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■ 祝福 野中柊
祝福祝福
野中 柊

角川書店 2006-09-26

野中柊さんの恋愛短編集。どれも、切ないんだけど、どこか前向きなお話ばかりで、穏やかな気持ちになれる本です。猫、お料理、ピクニック、なぜかいやらしくないセックスシーン、子供時代への郷愁と、そのころを共すごした者への愛着。野中小説のエッセンスが全部つまっている気がしました。野中さんらしい1冊でした。(あ、アメリカは出てこなかった。)

□ しゃぼん
□ セカンドハウス
○ 銀の糸
△ 遊園地
□ メトロノーム
○ 祝福
| な行(野中柊) | 12:07 | - | - |
■ ガール・ミーツ・ボーイ 野中柊
ガール ミーツ ボーイガール ミーツ ボーイ
野中 柊

新潮社 2004-09-29

夫の蒸発で、シングルマザーになってしまったママと、6歳の太郎の物語。太郎が小さい頃は、仕事中は保育園が預かってくれたし、保育園に夏休みはなかったけれど、小学生になった太郎はママよりも早く家に帰る鍵っ子になってしまいました。それに、長い夏休みの間をどうするかという問題もあります。シングルマザーの大変さ、そしてこういう母子の仲のよさ、絆の強さが、野中さんらしいポップな明るさで描かれていました。

友人でスチュワーデスの牧ちゃんや、同じマンションに住み、自宅で仕事をしている杏奈さんなど、色んな人の協力が2人の生活を支えています。こういうのって大事だよなあ、と、思いました。負担にならない程度の、友情にヒビが入らないような、助け合い。加減が、けっこう難しいと思います。

物語は、失踪していた父親と、太郎が、ママに隠れてこっそり会っていたことが発覚し、山場を迎えます。この男・・・なんてずるくて勝手なの!しかもこういう男を、実際に何人か知っている私は、リアルにこいつが嫌いで、鳥肌が立ちました。

結局2人は離婚するのですが、慰謝料とか養育費とか、ちゃんとふんだくれよー。と、思いました。でもこの本は野中本なので、そういう現実的にえぐいところには踏み込まずに、切なく切なく終っています。もちろん、そのほうがいい本にきまってます。ああ、でも、この男、マジムカツク〜。
| な行(野中柊) | 08:09 | - | - |
● きみの歌が聞きたい 野中柊
きみの歌が聞きたいきみの歌が聞きたい
野中 柊

角川書店 2006-04-22

何年も前に夫に恋人がいることを知り、深く傷つきながらも、自分のスケジュールを頑なに守り、表面上は穏やかに暮している美和。

子供の頃に母親に捨てられ、その心の傷を今も抱えたまま自由奔放に生きながらも、孤独を感じずにはいられない絵梨。

幼馴染の2人は、大人になってから創作ビジュー(アクセサリー)の「クレソプレーズ」というブランドを立ち上げました。ブランドはゆっくりとではありますが、確実に売り上げを伸ばしています。

2人のアトリエには、絵梨の元恋人で17歳の家出少年、ミチルが入り浸っています。帰る場所を持たず、漂うように生きているミチルは、いつのころからか、美和と週に一度関係を持つようになりました。

この本は、簡単に言えば、美和、絵梨、ミチル、の三角関係を描いた恋愛小説です。でも、ミチルをめぐる、女2人の争い、などという単純なものではありません。それぞれがそれぞれに対して、複雑な心情を抱えています(複雑と言っても、憎しみや怒りといった暗い方向ではないのですが・・・。)トライアングルの頂点は読み方によって、誰だとも思えるけれど、私にはやっぱり美和だったんだと感じました。

三人三様に傷つき、精神的に不安定な状態にあるけれど、絵梨とミチルの傷が子供の頃に刻まれたものであるのに対し、美和には優しい母親と暮した安定した少女時代がありました。だから、絵梨とミチルは、どうしようもなく美和に魅かれ、時に傷つけたくなるほどに、甘え、依存してしまうんだろうな、と思います。そして、絵梨とミチルの関係のどうしようもなさって、そのあたりにあるように思いました。かなり、似たもの同士ですもんね。

