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■ シャドウ 道尾秀介
シャドウシャドウ
道尾 秀介

東京創元社 2006-09-30

凰介と亜紀は幼なじみで、現在小学5年生。そもそも二人が生まれる前から、父親同士と母親同士が友人で、家族同様に付き合ってきました。物語は、凰介の母が病死するところから始まります。凰介と父・洋一郎の2人暮しがはじまってすぐ、今度は、亜紀の母親が自殺してしまい、2つの家庭が母であり妻であった人を失うことになりました。

亜紀の母親の自殺の真相は、謎に包まれています。残された父親たちには何か秘密があるようで、不安になった子供たちはその秘密を探ります。凰介と亜紀は、お互いの持つ忌まわしい記憶と、今回の不幸の連続に、何か関係があることに気づき始めます。

家庭の中で破滅的な事件が起こったとき、1番かわいそうなのはいつも子供ですね。父親たちを愛しながらも、信じることも頼ることもできず、わけもわからないまま翻弄される二人の子供が痛々しかったです。辛い経験をばねに成長していく姿は、感動的でした。最後まで読み終えてみると、大人たちもかわいそうでした。読後感は、「しんみり」って感じです。

色んなところでしっかり騙されて、どんでん返しに驚かされました。ミステリィ&サスペンスとしても読み応えがありました。面白い本だったと思います。いい本だったと思います。

1つだけ惜しいな、と思ったのは、凰介はしっかりした骨格があり、きちんと肉付けされた、存在感のあるキャラクターだったのに、亜紀のほうはなんとなく薄っぺらいキャラクターに感じられたこと。凰介も小学生男子にしてはあまりに正しく、賢く、優しく、強く、リアリティはなかったけど、キャラクターとしては魅力的な少年で良かったんです。でも亜紀は、守られるべき少女としてしか描かれていなかった気がします。背負っている不幸の分、可哀相なだけのキャラクターで、これはあまりに男性目線の描写だよなあと思いました。

子供2人の健気ながんばりが魅力の小説だっただけに、そこがちょっとだけ残念でした。ほんのちょっとだけね。
| ま行(その他の作家) | 14:01 | - | - |
すべての愛の1% 前川麻子
すべての愛の1%すべての愛の1%
前川 麻子

徳間書店 2005-12

うーん、これは、性的嗜好の範囲をこえてるんじゃないかなあ。犯罪だよなあ。

あるいは、この人は、病んでるとしか思えないなあ。

という、ギリギリアウト!な人々や、その周囲にいる、ギリギリセーフ、の人々の愛を描いた短編集。

まあ・・・正直、好きだと言える本ではありませんでした。もう少しその異常な行動や、嗜好の、原因や背景をきちんと描いてくれたら、物語として面白かったかもしれないし、共感できる人物もいたかもしれないけれど、この本はそういう描き方はしていないんですよね。

目のつけどころは面白いと思います。ロリコンの犯罪者がいるんだから、その逆、つまり少年愛で犯罪を犯す、大人の女だっているだろう(怪物)。今の時代、売春婦になるのが夢、という女性だっているだろうし、「君は、モンローじゃない。一億円の価値をつけてくれる男に出会えないなら、一万円を支払う一万人の男に抱かれればいい。」なんて口走る人事部長もいそうな気がします(アフターファイブ)。

後半の三部作には、「日傘のお兄さん」豊島ミホ を思い出しました。ロリコンの男性に恋をする早熟な少女がいてもおかしくないし、その思いが年を経ても消えなければ本物の純愛かもしれない。でもその後は?お兄さんが犯罪者として逮捕されてしまって、そして、その後の彼と彼女は?と、「日傘のお兄さん」を読んだとき、誰もが思っただろうと思うんです。

この本の三部作には、似たシチュエーションの物語が、その後の部分も含めて、よりリアルに、生々しく、描かれています。少女がお兄さんに再会したとき、彼には、自分の性的嗜好をカモフラージュするように、結婚した妻がいる、というのもリアルな設定で、この奥さんには心底同情しました。それに、少女が少女でなくなったら、ロリコンの男性から愛されることはもうない、というのもあたりまえの話ですよね。そして、すべてが終ってしまったあと、元少女がどんな女性に成長するのか、という部分にも、妙に納得してしまいました(運動靴)(ハズレくじ)(芽吹く)。

