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■ 東京・地震・たんぽぽ 豊島ミホ
東京・地震・たんぽぽ東京・地震・たんぽぽ
豊島 ミホ

集英社 2007-08
東京で大地震発生―。「その時」露わになる、心の奥底とこれまでの人生すべて。瓦礫の街で芽生えるのは、悲しい孤独?それとも明日を生きるための勇気と希望?25歳の作家が恐れと祈りをこめて描いた、書き下ろし短編集。
ショートショートに近い長さの短編ばかりですし、結末の手前で終わっているような物語も多く、え?ここで終わり?もう終わり?というようなものが多かったのですが、そこに味わいがありました。

災害小説にありがちな救出感動ものや、お涙頂戴ものは収録されていません。意外な作品が多いです。色んな人がいて、色んな人生があるよなあ、なんて当たり前の事を思いました。読みやすいけど、深い本でした。帯を読んで想像したものとは全然違いまいしたが、いい本でした。

好きな作品は「ぼくらの遊び場」「パーティにしようぜ」。印象が強かったのは「ついのすみか」「だっこ」。作品相互にちょっとしたリンクを見つけて、ちょっと嬉しかったりもしました。

・僕が選ばなかった心中、の話
・空と地面のサンドイッチ
・ぼくのすきなもの
・くらやみ
・ぼくらの遊び場
・ついのすみか
・宙に逃げる
・だっこ
・どうでもいい子
・夢を見ていた
・出口なし
・復讐の時間
・パーティにしようぜ
・いのりのはじまり
| た行(豊島ミホ) | 06:57 | - | - |
● 底辺女子高生 豊島ミホ
底辺女子高生底辺女子高生
豊島 ミホ

幻冬舎 2006-08

豊島さんの高校時代を元にしたエッセイ集。「檸檬の頃」読了直後に読んだのは、偶然とはいえ大正解でした。地味系女子の共感を呼ぶことは間違いなし!私は、底辺中学生だったので、その頃の事を思い出して、共感しまくりました。

1番笑えたのは、学園祭の思い出。学園祭の思い出が、フェンスにとまったハエの交尾を見たこと・・・って、どこまで地味な学校生活なんだ!

エッセイの締めくくりとなる、美術部の思い出も素敵でした。大学のサークルの部室を思い出しました。そう、あの空間は、社会に出たらもう見つけられない。ありそうで、ない場所ですね。会社の給湯室も、喫煙室も、街のカフェも、自分の家も、どんなに安らげる場所でも、あそことは違う。

底辺、と、言っておられますし、実際、辛かったんだろうなあ、というのはうかがえるのですが、このエッセイは、笑えます。笑える本です。豊島さん、腕、ありますね。プロの文章でした。

それにしても、綿矢りささん、豊島ミホさん、島本理生さん、の3人はどうしたって比べられていくんでしょうね・・・。年齢、作風、それにファン層もかぶってるんだろうなあ。3人ともとりあえず、作家としての基盤は出来たと思うので、じっくり個性を出して、プロらしいプロの作家さんになって欲しいですね。その点で、頭1つ飛び出しているのは、豊島さんだと思います。島本さんは引き出しが少なすぎて、まだ不安定な感じ。綿矢さんは、たぶん、天才なんだろうなあ。天才すぎて、その先に突き抜けられずにいる感じ。豊島さんは、地道に作品を積み重ねてきてのブレイク。これから、映像化でファン層が広がろうと、作品の中でどんな冒険をされようと、安心して応援していける気がします。すっかり、ファンです!
| た行(豊島ミホ) | 03:26 | - | - |
● 檸檬のころ 豊島ミホ
檸檬のころ檸檬のころ
豊島 ミホ

幻冬舎 2005-03

田舎の県立高校の、どちらかといえば地味な高校生たちの、切ない切ない恋物語たち。とてもいい本でしたねー。

私の高校時代は、学校以外の所で無駄に波乱万丈だったので、こんな青春っぽい思い出が作れるほど、のどかなものではありませんでした。だからどの物語にも、いいなーいいなーうらやましーなー、と、思いました。自分の高校時代とはまったく重なりませんでした。

でも、ものすごく共感できました。彼らの悲しみや、痛みや、さみしさや、必死さは、私も知ってる。感じた年齢は違っても、忘れていても、誰もが感じたことがある。きっと忘れられないまま年をとって、時々思い出して胸が痛んで、でも年をとるにしたがって、いつか美しい思い出になるんだろうなあ、っていう感情ですね。それを、痛いままの状態で、凍結保存したような小説でした。