章が変わるごとに、視点と語り手も変わる構成になっています。1章の「月の石」が美和、2章「アクアマリン」がミチル、3章「赤瑪瑙」が絵梨によって語られた後、目次を見直して、残りの「クレソプレーズ」と「真珠」の章は、どうなってしまうのだろう、と、注目したのですが、残り2章がかなり意外で、でも、すごく上手かった!特に最後の章には、書き出しから、ラストまで、すっかりやられっぱなしでした。

友情と、愛情、癒しと、許し。そして、喪失と、再生の物語です。美しい天然石の描写と、優しい人々の傷ついた心が癒されていく描写が、共に穏やかな筆致で描かれています。物語の展開は波乱万丈なのに、印象はとにかく静かで、感動的な一冊でした。

ちょっと谷村志穂さんっぽいなあ、と、思いました。でも、谷村さんの本の主人公たちは、もうちょっとメンタルな部分でのたくましさを本当は持っている人々で、だから心理描写もリアルでなまなましい。この本は、登場人物がみんな痛々しいほど弱くて繊細で、だから谷村さんの本より少し少女趣味な感じがします。だからと言って心理描写が「甘い」小説かといえばそんなことはなく、けっこうリアルで容赦がない。野中さんの新しい引き出しのような気がするんですけど、どうでしょうか。野中作品「らしく」ないように思いました。一皮むけた、というか、成長した感じ(・・・だなんて、わたしが言うのは、生意気なんですけど。)

まだ野中作品を全作品を読んだわけではありませんが、いまのところこの本は、私の中で、野中柊さんの作品の中ではベスト。いい本を読みました。

この本は完全に女子向けです。
| な行(野中柊) | 15:10 | - | - |
■ ジャンピング・ベイビー 野中柊
ジャンピング・ベイビージャンピング・ベイビー
野中 柊

新潮社 2003-08

離婚した元夫婦が、結婚していた頃に一緒に飼っていた、猫のお墓参りに行く、とある一日のお話。2人の間に子供はできなかったので、猫は彼らの子供のようなものでした。

元妻、鹿の子のほうは、すでに再婚し幸せに暮しています。でも今日は過去を振り返り、自分たちに子供がいたら、少しは結婚生活が違ったものになったのだろうか、と、考えています。でも、そうでもなさそうであることが、作中で明らかになっていきます。元夫には、現在のパートナーとの間に赤ん坊が生まれているのですが、2人もまた、別れようとしているからです。

どんなに魅力的でも、やっぱり彼は、ダメ男の範疇に入るんでしょうね。従順さでは世界に名だたるヤマトナデシコがついていけなかったのですから、芯にそうとう強烈な個性を隠しているのでしょう。ダメ男を愛した2人の女が、最後に心を通わせるシーンは印象的でした。敵とは言わないまでも、ライバルではあるだろう、年齢も国籍も違う2人が、深くわかりあえた瞬間。女同士っていうのは口数が多い割に、本当に大事なことは、言葉にしないで分かり合っているものですよね。
なぜかなあ? だけど、あなたなら、私の気持ちがわかるんじゃないかな?
そして、赤ちゃんとのふれあいも印象的。ハッピーエンドにならなかった、寂しい、男と女の物語を、たった一人の赤ちゃんが、命と希望の物語に変化させます。物語の中の世界でも、赤ちゃんの存在は偉大です。それらのシーンはとてもよかったです。

でも、そこにたどりつくまでが長すぎ。ながーい前置きに、物語ちょこっと、って感じでバランスが悪かったです。「前置き」部分も楽しめる人にはいいと思います。結婚や離婚の経験がある人や、猫好きな人は、私よりは楽しめると思います。私には、なんでいまさら、そんなに過去をふりかえらなくちゃいけないの?と、思ってしまい、退屈でした・・・。

