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● 賢者はベンチで思索する 近藤史恵
416323960X賢者はベンチで思索する
近藤 史恵
文藝春秋 2005-05-26

by G-Tools

連作推理短編集・・・なのですが、これは、推理小説としてよりも、青春小説としてよかったと思います。

主人公の久里子は、服飾の専門学校を出たものの、服飾デザイナーになるという夢をかなえるのは簡単ではなく、現在フリーター。バイト先のファミレスで「賢者」国枝さんに出会います。国枝さんは、毎日コーヒー1杯で3時間ねばる、ちょっと呆けたおじいさん。久里子は彼と親しくなり、彼がいくつかの事件を解決する様子を見る事になります。

近藤史恵さんという作家さんは、ドロドロの人間関係も描けるし、人の心の美しい部分も醜い部分もきっちり描けるし、傷ついた人の心もちゃんと描ける。「人間を描く」ということのきちんとできる作家さんだと私は思っています。この本は、近藤さんの本にしては、あっさり系だと思いました。でも、いまどきの、等身大の人間を、温かい目で、そのまま描いたんだと思います。

暗い主人公ではないけれど、心の中には本人なりの悩みや不満がちゃんとあって。浪人中の弟の心配をしたり、親への不満をぐっとこらえたり、夢が破れたことよりも将来への不安でいっぱいだったり、それよりもさらにバイト先のかっこいい男の子の方が気になったり。実に等身大です。

最終章で明かされる、探偵役・国枝さんにまつわる物語は、あっさりと温かく語られはしますが、久里子の恵まれた生活に比べると、実に暗くて、重い。1冊本が作れそうなネタです。それをあっさり流して、久里子の成長物語の一部にしてしまったあたりが、すごいなあ、うまいなあ、やるなあ・・・と、感服しました。しめるところをギュッとしめた感じ。さすがです。

謎だらけの、国枝さんというおじいさん探偵の正体に関しては、ちょっと意表をつかれましたが、推理小説としては平凡。でも、かなりオススメ。爽やかないい本です。
| か行(近藤史恵) | 00:20 | - | - |
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