でも、全体的に官能度数が高くて、個人的にアウト(笑)。「犬心中」なんて、完全にポルノ。AVのタイトルみたい(笑)。

・怪物
・春の痣
・アフターファイブ
・犬心中
・運動靴
・ハズレくじ
・芽吹く
・隣の子供
| ま行(その他の作家) | 03:57 | - | - |
▲ 家族の言い訳 森浩美
家族の言い訳家族の言い訳
森 浩美

双葉社 2006-03
夫が蒸発した妻、
妻に別れを切り出された夫、
母に捨てられた息子、
死期が迫る母・・・。

家族に悩み、家族に喜ぶ。
ハートに響く初短編集。
たしかにいつだって、一番言い訳が必要なのは、家族に対してかもしれません。タイトルに、すごく納得しました。

内容もすごく良かったです。どれも平均レベル以上に感動的で、文章も上手い。

だけど・・・なんでしょう。上手すぎて、心に響かない。私にとっては、そんな短編集でした。

40代以上の人には、どれかの話に、個人的に共感できる部分があるだろうと思います。それから、子供のいる人の心にも、きっと響くんだろうと思います。そういう風に、すとんとはまったら、号泣してしまうんじゃないかなあ。それくらいいい本です。

だけど、自分も若くて(?)独身で、親もまだまだ現役で健康、なんていう私のような若造には、まだ早い本だったみたいです。

□ ホタルの熱
△ 乾いた声でも
□ 星空への寄り道
□ カレーの匂い
△ 柿の代わり
□ おかあちゃんの口紅
△ イブのクレヨン
□ 粉雪のキャッチボール
| ま行(その他の作家) | 21:36 | - | - |
● イレギュラー 三羽省吾
イレギュラーイレギュラー
三羽 省吾

角川書店 2006-06

すごく良かったです。爽やかで、面白かった。時々、しんみりもさせてくれた。明日への、元気をもらえる本です。久々に出会った、男女年齢を問わず、色んな人にオススメしたくなる作品。

蜷谷村は、9月の台風による水害で壊滅状態になり、人命以外のあらゆるものが失われました。半年がたった今も、村民のほとんどが、仮設住宅暮らしをしています。被害は深刻で、いつまた村で暮せるようになるかはわかりません。ほとんどの村民は農業など、村でしか出来ない仕事で生計を立てていたため、収入もほとんどなくなりました。みんなが親戚同士のように仲良く、明るく、励ましあってやってきた村民たちも、次第に疲れ、苛立ち、もめごとがおこるようになってきました。

そんな暗い状況の中で、唯一の明るい話題が、蜷谷高校野球部の活動再開です。甲子園にも出場している強豪のK高校の監督が、蜷高野球部監督の元教え子であり、その縁で、合同練習をさせてもらえることになったのです。挨拶の仕方もろくに知らず、部室でタバコを片手にビールを飲む。そんな、そもそもお行儀のいいほうではなかった上に、水害ですべてを失って荒んでいる蜷谷高校野球部の面々と、しつけの行き届いた伝統あるK高校の野球部員たち。彼らは、共に練習する中で、最初はぶつかり合いながらも、互いに様々な事を学び、友情を結びます。K高校のエースが、蜷高の女子マネに恋をしたりもします。ああ、青春!

という物語ですが、こーんな、ありがちなストーリー展開だけではありません。一つ一つのエピソードが、とにかく笑える!村民たちの会話も、部員のアダナも、部員同士の会話も笑えるし、細かいエピソードがいちいち笑える。

大きなエピソードのほうは、爽やかです。潜在能力は高かったものの、プライドの高さとやる気のなさが邪魔をして伸び悩んでいた、蜷高のエース、コーキは、K高校のバッテリーを間近で見てやる気を出し、才能を開花させていきます。村で一番経済状況が深刻な、五人兄弟の長男である神原のエピソードは切ないのですが、周囲の人の協力で、温かく解決します。監督同士のやり取りも、なかなか含蓄があって、スポーツマンらしく爽やかで、読み応えありです。

そうして迎えた甲子園予選。2つのチームの出した結果は?

