばあちゃん」という話にすればよかったのになあと、思います。他の登場人物も、幽霊も、水害も、物語を薄めてしまった感じで、もったいない!

初期の吉本ばななっぽい、って思いました。キッチン+TUGUMI+N.P. な感じがした。
| あ行(大島真寿美) | 21:28 | - | - |
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