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● モドキ ほしおさなえ
モドキモドキ
ほしお さなえ

角川書店 2006-04

この本を一言であらわせる言葉がありません。事件もあるし、謎もあるし、トリッキーな仕掛けもあるから、ミステリー?でもこれはどう考えてもSF?雰囲気はバイオホラー?満たされない愛を描いた恋愛小説?実は純文学?逆に官能小説?

ジャンルはわからないし、好きか嫌いかも、なんとも言えない・・・けれど、この本は、けっこうすごい本でした。物語を楽しむという意味で、読み応えがありました。今まで読んだ、ほしおさなえさんの本の中では、1番上手いと思います。でも、かなり好みが分かれそうな本で、オススメとも言えない (^_^;)

主人公は、同じスーパーで働く、3人の男女。

1人は、カメイさんというパートの主婦です。彼女はウェブ上のとあるサイトで、掲載されているミニチュアサイズの女性の顔が、自分にそっくりであることに気がつきます。彼女は、「小学生だった頃のわたし」を、ありありと思い出します。その頃「わたし」は藤谷あみという名前で、子役として活躍しており、とあるヒーローもののドラマの中で、小さくなってしまう少女の役を演じたことがあったのです。それは一生の中で、自分が1番愛され、輝いていた時代でした。彼女はそのサイトに、ミニチュアの少女アミを主役にした小説を掲載するようになり、すっかりはまってしまいます。

もう1人の主人公は、カメイさんのたった一人の友だちである、カホです。カホは、スーパーに最近勤めるようになった若い男性、マツナガが、ドールショップでドール服を買う姿を、偶然見てしまいます。どうしても気になって、マツナガの家まであとをつけた彼女は、マツナガの家に、生きて動くミニチュアの少女がいることを知ってしまいます。マツナガはそれをウェブを通じて買ったと言い、その少女を愛していると言います。

カホは最初はそれを、信じられないことだと思い、次に、あってはならないことだと考えます。ミニチュアの少女が人工的に作られ、人身売買が行われているとしたら、犯罪です。しかし、カホにとってもそれは他人事ではなくなります。なぜかカホの身体から、カホの顔をしたミニチュアの少女が生まれるようになったからです。突然皮膚が盛り上がり、破れ、キノコのように少女が生え、脱皮するように外に出てくる。痛くも痒くもない。たいてい、カホが眠っている間にミニチュアの少女は生まれ、マツナガがそれを捕まえて、ウェブを通じて売りさばく。2人は共に暮らすようになり、大金を手にして、スーパーをやめます。

3人の物語と同時進行で、ある大学の研究室の物語が進んでいきます。そこでは、突然変異による植物の小型化が研究されているのですが、学生たちは研究の過程で、数々の不可解な現象を目にするのです。

ミニチュアの少女はそもそも、どこから、どのようにしてやってきたのか?カメイさん、カホ、マツナガ。3人の人生は、生きて動くミニチュアの少女に、どのように狂わされていくのか?

視点が時々変わること、作中作が挿入されること、正体が確定されないまま進んでいく登場人物がいること、時系列が前後することなど、工夫のこらされた小説で、ストーリーをつかむのに、多少の集中力がいります。でも、そこが良かった!物語を物語として十分楽しめました。孤独、怒り、悲しみなどの心理描写も、バイオホラー的なグロテスクな情景描写も巧みで、鳥肌が立ちました。読み応えがありました。

読む人の読み方によって、感想が大きく違う小説であるような気がします。

昔「南くんの恋人」というテレビドラマがありましたよね。ドラマは純愛仕立てでしたが、原作者の内田春菊さんが、「原作はポルノです。」と言っていたのを、私は思い出しました。(原作は別に、ポルノっていうほど刺激的ではありません。切なくて、泣けるマンガでした。でもまあ、内田さんの言いたいことはわかります。)。男性にとって、極端に小さい女性を愛する、あるいは愛する女性が小さくなるというシチュエーションは、やっぱりエロいものなんですかねー?みんな、わかるわかる、って思えるのかな?興味津々です(笑)。それとも、一部の人だけが持っている、特殊な趣味なのかな?

