再読。いや、再々々・・・読くらいかなあ。北村薫さんの「時の三部作」の第二弾です。私は、三部作の中で、これが一番好きです。
どんな一日をすごしても、ある時間になると、自分の身体が同じ場所に戻ってしまい、変化したはずのものもすべて戻ってしまい、また同じ一日が始まってしまう。そんな「くるりん」現象の中に、一人置き去りにされた主人公の真希。自分が彼女の立場だったらと考えると、耐えられない!これは、本当に辛い状況です。永遠の孤独。すべてが徒労。でも彼女は、あくまでも前向きに、この現象に立ち向かいます。
最初に読んだときは、彼女が自分が何者なのかを思い出し、時の意味を見出し、生きる意味を見出す、というこの小説のテーマ的な部分に興味をひかれました。私は「音楽の演奏」という、一瞬で消えてしまうものに精魂込めているのですが、彼女のような画家にとっては「残る」という事に大きな意義があるんですよねー。私はなんで楽器を弾くんだろう?とか、色々考えちゃいました。
でも今回は、恋愛小説として読んでみたんです。
こんなやついないよ・・・というくらい、生真面目で、健気な性格の真希。おかげでこの本はとても爽やかな恋愛小説に仕上がっています。北村さんの本にはこのタイプの女性が多いですが、特にこの恋愛は、真希のこの性格がなければなりたちません。相手は、奇跡的に現実とつながった一本の電話の向こうにいるイラストレーター。実際に会って話す事はなく、電話と、作品を通じて知り合っていく、2人の純愛は大きな見所ですよね。真希が、「現実の世界の自分が、今ここにいる自分とは別に目を覚まし、彼と恋に落ちるなら、自分は電話を切ろう」と、決意するシーンは、かなりきました。切ない。
でも、蛇足なんじゃない?と、思ったのは、真紀が子供の頃から頭の中で彼に似た声としゃべっていたという設定。これって、必要?この設定がないと、前半の文体がかなり変わって、雰囲気も変わってしまうと思うけど、ストーリーとしては、ないほうがいいんじゃないのかなあ。私は、変に「昔から決まっていた運命の相手」的な設定をしてしまった事で、2人がお互いを思う気持ちに、水をさされたような気がしてしまいました。
でも、それでも、この本は大好きですけど。