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あなたの呼吸が止まるまで 島本理生
あなたの呼吸が止まるまであなたの呼吸が止まるまで
島本 理生

新潮社 2007-08

十二歳の野宮朔は、舞踏家の父と二人暮らし。夢は、物語を書く人になること。一風変わった父の仲間たちとふれ合い、けっこう面倒な学校生活を切り抜けながら、一歩一歩、大人に近づいていく。そんな彼女を襲った、突然の暴力。そして少女が最後に選んだ、たった一つの復讐のかたち――。『ナラタージュ』から二年、新たな物語の扉が開く。
正直、好みではない小説でした。なんとなく中途半端で。切れ味のいい、鋭いナイフに見えたものが、ゴムでできた偽物だった、というような読後感。不自然に感じられることがありすぎて、この小説の世界を受け入れられない感じでした。

朔という主人公のキャラクター設定に関しては、彼女を常に取り囲んでいる寂しさと、父親の仲間たちとの交流の中で、アンバランスに成長してしまったということで、理解できなくもないのですが、登場するほかの十二歳達がみんな、朔と同じような「十二歳らしくなさ」を持っていることが不自然でした。わかりやすいところで言えば、みんな語彙が豊富で、言葉を操ることにたけている。だから、朔も含めて、この本では「十二歳」らしさを描けていないと感じてしまいました。それはこの小説においては、致命的な欠点だと思いました。

ほかにも色々あるんですけど…特にラストには言いたいことがいっぱいあるんですけど…書かないでおきます(汗)
| さ行(島本理生) | 21:53 | - | - |
● ナラタージュ 島本理生
photo
ナラタージュ
島本 理生
角川書店 2005-02-28

by G-Tools , 2006/04/08





高校時代に、部活の顧問だった先生を、ずっと思い続ける女性の物語。
大人になって、別の男性と結婚しようとしている彼女が、
彼との恋を、回想する形で綴られます。

葉山先生のどこがそんなにいいのか、という男性陣からの疑問・質問には、
私も答えられません。どこがいいのか、さっぱりわかりません。
葉山という人の人物像は、しっかり描写されているとは言えないと思います。
彼が、主人公・泉に打ち明けた、過去の苦い経験と、
泉との関係で、自己中心的ダメ男ぶりをさらしているという以外、よくわからない人。
だから、私も、葉山は最低だと思うし、一貫して嫌いでした。

ただ、葉山のどこがいいかはさっぱりわからなくても、泉の気持ちはわかります。
相手が、最低のダメ男でも、好きだったら、関係ないんですよね。
相手がダメであればあるほど、甘えられて、はまっちゃうなんて、よくある話。

相手がこんなダメ男だからこそ、彼を思い続ける、泉の気持ちが切ないんです。
無理なく共感できる本だと思いました。恋愛小説で、ひさびさに泣けました。
クライマックスまでの盛り上げ方が、本当に上手いですよね。
そして、それに続くラストの数ページが、しみじみと切なくて、良かったです。

忘れられない強烈な恋の思い出って、誰にでも1つや2つあると思います。
でも、その恋が、泉のようにドラマチックな展開をして、
悲しいけれど清々しいラストシーンを迎えて、
思い出すと胸が痛むけれど、その痛みすら愛せるほどに、美しい記憶である、
なーんて事は、なかなか、ないんじゃないかな。
だから、過去の恋を、徹底的に美化してくれるこの本が、絶賛されたんでしょう。

美化という意味では、島本さんの文章の力はすごかったと思います。
登場人物の心情を、直接にではなく、体感や、風景を描くことで示していて、
なんだか、芸術的な上手さでした。
昇華という言葉があるくらいですからね。
すべての芸術は、けして美しくはないものを、美化するところから始まる。
これ、すごく、誉めてます。



ただ小説を全体的に見渡すと、イマイチなところがあるんですよね。

ページ配分のバランスが、ひどく悪いような気がするんです。
前半で、ちょっと退屈したんです。
それでもそのままの穏やかさで、最後までゆっくりと進展する物語なら、
それはそれで、好きになったような気がするのですが、
後半は、昼ドラのような波乱の展開で、テンポがよく、スピード感たっぷり。
前半と後半が、分離した印象で、まとまりがない気がします。

泉と小野君の恋愛も、ページ数的には長すぎましたよね。
2人の、すれ違う思いというのはリアルで、エピソードとしては良かったんだけど、
全体のバランスとしては、長すぎると思います。

そして、柚子ちゃんの手紙って必要でしたか?
葉山に衝撃を与えるなら、教え子の自殺という事実だけで十分のはず。
終盤をドラマチックに盛り上げたエピソードではありましたが、
小ネタに使うには重すぎるエピソードで、何かがぶれたと思います。
昼ドラ感、一気に2割増しって感じでした。

それから、あとほんの少し、泉の「続き」が欲しい物語なんですよね。
タイトル「ナラタージュ」が意味するところを考えると、
泉が婚約者と過ごしている現在に、もう少しページをさいて欲しかった。
プロローグの部分を、もう少し長くして、婚約者の事をもう少し描いたほうが、
もっと、切なかったと思うし、小説が綺麗に着地できたと思う。
・・・ただ、この点に関しては、私自身が、現在の泉よりさらに年上だから、
というだけの、個人的な理由かもしれません・・・。