わたしは女なので、男の人に小さくなってもらいたいとは全然思わないし、逆に巨人化されるても困るだけだと思う。でも、自分が小さくなりたい願望なら、どこかにあるような気がします。私、あなたのオモチャでいいの〜、って、なんか昭和の歌謡曲みたいですけど。でも、男女の願望が一致しても・・・こればっかりは「じゃあ、それでいいんじゃないの」っていうわけにはいかないところが、かわいそうですよね。だって現実には、ミニチュアの生きている女性なんて存在しない。というわけで、私は、この本の中で1番、「小さい女の人しか愛せない」マツナガに同情してしまいました。

でも・・・。帯を読む限りでは、私の読み方は間違っているようで・・・。たしかに、普通に読んだら共感すべきは、孤独な主婦のカメイさんですね。そして1番同情すべき相手は、藤谷あみですよね。
| は行(ほしおさなえ) | 09:09 | - | - |
■ 天の前庭 ほしおさなえ
4488017177天の前庭
ほしお さなえ
東京創元社 2005-07-08

by G-Tools

これはこれでネタバレなんだろうなあ・・・。

交通事故のあと9年間眠り続け、目を覚ましたときにはすべての記憶を失っていた、柚乃(ユノ)。彼女はパソコンの中に残っていた高校時代の日記から、自分に、秀人、尚、徹、ユナ、という友人がいたことを知ります。しかし、「ユナ」という少女を、他の3人は知らないと言うのです。「ユナ」は何者なのでしょうか。

また、柚乃が眠っていた間に、彼女たちの母校の校庭から、白骨死体が見つかっていました。一緒に、発見された記念ボールペンは、柚乃たちが卒業記念に特別に作ったものです。みな、自分の分は自分で持っています。白骨死体は誰なのでしょう?ボールペンはなぜ一本多いのでしょう。

ドッペンゲルガー、タイムトラベル、パラレルワールド、アカシックレコード、新興宗教、性転換、ネット上で予告されるテロ。どこか胡散臭いネタを、大量に詰め込みすぎて、消化不良な印象。SFのディティールなのに、物語としては完全にミステリー。このあたりに、少し無理があったんじゃないかと思います。ミステリーだと思えば、読者は、どんなに奇抜なものであっても「真相」を知りたいと思います。でも、この本には「真相」がないのです。物語の一番大きな謎である部分は、ずっと水面下でくすぶり続け、ラスト近くで表面化して・・・でも、謎のままで終わってしまうのです。

ところどころに挟み込まれる、終末の風景の描写は何を意味するのか。タイムトラベルは本当にあったのか。殺人事件の真相は。ドッペンゲルガーの正体は。すべての筋書きを描いたのはいったい誰?読んでいる間に、小さな謎解きはたくさんあったんだけど、それじゃあ不満です。

前作「ヘビイチゴ・サナトリウム」と全体の構成や、手法としては同じですが、あちらは十分な説明をして「真相の候補」を提出した上で、決着を読者の判断にゆだねた気がしました。「天の前庭」は説明不足。なんにもわかんないじゃん!って感じです。誰か、私に、答えを教えて!

こういう本、あってもいいと思うし、嫌いじゃないんだけど・・・ミステリ・フロンティアではやらないでほしいなあ。
| は行(ほしおさなえ) | 23:59 | - | - |
■ ヘビイチゴ・サナトリウム ほしおさなえ
4488017010ヘビイチゴ・サナトリウム
ほしお さなえ
東京創元社 2003-12

by G-Tools

ほしおさなえさんという方は、詩人で、この本のテーマは解説によると、「自分と他人の境界のくずれ」だそうです・・・。と、書くと、読みづらそうな、純文学っぽい小説を思い浮かべますが、全然違います。

前半は少女小説で、完全にライトノベルです。それでいて、終盤、怒涛の勢いで本格ミステリーに化けるので、ちょっとびっくりします。

かわいらしい表紙。舞台は女子校。登場人物は色んなパターンの女の子らしい女の子。小道具は、小説。デッサン。彫刻。誰が誰を好きだとか、嫌いだとか、派閥だとか、そんな少女の少女らしさ全開の前半を楽しめれば、後半は、一気にミステリーとして楽しめます。私は好きでした。
| は行(ほしおさなえ) | 22:30 | - | - |
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