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● 嫌われ松子の一生 山田宗樹
4344002857嫌われ松子の一生
山田 宗樹
幻冬舎 2003-01

by G-Tools

この本が流行っていた時には、タイトルがあまりに暗そうで、手を出さなかったのだが、最近の『天使の代理人』が良かったので、手をだした。確かに暗かったけど、スピード感があるし、構成も凝ってるし、面白く読めた。

主人公は川尻笙。松子は笙の叔母だが、彼女の存在を、笙は、彼女が殺されるまで知らされていなかった。松子の部屋の後始末を頼まれた笙は、興味本位から松子の人生を調べ始める。松子の人生は、ごく普通の大学生である笙の想像を絶するような、凄まじいものだった。

殺人事件から始まるので、ミステリーに見えるが、この本はミステリーではない。タイトルどおり、松子の転落人生を描いたものだ。松子はバカだ。その場しのぎの浅知恵で、取り返しのつかない失敗ばかりする。男に出会うたびにどんどん堕ちていく。

松子は、特にみんなに嫌われるわけでも、性格の悪い女、というわけでもない。努力家だし、情が深くて、いいところもたくさんある。ちょっとバカで、ちょっとプライドが高くて、ちょっと惚れっぽい。こういう種類の女性は、たぶんたくさんいると思う。山田さんは彼女をそういう風に描いている。それなのにインパクトの強いこの「嫌われ」という言葉をタイトルに持ってきたのはなぜだろう?

しいて言うなら松子は「運命」に嫌われたのかな。そういえば、松子の弟、笙の父である紀夫には徹底的に嫌われているな。

松子の人生を狂わせた男達はみんなどうしようもない。部下をレイプする校長も、女に水商売をさせて貢がせる男も、薬中男も、最低だ。でも、私が一番許せないのは、弟の紀夫である。紀夫は家族が、松子が去った時に田舎で苦労したので、松子を恨んでいる。妹のほうはずっと松子を慕っていたし、親も心の底では松子を心配し続けていたのに。紀夫はいい大人になっても、松子の言い分を聞こうともせず、両親や妹の意を汲むこともなく、ひたすら松子を憎むばかりだ。松子はもちろん故郷には帰れなかっただろうけど、遠く離れていても、妹・弟との良い関係をもっていたら、それは松子の転落の歯止めになったかもしれない。松子が次々に悪い男にひっかかるのも、結局は彼女がいつも一人ぼっちだからだと思うし。

松子には、紀夫に許されなかった事が、最大の不幸だったのかもしれない。物語の終盤で、小道具の聖書がクローズアップされ、「神の許し」について語られた時、そんなことを考えた。松子は色んな人を許しているし、誰にも復讐していないのに、たった一人の弟に、死んでもなお許されない。本当にかわいそうな一生だ。
| や行(山田宗樹) | 13:55 | - | - |
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