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● バスジャック 三崎亜紀 
4087747867バスジャック
三崎 亜記
集英社 2005-11-26

by G-Tools

すごく良かった!ショートショートから中編まで、色々な長さの7編の小説が収められています。長さだけではなく、内容も、筆致も、バラバラ。出来にもムラがあるような気がします。でも全体として面白かったです。「となり町戦争」はまぐれじゃなかった。三崎さん、本物だ!気になる作家さんに追加しよう、と、思いました。

・バスジャック
今、「バスジャック」がブームである。
一行目がこれです。この時点で私は完全に、引き込まれてしまいました。何を書いてもネタバレになってしまうので、何も書きたくありません・・・。とにかく、すみからすみまで面白いし、構成が緻密で、短編のお手本のようにレベルの高い作品なので、読んでみて欲しいです。この表題作が、一番のオススメです。

・動物園
その動物園にはいない、珍しい動物をプロデュースして見せるという才能を持ち、それを仕事にしている女性が主人公です。彼女のプロ意識がかっこよくて、爽やかな短編。でも、何より、このアイデアがぶっ飛んでいます。よくこんな事を思いつくよなあ。動物のプロデュースなんて・・・。(どこがどうぶっ飛んでいるのか、読んでいない人にはわからないと思いますが、書くとネタバレ・・・。ぜひ読んでください!)

・二人の記憶
恋人同士には・・・いえ人間同士には、いつだって、すれ違いや、勘違いや、思い込みがあるものですが、この二人は常軌を逸しています。二人で積み上げてきたはずの思い出も、昨日のデートも、見たばかりの映画も、彼女が語る記憶は、僕にはないものばかりなのです。二人の恋の結末は?自分が同じ立場だったら・・・と考えずにはいられません。シュールで、切ない短編でした。

ほかに
・二階扉をつけてください
・しあわせな光
・雨降る夜に
・送りの夏

どれも、奇想天外で、ナンセンスで、でも、温かみがあって、読後感の良い作品たち。アイデアに脱帽。

だけど「雨降る夜に」は、さすがに、無理があると思うんだな。これは、小説じゃない。あと、「送りの夏」はこの本では一番長い作品だけど、それでも説明不足だと思います。「死」を真っ向から扱った力作。登場人物も多いし、ぜひ、長編で読みたいです。
| ま行(三崎亜紀) | 15:35 | - | - |
■ となり町戦争 三崎亜記
4087747409となり町戦争
三崎 亜記
集英社 2004-12

by G-Tools

ある日突然、「となり町」との戦争が始まります。しかし、日常生活は何も変わらないまま。役場から「偵察員」に任命された僕でさえ、戦争の実感を持てないまま、今までどおりの日々をすごしています。でも、市報にのせられる戦死者の数は、着実に増えているのです。

なかなか、恐い本でした。本当にどこかの国と戦争をすることになったとしても、こんな感じなのかもしれないと、思って。どうして戦争しなくちゃいけないのかわからないまま、戦争に協力させられて、「死」の実感を持てないまま、殺人に協力する人がいて。「僕」はずっと「どうして?」と尋ね続けるのですが答えは得られない。そして、たくさんの「死」があったにもかかわらず、あっけなく、お役所的な方法で、戦争は終わってしまう。リアルです。

そんなわけで前半が良かったです。市役所が公共事業として戦争を行う、なんて、びっくりな発想ですが、良く考えれば国同士はいつも公共事業として戦争を行ってるわけで。戦争中だって、仕事をし、人と話をし、家事をし、日常生活は営まれていくわけで。非現実的なのに、どこか現実的。

文体とか、「僕」の性格とか、ちょっと村上春樹っぽかったなあ。淡々とした語り口ながら、頭の中では「どうして?」とすごーく悩んでいるあたりがまた、戦争を知らない世代に現実にいそうな人間像で、恐かったりして。

後半はねー。悪くはなかった。全然悪くなかったんだけど、僕の興味の中心が、「戦争」よりも「役場の戦争担当の香西さん」という女性に移ってしまうんですよね。僕は、任務のためにこの香西さんと偽装結婚していて、肉体関係もあるんです。だから、現実感のない「戦争」の中で、きれいで性格も素敵で仕事もできる香西さんに、目が向いてしまうのは当然というか、そんなもんだろうなあと思うんだけど。あれ?恋愛小説?テーマがよくわからなくなったぞ・・・というのが正直な感想です。

まあ、全体としては、読んで良かったです。たしかに新人さんというのは信じられない!でも、直木賞はとれないよね・・・って感じでした。うーん、私的には、芥川賞のほうの候補になるような作品のような気がするんだけど・・・。違うのかな?
| ま行(三崎亜紀) | 01:17 | - | - |
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