というわけで、色んな人が色んな読み方で色んなところを楽しめる本なので、絶対オススメです。私はやっぱり正統派(というか著者の掌の上で操られるタイプ)の読書人なので、コーキメインで読みました。コーキの将来はきっと、大リーガーです!
| ま行(その他の作家) | 22:17 | - | - |
▲ 愛の島 望月あんね
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愛の島
望月 あんね
講談社 2006-04-21

by G-Tools , 2006/05/14


+ ChiekoaLibrary + のちえこあさんの、「最初から最後までびっくり」という書評を見て、興味を持った本。図書館にあったので借りてきました。

結衣、千夏、カッチ。孤児院で育った3人は、「カメレオン島」と紹介されているある島を、手に入れようと決めました。そのためのお金を手に入れるため、彼女たちは女の武器を使って仕事を始めますが・・・。

とにかく、物語の展開が、ありえないくらい読者の予想を超えています。深いんだか浅いんだかわからない3人それぞれのキャラも、最初から異常に見えた3人の関係も、読み進むにつれて、とにかく予想を超えている事がわかるし。

全体的に、へ?なんで?、え?そんな馬鹿な!、まさか!それでいいの?、あれ?いつの間に?、げ!そうきたか!、と、言った感じで、頭の中が疑問符と感嘆符でいっぱいになります。確かにびっくりしました。

どこにもリアリティがないし、常に読者は置いてけぼり。でも、著者が、何も恐れず、誰にも媚びず、やけに自信に溢れている気がして、そこに何やら得体の知れない迫力を感じ、こういう本なのね〜と、納得してしまいました。

「つっこみ不要」の看板を掲げて歩いているような本です。

後ろ暗い秘密を共有することで、健全な友情なんて成り立ち得ないのかもしれません。健全に愛されたことがないから、健全な愛し方がわからない。それでも、必死で愛そうとした、3人の姿が痛々しいラストでした。
| ま行(その他の作家) | 23:50 | - | - |
▲ いつか愛になるなら 前川麻子
photo
いつか愛になるなら
前川 麻子
角川書店 2006-03

by G-Tools , 2006/04/13


本屋さんで背表紙のタイトルを見た瞬間に、「絶対ならねえぞ。」と、心の中で即座に思いました。何の根拠もないというのに。で、そういう自分の性格と、言葉づかいが、ひじょうに美しくないな、と、思いました。できることなら、夢と希望に満ち溢れた、清く正しく美しい自分を取り戻したい。そう思って、手にとりました。

主人公の冬子は、「曖昧にしてきた自分を今象らなければ、煙のように流されて行くだけに違いない」、という理由で、美術学校に入学します。しかし、絵に対する情熱も、将来の夢や計画も、やはり曖昧なものなので、友達に流されるようにすぐに退学。美術学校の講師だった、イラストレーター・立川に、誘われるままに、彼の事務所に就職。そこで、やはり流されるままに、たくさんの男性と関係を持ち、長い時間が過ぎていきます。私には、どうにも共感しづらい主人公でした・・・。

やがて冬子は、立川、そして立川の妻・翠と、不思議な関係を作り上げます。あらすじを言ってしまえば、王道の不倫小説、とも言えるのですが、意外と読み応えのある本です。長さの割に主要登場人物が多く、それぞれの心情が複雑で、矛盾していて、想像の必要がたくさんある本でした。色んな読み方が出来る本だとも思います。「衝撃の結末」を、どう捉えるかも、読む人によって違うんでしょうね。

私の感想としては、とにかく、救いのない本だなあ・・・という感想です。悲しすぎる。冬子は、どうしてもっと、夢と希望に満ち溢れた、清く正しく美しい人生を送れなかったのでしょうか?冬子だけでなく、出てくる人がみんな、寂しくて、悲しい人ばかり。そしてそれは、おそらく曖昧なまま生きてしまった事や、流されてはいけない時に流されてしまった事の結果であり、「自業自得」なんだろうな、と思えて、本当にどこにも救いのない物語でした。

立川一家の「その後」が具体的に描かれていない事や、高藤の人生を、「救い」と受け止めることも出来なくはないのかな?冬子が思い続けることは、美しいのかな?このあたりの解釈は、難しいです。