あまりに皆さんからのオススメが多くて、期待が高まりすぎていて、がっかりするのが心配だったのですが、問題無し、でした。評価が高いのも納得の、大人も心を揺さぶられる青春小説でした。

○ タンポポのわたげみたいだね
全体的に恋愛色の強い短編集でしたが、女の子同士の真摯な友情がテーマになったこの作品が冒頭にあるのは、爽やかさUP!にずいぶん貢献していると思います。

教室に来ない友人を心配し、心配を通り越して友情が重荷になってきてしまった、橘の気持ちもわかる。でも、保健室登校をくりかえすサトの気持ちのほうが、もっとわかるんだよな〜と、思いながらよみました。実際には私には保健室登校の経験はなく、逆に、橘の立場になったことなら、数え切れないくらいあるんですけど。本当は私も、不登校とか、保健室登校とかしたかったのかもしれません。

だから、ラストのサトのセリフは、きました。切なかったです。

☆ ルパンとレモン
これは良かった!中学生のときの彼女をいつまでも忘れられない西。自分の友人が彼女を好きになり、彼女に近づくのにつき合わされ、彼女が自分の友人に魅かれていくのを、ずっと見つめていなければならない。この状況は厳しい〜。可哀相すぎる!見ていることすら拒絶されるなんて・・・。切ない。秋元、大人気ないぞ!・・・って大人じゃないんだもんなあ。みんな、青春なんだよなあ。若いんだもんなあ。

でも、西は、かっこよかったぞ!本当にかっこいいぞ!がんばれ、西!君が好きだ!

○ ラブソング
将来の夢は音楽ライターという、音楽好きの白田恵が、軽音部の辻本くんと趣味の話で意気投合し、友だちになったと同時に、恋をしてしまう物語。音楽馬鹿の白田には初恋のようなもので、精神的によれよれに迷走します。白田はこの本で1番共感できる主人公で、笑えました。

辻本くんには彼女がいて、白田はあっさり失恋してしまうのですが、その失恋シーンがとてもリアルで良かった。二人とも不器用でかっこ悪いけど、真面目で一生懸命で、ああ、青春!って感じでした。それから失恋した後にも、白田が、辻本くんと話せるとちょっと嬉しくなってしまうというシーンがあって、ああ、もう、切ないったら!

○ 雪の降る町、春に散る花
見事、東京の大学に合格した吹奏楽部の加代ちゃんと、3年間を野球に捧げて、地元の大学にしか合格できなかった佐々木くんの、高校生活の最後の日々を描いています。これが社会人の転勤だったりすれば話は違うんだけど・・・。やっぱり高校から大学に行くときには、遠距離恋愛ができるなんて、思えないよね。先のことが何もわからないから、今、相手を好きだってことしか考えられない。その刹那的(なのにプラトニックなんだよなあ。)で不安な感じがよく出ていて、これも切ない短編でした。

2人とも、この短編集のところどころで登場してきた人物。白田恵からは大人っぽく、才色兼備の憧れの人と描写されていた加代子さん。そして「ルパンとレモン」の富蔵と秋元の物語です。

本当はこの作品はかなりの傑作で、☆マークをあげたいんだけど・・・。このカップルは、西くんにつら〜い思いをさせた二人ですよねー。私は西くんびいきなので、ここは○マークにしときます(笑)

他に
△ 金子商店の夏
△ ジュリエット・スター
□ 担任稼業

この高校の学生だけではなくて、の教師や、卒業生、下宿屋さんなど、いろんな場面、いろんな人々が描かれているのも、よかったです。
| た行(豊島ミホ) | 11:09 | - | - |
■ 夜の朝顔 豊島ミホ
夜の朝顔夜の朝顔
豊島 ミホ

集英社 2006-04

なんにもない田舎で暮す、センリという小学生の6年間を追った短編集。喘息の妹への複雑な思い。いじめられっこだったり、女王様だったり、親友だったりするクラスメイトたちとの微妙な距離感。好きな先生への思い。そして初恋。

子供にだって小さいながら社会はあり、その不条理に傷つき、苛立ち、無力感を味わい、複雑な人間関係に神経をすり減らして・・・。そういえば、あの頃だって、大変でしたよね。
あの頃の記憶には「しこり」が多い。楽しい事だってたくさんあったはずなのに、思い返すと、砂利を噛んだような気分になります。・・・明るい子どもでいることにせいいっぱいだったので、淋しいとか、心細いとか、腹立たしいとか、そういう気持ちを出す余裕がなく、言葉にならない形で後に残ってしまったからかもしれません。

あとがきより。
本当に、このあとがきどおりの本でした。小学生が主役だけど、大人のための本です。

豊島さんは記憶力がいいなあ、と、感心してしまいました。あのころの言葉には出来なかった気持ちを、こんなにもちゃんと覚えているなんて!