まあ、長々と文句をつけてはいますが、
大きな欠陥というわけではないし、感動にケチのつくような欠点でもない。
なんだかんだいって、結局、素敵な本でした。
| さ行(島本理生) | 13:34 | - | - |
▲ リトル・バイ・リトル 島本理生 
4062116693リトル・バイ・リトル
島本 理生
講談社 2003-01-28

by G-Tools

主人公は、高校を卒業したばかりの橘ふみ。母親と、父親の違う妹との3人暮らし。受験勉強中に母親と2番目の父親が離婚したため、1年間進学をのばし、アルバイト生活をしています。

文章が上手で、読みやすい本でした。淡々と日常をつづっているだけで、特に何もおこらないし、主人公の気持ちもよくわからないし、他のキャラクターの輪郭も見えてこないし、著者が何を言いたいのかもよくわからないままだったのに・・・最後まですいすい読んでしまいました。しかも、あとがきを読んだら、「は?そんな事を書きたかったの?全然わからなかったよ!」って感じでした。

家族、恋愛、血のつながり、人間関係、仕事、などなど、読む人によって色んな事を考えて、色んな読み方ができる、いい本だとは思います。好きか嫌いかといわれれば、私は好きです。でも、面白いかと聞かれると・・・退屈だったと答えると思います。感想を一言で言うと「微妙」。

あとがきがないほうが、よかった本だと思います。あとがきに、あまりにはっきり著者の書きたかった「テーマ」や「主張」が書かれていたので、なんだか、最後にさめてしまいました・・・。
| さ行(島本理生) | 17:29 | - | - |
■ 一千一秒の日々 島本理生
4838715927一千一秒の日々
島本 理生
マガジンハウス 2005-06-16

by G-Tools

え?あれ?これ、本当に島本さん?いきなり、上手くなってるじゃん!しかも、大人になってる!何かあったの?<よけいなお世話。

・・・って、いきなり偉そうですが、これが素直な感想です。今まで読んだ何冊かが、正直言って、イマイチだったので、期待しなかったのが良かったのでしょうか。青臭くて、読んでいてこっぱずかしくなるような、少女小説か少女漫画の世界の人だと思っていたのに・・・。この本は、ちゃんと読める!登場人物は大学生でも、物語は大人の鑑賞に堪える!ライトで読みやすいけれど、読んでも時間の無駄じゃない!

連作短編集です。淡々とした筆致だけど、心理描写はけっこう鋭い。思い通りにいかなくて、じれったくて、せつない、色々な恋愛が、どれもいいんです。展開は遅いけど、いい物語なんです。それぞれの登場人物が関係しあって、本を一冊読み終えると、ぐるっと人の輪がつながる構成になっていて、その構成がまたいい味を出しています。リアルな社会の人物相関関係に近いような気がして、面白かったです。そうやって主役が次々に変わるのに、すぐに感情移入できて、すぐに物語に引き込まれてしまいました。上手い!やっと、ちまたの評判と同じ、「若いのによく書けるなあ」という感想に到達しました。

そして、加納君かっこいい!実際にはいないだろうけど!っていうか、実際にいたら、かっこよくないと思うけど!

私が恋愛小説を誉めるなんて、珍しいんですよ。<だからなんだ。

ナラタージュまではまだまだ遠い道のりですが(図書館予約で前に100人くらいいるんです)ナラタージュを読む前に、島本さんを見直してしまいました。

ただ。1つだけ文句を言わせてもらえば。最後にくっついている「夏めく日」はいらない。サービスのつもりかもしれないが、いらない。「夏めく日」自体が悪いわけではないけれど、この本にくっつけた事は失敗だと思います。余韻、台無しです。
| さ行(島本理生) | 19:46 | - | - |
▲ シルエット 島本理生 
4062109042シルエット
島本 理生
講談社 2001-11

by G-Tools

けっこう切ない、恋愛小説。・・・とりあえず、読んでいる間は。

恋愛小説とはいえ、ネタばれはいけない本のような気がするので、詳しくは書きません。10代の人にはオススメ、かなあ。

終わってみると、大人が読むには、物足りない本。大人が読んでも、読み応えのある青春小説とか、若い人が主役なだけでちゃんとした「文学」というのもありますが、これは若い人のための「恋愛小説」あるいは単なる「愚痴」であって、それ以外の何でもない。あえていえば、少女漫画に近いです。

読みやすい文章であり、構成もうまいと思います。あとは、中身がともなってくるといいなあ。なんか女子高生がウジウジしているだけの小説に見える。まあ、作者が若いので、これからに期待って感じでしょうか。

いまだに「ナラタージュ」を予約待ちしているので、島本さんへの期待は持ち続けている私です。
| さ行(島本理生) | 12:04 | - | - |
▲ 生まれる森 島本理生 
4062122065生まれる森
島本 理生
講談社 2004-01-29

by G-Tools

実は、初島本理生作品。

大学1年生の夏休み、友達の家を間借りして、仮の一人暮らしをはじめた「わたし」。淡々とした筆致で描かれてはいるが、最初から、主人公が何かに絶望していることははっきりわかる。彼女の再生と、友人のキクちゃんや、その家族とのふれあいを描いた本。読み進めていくにつれ、彼女の絶望の理由が明らかになっていきます。

「わたし」が結局、雪生のような人と出会って、なんとなく将来的にはいい感じ、というラストはなんかなー。その前までの「わたし」が堕ちた森の深さが深さだけに、安易なオチに見えてしまった。登場人物も、作者も、若いなあ、という感想。後味が良くて、嫌いなタイプの本じゃないけど、印象は薄いです。

まあ、どんな事情と理由があるのかはっきりしないが、サイトウは最低。
| さ行(島本理生) | 10:23 | - | - |
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