さて、私は、夢と希望に満ち溢れた、清く正しく美しい自分を、取り戻せるのでしょうか?まあ、元々、持っていない分は、取り戻せっこありませんけどね・・・。

そうそう。私はデザイン関係の仕事をしていたことがあるので、立川の事務所の仕事のやり方が古すぎて、かなりの違和感がありました。最後まで読んで、「ああ、そういう事!」と、この違和感に納得できたのは、ちょっと気持ちよかったです。この本を読んで、唯一爽快だったのが、その点。
| ま行(その他の作家) | 12:25 | - | - |
■ 厭世フレーバー 三羽省吾
4163242007厭世フレーバー
三羽 省吾
文藝春秋 2005-08-03

by G-Tools

俺がかわりに殺してやろうか

父親が失踪。全力疾走のはてに少年は血の味を知ったー
帯より

先入観0で読んだので、シリアスな犯罪小説かと思った・・・。全然違ってびっくりした(笑)。あとでよく見たら、薄くて小さい字で、
家族の崩壊と再生をポップに描いた快作誕生!
と、ちゃんと書いてありました。もっと見やすく書いてよ・・・。っていうか、ちゃんと見よう!>自分
リストラされた父親が姿を消した。
14歳 ケイ → 陸上部をやめて新聞配達
17歳 カナ → いい子をやめて深夜までバイト
27歳 リュウ → 急に家長の意識にめざめる
42歳 薫 → すっかり酒びたりになる
73歳 新造 → 認知症が進行してしまう
いったい、この家族、どうなるの?
帯(裏)より

実際は、こういう小説で、まあまあ面白かったです。

家族それぞれの視点で、父親がいなくなった後の家庭を描いた、技ありの作品。同じ事象を、視点を変えることによって、がらりと趣を変えてみせる。小説ならではの素敵な技で、私もこういうのは大好きです。(あんまり量産されると、マネかパクリって感じで嫌になってしまうので、必要性があるときにだけ、使っていただきたいんですけど・・・。)

最初の2章は、重いネタをさらっと書いて、イマドキの青春小説って感じで、普通に良かったです。ありがちな設定、どこかで見たようなストーリー。それでもこれだけ嫌味なく面白いなんて、上手いなあ、と冷静に思っていました。

だけど、27歳のリュウの章が、個人的にはかなり好きで、とても印象的で。ここでこの本は「好き」ってことに決定!

最後の章が認知症のおじいさんの視点ということで、大丈夫か?どうするんだ?と思ったんですけど、全然大丈夫でしたね。大丈夫すぎて・・・拍子抜けしたくらい。物語をあせってたたんだ、という印象がなきにしもあらず。そのせいで少し、物語が薄くなった感じでした。ちょっと惜しかった。

家族それぞれの視点から語られる、いなくなった父親というキャラクターが興味深かったです。かなり個性的で・・・。こういう父親がいると、他の家族は結束して、もっと仲が良くなるような気がするんですが・・・。そうでもなかったみたいですね。
| ま行(その他の作家) | 14:54 | - | - |
▲ 海と川の恋文 松本侑子
4048736574海と川の恋文
松本 侑子
角川書店 2005-12-01

by G-Tools

1980年代から、バブル期をへて、低迷期の2005年までの、芸能界を舞台にした大河恋愛小説。

すごく長い小説で(しかも苦手な恋愛小説で・・・)、特に最初の大学編が退屈だったので、最後まで読めるか心配でしたが、主役の遥香が芸能界入りする辺りからはテンポが良くなって、なんとか最後までたどり着きました。でも、ここまで長い小説なのに、いちいち次の展開が読めてしまうというのは、どうなんでしょう?だって、どこをとっても「どこかで見たような話」なんですよ。

昼ドラの原作にぴったり・・・っていうかむしろ、昼ドラが原作なんじゃ・・・。オリジナリティはいったいどこへ?松本侑子さんってこんな小説を書く方でしたっけ?読み心地は、シドニー・シェルダンみたいでした。

キャラクターもねー。主役の遥香は、いい家の出のお嬢さんで、圧倒的な美貌をスカウトされて、順調に育っていく女優。彼女はずっと、家族やマネージャーに守られ、それぞれに魅力的な二人の男性に愛され続けます。一般ぴーぽーの私には、遥香への共感のしどころがありません。

彼女が、野心・・・とまでは言わなくても、「芸能界の頂点を極めたい」とか「お金が欲しい」とか、自分で目的を持って動いてくれるキャラなら、応援したいと思えたかもしれない。でも、遥香は何事にも受け身の、いい子ちゃんなキャラクター。重要な決断を迫られても、人に流されてあとで泣くだけ。全然共感できない。それなのに遥香の芸能人生は、なんだかんだ言って順風満帆なのですから、読んでいて、疲労感と虚脱感に襲われました。