私は、小学生の時に行った遠足の場所なんて、1つも言えません。遠足に限らず、小学校前半の記憶は断片的にいくつかのシーンを覚えているだけで、基本的にありませんし、小学4年生の記憶もかなりあやしい。就学前の幼児期の記憶なんて、まったくありません。

能天気に楽しく暮していたであろう、その頃の記憶がないことを、損だ、と、思っていたけれど、よく考えてみれば、その頃はその頃なりに大変だったんでしょうね。だって、私の記憶にある小学校後半には、やっぱりこの小説に描かれたのと同種の「しこり」があるんですから。

胸がざわざわと騒ぐというか、ときには鈍く痛むくらい、苦味のある本で、好きな本、とは言えません。でも、これを書いた豊島ミホさんの感性には、かなりビビッときたかも。いいとこ突いてくるなあ!オリジナルだなあ!って感じがします。豊島ミホさんに感性の似ている作家さんを、わたしは知りません。

今までに書かれた本で、自分の過去の記憶の「しこり」を小学生時代まで出しきってしまった豊島ミホさんが、これからは、どっちの方向に進んでいくのか、次の作品の題材に、とても興味があります。

○ 入道雲が消えないように
△ ビニールの下の女の子
□ ヒナを落とす
□ 五月の虫歯
□ だって星はめぐるから
○ 先生のお気に入り
○ 夜の朝顔

「五月の虫歯」だけは、センリの世界からちょっと飛び出したような気がする作品。気がつけば、これだけ、書き下ろしなんですね。フィリピン人の母親を持つ少女の、児童虐待がテーマになっています。虐待の原因になったストレスというか、圧力の原因が容易に想像がついてしまい、本当に苦い本でした。周囲の人々の温かさが、救いではありましたが。
| た行(豊島ミホ) | 23:52 | - | - |
■ 青空チェリー 豊島ミホ
青空チェリー青空チェリー
豊島 ミホ

新潮社 2002-09

□ 青空チェリー
この作品がR−18文学賞を受賞し、豊島ミホさんのデビューのきっかけになったんですよね。主人公の2人は高校生ですけど、確かに、R−18ですね〜。でも・・・私には、コメディとしか読めなかった!だって笑える!恋のきっかけが共通の趣味、というのはよくある話ですが、それが「のぞき」だなんて!森田さんの「お互いに!」にも笑わせてもらいましたし、本橋君の口説き文句には大爆笑させてもらいました。痛々しい思春期を卒業しつつある2人の、爽やか青春ラブコメでした。

□ ハニィ、空が灼けてるよ。
近未来戦争恋愛青春小説、という、マンガのような設定の作品。でもこの作品は、かなりちゃんとした小説になっていました。「青空チェリー」に比べると、文章もずいぶん上手くなって、読みやすいです。それにわたしは、最近の作品よりも好き。この作品で、豊島さんの小説家としての評価が、私の中で若干上昇。
| た行(豊島ミホ) | 22:46 | - | - |
■ ブルースノウ・ワルツ 豊島ミホ
photo
ブルースノウ・ワルツ
豊島 ミホ
講談社 2004-05-13

by G-Tools , 2006/06/05




研究者の父と、社交に忙しい母、二人のメイドとともに館で何不自由なく暮らしている14歳のお嬢様、楓。彼女には「顔と財力と誠実さ」をかねそなえた12歳のフィアンセ、藤がいて、彼女の将来は、すでに決められています。将来に夢は持てず、毎日は退屈で、でもそれをどうにかしたいというエネルギーもない。

そんな楓の前に突然あらわれたのが「弟」です。野生児として生きてきて、人語を聞き分けることすらできない彼を、父親が研究対象として引き取ったのです。はじめは彼を毛嫌いしていた楓ですが、次第に、彼を理解するようになります。