舞台が鎌倉や横浜でなんとなく観光地的な匂いがするせいか、猫のお墓参りというちょっと少女趣味(?)な設定のせいか、登場人物の半分が外国人だったりするせいか、どうもフワフワとした、現実感のない雰囲気の本でした。物語自体は、男と女のしょうもない、身もフタもない現実だったりするので、そのあたりはバランスがいいと言えるのかもしれません。
| な行(野中柊) | 16:40 | - | - |
▲ アンダーソン家のヨメ 野中柊
アンダーソン家のヨメアンダーソン家のヨメ
野中 柊

福武書店 1992-09

△ ヨモギ・アイス
これが、野中さんのデビュー作。国際結婚をして、アメリカで夫と暮らすヨモギの日常を描いています。ヨモギは「doing nothing」をモットーに、できるだけ何もしないで生きようとしているのですが、アメリカでそうすることは、逆に疲れる生き方なんだそうです。確かに、アメリカ人って、社交的で活動的、エネルギッシュ、っていうイメージがありますもんね。その中で、「doing nothing」なんてものをモットーにしようと考え、それをつらぬくヨモギは、ある意味とても、強い人だと思いました。こういう強さがないと、国際結婚とか、海外暮らしとか、無理なんだろうなあ。

でも、この作品の中でヨモギは、「強い人」として描かれているわけではありません。もっと力の抜けたキャラクターです。ホワホワした、少女のような、可愛らしさのある女性で、ひきつけられる主人公でした。でも、著者の、その「力の抜けた感」を出すことに気合を入れました!っていう感じが滲み出ていて、ああ、やっぱりデビュー作なんだなあと思いました。素人くさくも、下手でもないんですけど。

登場するアメリカのアイスクリームがおいしそうでしたね〜。私もアメリカのアイスクリームのチェーン店には、ついつい吸い込まれてしまいます。

第10回海燕新人文学賞受賞

△ アンダーソン家のヨメ
やはりアメリカにも、「嫁」という概念はあるんですね。家制度の中で、ある意味完璧な型があり、儒教的な上下関係で行動のすべてが規制され、従っていればそれで楽、という日本の「嫁」も大変ですが。個人主義の国であってもやっぱり「ヨメ」は自由じゃない。家族としての結束が固い、アメリカという国だからこそ、しがらみは強烈です。

彼を愛しているというだけで、アンダーソン家に嫁いだマドコは、「自由」の国であるはずのアメリカで、数々のしがらみに苦労することになります。日米の文化の違いという大きな壁もあって、主人公マドコは本当に大変です。でも、ヨモギよりずっと元気で、生き生きとした、マドコのキャラクターが良くて、苦労話という感じではなく、楽しく読めました。



ちょっと、時代を感じる本でした。今、アメリカのイメージって、別に「自由」の国とか、カラフルでポップな憧れの国っていう感じではないですよね。10年やそこらで、アメリカのイメージが変わった気がします。強引で、プライドの高い、戦う国というイメージ。自己主張をしなくちゃいけなくて、勝たなければいけない、暮らすには大変そうな国というイメージ。このイメージの変化は、私だけでしょうか・・・。

2作とも主人公の考えることに、野中さんご本人の感想が投影されている感じも、ものすごく滲み出ています。あとがきによると、どうやら猫にも、野中さんの亡くなった愛猫が投影されているらしいです。

野中さんの最近の本とは、ずいぶん印象がちがったのですが、この作品はおそらく私小説というか、エッセイ的で(野中さんは実際に国際結婚をされて、海外在住中のデビューであったと、著者紹介に書いてありましたし)。最近の野中さんの作品は、「プロの作家の想像力が生み出した世界」なのだと思います。

もちろん、この本はこの本として、最近の本は最近の本として、魅力的です。
| な行(野中柊) | 22:07 | - | - |
▲ 参加型猫 野中柊
参加型猫参加型猫
野中 柊