ラストでやっと、大人になった遥香が、自分の足で立っているように感じられてきます。遥香の成長ストーリーにはなっていたと思います。だから一応、最後まで読んでよかったです。

「真実の純愛小説」と、帯に書いてあるのですが、日本の小説・映画・テレビドラマで近年ブームになっている「純愛」ものとは、違うジャンルだと思います。私は詳しくないけれど韓流の「純愛」なら近いのかもしれません。これはやっぱり昼ドラでしょう。
| ま行(その他の作家) | 12:51 | - | - |
★ 雨にもまけず粗茶一服 松村栄子
4838714491雨にもまけず粗茶一服
松村 栄子
マガジンハウス 2004-07-15

by G-Tools

正統派の青春小説でした。でも、けしてありきたりではなく、茶道界と、京都を舞台に、個性的なキャラクターが繰り広げる、コミカルなエンターテイメント。オススメです。

弱小武家茶道「坂東巴流」のあとつぎ遊馬は、大学浪人中。親は、将来家元になる彼に、茶道の本場である京都の空気を味わわせたいと、京都の寺で修行させる事を考えています。京都が嫌いで、跡継ぎにもなりたくない遊馬は、ミュージシャンを目指してふらりと家出するのですが、なぜか、京都でお茶のお師匠さんの家に居候するはめになってしまいます。

基本的には、進路に悩む遊馬の成長物語。そこに消えた茶杓の謎、いくつかの爽やかな恋物語、「坂東巴流」の、そして、その本家筋にあたる京都「宗家巴流」の後継者問題などが絡んで、飽きずに読めます。楽しかったです。
あの子は理屈やのうて身体で覚えるタイプなんやね。そのことようわかったおひとが大事にしこまれはったんやと思いますわ。自分ではきっと何も知らんつもりやろけど、どっか奥のほうではけっこうわかってはんねん。
と、描写される、遊馬のキャラクターが最高です。次期家元として育てられたお坊ちゃんで、世間知らずではありますが、茶道とは縁のない私でも親近感が持てる、庶民的で真面目で愛すべきキャラクター。芯のところで育ちがいいんですね。優柔不断なところと、頑固なところのバランスの悪さも、魅力的でした。

遊馬を大切に育ててきた坂東巴流の人々。遊馬の成長を大人の余裕で見守る京の酔狂な茶人たち。見た目と中身が全然違う、京女の翠ちゃんや、遊馬の恋のお相手、佐保ちゃん。登場人物みんなが素敵な小説でした。私の中での一番人気は、遊馬の弟、行馬くん。小学4年生にして人生を悟り、次男の立場に甘んじることなく、自分の人生を自分の手で切り開くスーパー小学生。かっこいい!

ラストは予定調和なのですが、締め方がうまいんです。遊馬の成長を物語る詩で締めくくられているのですが、これが最高でした!何度も読んじゃった。笑えて、笑えて、少しほろりとさせてくれる、読後感のいい本です。
| ま行(その他の作家) | 14:22 | - | - |
■ 天国からマグノリアの花を 松野大介
4062130297天国からマグノリアの花を
松野 大介
講談社 2005-09-10

by G-Tools

死が迫る彼との契約結婚
信じたい。あたし、お金で買われたんじゃないよね。
報酬は400万円。「たった4ヵ月の結婚」は、真実の愛になりえるか?
生のギリギリのリミットに向かって変容する愛を描いた長編ラブ・ミステリー。
この帯の最後の行を、きちんと読んでいなかった私は、流行の、お涙頂戴恋愛小説だ、と、思って読んでいたんです。そうしたら、いきなり殺人未遂事件がクローズアップされるは、直子は彼を疑いだすはで、驚いてしまいました。今見たら、ちゃんと「ミステリー」って書いてありますね。

形式としては完全にミステリーです。でも、ミステリーとしては・・・イマイチ。やっぱり「ラブ」の部分のほうが良かったです。最後は、予想していたよりも感動的でした。

この本では、「結婚」がテーマになっていることが、ポイント高いです。「恋愛」小説は多いし、「夫婦」がテーマの小説も多いですよね。でも、小説の中で「結婚」は、勝ち組・負け組みを扱った本で、ひねくれた扱いをされるか、「紙切れ一枚」というような、軽い扱いをされることが多い気がします。結婚の意味や価値について、小説を読んで考えさせられる事ってあんまりなかったので、新鮮でした。
| ま行(その他の作家) | 23:24 | - | - |
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