なんだか童話風で、すごく、いしいしんじさんっぽいですねー。私は、この路線、かなり好きです。でも、豊島ミホさんの作品の中では、異色なんでしょうね。

野生児もののノンフィクションに一時こっていました。また読み返したくなりました。そういえば、以前に読んだのは、ガラスの仮面がきっかけだった・・。



photo
アヴェロンの野生児―新訳 ヴィクトールの発達と教育
J.M.G.イタール 中野 善達 松田 清
福村出版 1978-11

by G-Tools , 2006/06/05


photo
カスパー・ハウザー―地下牢の17年
アンセルム・リッター・フォイエルバッハ 生和 秀敏
福村出版 1977-01

by G-Tools , 2006/06/05


photo
狼に育てられた子―カマラとアマラの養育日記
J.A.L.シング 中野 善達 清水 知子
福村出版 1977-01

by G-Tools , 2006/06/05


photo
ウルフ・チャイルド―カマラとアマラの物語
C.マクリーン 中野 善達
福村出版 1984-12

by G-Tools , 2006/06/05


photo
隔絶された少女の記録
ラス ライマー Russ Rymer 片山 陽子
晶文社 1995-08

by G-Tools , 2006/06/05


| た行(豊島ミホ) | 23:14 | - | - |
■ 日傘のお兄さん 豊島ミホ
photo
日傘のお兄さん
豊島 ミホ
新潮社 2004-03-17

by G-Tools , 2006/05/27

恋愛短編集。のーんびりしていて、ゆーったりしていて、女の子たちがみんな前向き。雰囲気的には好みでした。

・日傘のお兄さん
やっぱりこの中編が、一番印象的でした。幼稚園生の頃、毎日遊んでくれていたお兄さんと再会した、夏美。お兄さんは幼児猥褻の罪で犯罪者として追われる身になっていました。ネット上でも「日傘のロリコン変態」として有名人になっています。そんなお兄さんに夏美は、街を出てついていってしまいます。

これが、直球の純愛小説仕立てになってるんですよね。この題材をこういう風に描いて、いいんだろうか。きっと、いけないと思う人も多いだろうな。特に、子供を持つ親の立場で読んだら、たまらないだろうな。でも、わたしはこの作品を面白く読んでしまいました。

色んな本があるのは、いいことです。オリジナリティと、チャレンジ精神に拍手!これを書いた作者を、「もっとやれー!!」と、けしかけたくなるような作品でした(笑)。

主人公、夏美のキャラクターがいいんですよね。彼がそんな人間だとわかっても、手のひらを返したように拒絶反応を起こしたりしないんです。自分の目で見たこと、自分が感じたことを、どこまでも信じている。わたし、この子、好きだなーっ。2人の十年後が知りたいです。

・バイバイラジオスター
・すこやかなのぞみ
・あわになる
この3つは、普通に(?)甘酸っぱい恋愛小説。

・猫のように
これだけがちょっと異色で、40歳の中年男が主人公。「猫のように」生きるんだと、ソープ嬢にふられたくらいで、決めてしまうことはないんじゃないかなあ。今は、それを淋しいと感じているんだから、もう少しがんばったっていいと思う。人生は、まだ半分残っているぞ、がんばれ、中年男。この結末は、ものがなしい。
| た行(豊島ミホ) | 19:48 | - | - |
▲ 陽の子雨の子 豊島ミホ
photo
陽の子雨の子
豊島 ミホ
講談社 2006-03-28

by G-Tools , 2006/04/22





24歳の雪枝は祖母の遺産を相続し、働かなくていい程度にはお金持ち。4年前に、15歳だった家出中の聡を拾い、それ以来2人で暮してきました。ある日雪枝が、私立の男子中学に通う夕陽という少年を家に招待するところから、物語は始まります。その日雪枝は、聡を後ろ手に縛り、押入れの中に閉じ込めました―。

青春の悩める感じや、揺れる感じは、よく出ていたんじゃないかなあ、と、思います。でも、結局、何の話だったんだ・・・。私は、よくわからなかったぞ。

夕陽のひと夏の思春期小説としては、よく出来ていたのかもしれませんが、夕陽という中学生の存在が、なんだかリアルじゃなくて・・・。男子中学生、というより、大人びた少女のような描かれ方でした。お姉さまが、夕陽に萌える小説?いや、違うよなあ。

雪枝と聡のほうの物語は、もっと何だったんだかわからなくて・・・。結局、2人の恋愛小説だったんでしょうか?2人の絆が深まった、ああ、めでたしめでたし、という物語だったのかなあ。これからも、2人は2人だけの世界で、雪枝は短歌を作って、聡はそれを見守って、そういう生活を続けるのでしょうか?

雪枝はともかく、聡の人生は本当にそれでいいのでしょうか?と、思ってしまうのは、私がおばちゃんだからでしょうか?なんだか、明るい未来を予感させるような雰囲気の結末でしたが、雰囲気だけで、実がないような・・・。

豊島ミホさんに初チャレンジ!でした。もう1冊くらい読んでみないと、好きとも嫌いともなんとも言えない感じ。もう1冊読んでみるとしたら、何がいいでしょうか?
| た行(豊島ミホ) | 13:41 | - | - |
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