マガジンハウス 2003-10-15

まだまだ新婚気分の夫婦の、温かくて、優しい、恋愛小説。ラブラブ。いい人ばかり出てくる、いい本ではありました。ただ、とりたてて事件がおこらないので、ちょっと・・・退屈だったかなあ・・・いや、ひがんでいるわけじゃなく(笑)。あと、ところどころ、意味わかんないとこもあったなあ。

たまになら、こんな本を読むのも、いいなあって思う。うん。最近、殺人か不倫か変態か、世界の終わりの本しか読んでなかった気がするもの。なんだかほわっと癒されます。

表紙が最高!
| な行(野中柊) | 17:17 | - | - |
■ 小春日和 野中柊
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小春日和
野中 柊
青山出版社 2001-06

by G-Tools , 2006/06/01




映画好きの母親の影響でタップダンスを始めた幼い小春と日和のにCM出演のチャンスが…。リズミカルな言葉で織りなす、のびやかな双子物語。
なんだか「ちびまる子ちゃん」のような本でした。70年代という時代と、仲の良い家族が共に暮した、子供らしい子供時代への懐かしさが、キュっとつまった可愛らしい本。

この本は、この本として大好きなのですが、プロローグで示唆されている、双子のこの先のほうが気になります。双子がどのように「ふたりであること」をやめ、心細い「ひとり」になっていったのか。読み応えずっしりの青春小説になりそうなので、まったく別の作品として、それを読んでみたいです。
| な行(野中柊) | 00:40 | - | - |
■ あなたのそばで 野中柊
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あなたのそばで
野中 柊
文藝春秋 2005-09-08

by G-Tools , 2006/06/01





恋愛短編集。どれもこれも恋愛小説でしたが、甘いものから、苦いものまで、様々なテイストがそろっていて、恋愛小説が苦手な私でも飽きずに読めました。どの短編も、その続きが知りたいのよ!というところで終っていて、物足りないような、余韻が嬉しいような、微妙な読後感。この感じは、けっこう好きかも、です。

それにしても、イラストの松尾たいこさんは、最近大活躍ですね。

オニオングラタンスープ
16歳の幼な妻の物語。彼女がとてもキュート。

□ 光
高校生と女教師の恋愛。彼もキュート。

□ イノセンス
ハッピーエンドで、本当に嬉しかった。

△ 片恋
兄の妻になった女性を思う弟の物語。

運命のひと
短い割に、人間関係が複雑で、それぞれの思いを正しく把握できたかどうか自信がない・・・。でも、江國香織さんの作風に酷似。

□ さくら咲く
読後感がとても良い作品。温かい。

この本は、それぞれの短編が、ストーリーに関わらない程度のディティールの部分で、かすかにリンクしあっていて、連作短編集と言えなくもありません。

こういうのって、最初に見たときは、面白い趣向だなあ、思いました。リンクを発見したとき、すごく嬉しい気分になりました。でも、最近では多すぎて飽きています。この程度のリンクなんて、技術的には簡単なことで、単なる作家の遊び心か、読者サービスにすぎず、多用されマンネリ化した今、まったくありがたみがない。はやってるからってみんなでやるのはやめようよ。誰が始めたのかわからないけれど、次々に真似する作家さんが出てくるのは、見ていてなんだか恥ずかしい。

もちろん、本を読む人のほとんどは、たまに数冊読むのであって、毎日たくさん本を読む人なんて少数派。飽きたり、マンネリを感じたりするほど、この趣向に出会っている読者なんて、本当に少数派なんでしょう。だから、問題はないですよね、もちろん。でも私は、自分自身がオリジナルであり、流行を作る側なのだという自負を、どこかで持っているような作家さんが好きです。連作短編集なら、連作にするだけの意味がある、連作短編集のほうが好きです。初期の加納朋子さんとか、若竹七海さんの連作短編集は、すごかったと思う。ああいうものが、また読みたいです。

(いい機会なので、一般的な傾向に関して感想を言っただけで、特別、この本にケチをつけたかったわけではありません。)
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