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■ ガーディアン 石持浅海
ガーディアン (カッパ・ノベルス)ガーディアン (カッパ・ノベルス)
石持浅海

光文社 2008-08-21
「勅使河原冴の章」

テッシーこと勅使河原冴には、ガーディアンがついていて、子供のころから彼女を守っていてくれます。彼女の身に危険がせまると盾となって危険を跳ね返し、悪意のある攻撃があればそれを防いで、何割か増しで仕返しをする。そんな存在です。テッシーは、幼いころに亡くなった父親が彼女を守ってくれているのだと信じています。

そんな彼女の能力が、職場の仲間たちに知られるようになった時、事件が起こります。同僚の1人が駅の階段から落ちて亡くなったのです。その現場に居合わせたテッシーは、その時、ガーディアンの力が働いた事に気がつきました。彼の死は、警察によって事故として片づけられましたが、テッシーには納得できません。彼が、ガーディアンによって殺されたのだとしたら、彼はテッシーを殺そうとした事になります。しかし、テッシーには彼に殺されるような理由が思い当たらないのです。彼の死は、本当に事故だったのか、それともガーディアンによって殺されたのか、それとも自殺か。

なかなか面白く読めました。主人公のテッシーが、ガーディアンに守られているという特殊能力はあるものの、ごく普通のいい子すぎないいい子で、親近感の持てるヒロインだったので、読みやすかったです。それに、探偵役となる栗原という人物が、とっても善良で誠実で人間愛にあふれる魅力的な人でねー。ほかの登場人物にも、悪い人っていうのはいなくて、みんないい人。恐い話になりそうなホラー&ミステリーを、ほわーんとした温かい物語に仕上げてくれていました。

まあ、途中で、彼には今自殺する理由が無い!と、その線が完全否定されていたのに、結論はごにょごにょ、という点が、若干納得できませんでしたが…。うん、全体的に、楽しく読めました。

「栗原円の章」

冴と栗原の娘、円の物語。冴の元をさったガーディアンは孫娘にあたる円を守っています。そして、その守り方は、ますます過保護に、ますます過激になっています。中学生になった円は、友人と共に入った郵便局で、銀行強盗の一団に遭遇しました。円は、そしてガーディアンは、どう動くのか?

冴の章では、ガーディアンは結局誰も殺さなかったし、信頼できる男に娘が出会ったらそっと離れていった。一応は、父性愛の物語として温かく終わっていました。でも、円の章は、ガーディアンがついていたことで、たくさんの人が死んでしまう陰惨な物語です。円という主人公も、気味の悪いほど良く出来た子で、好感をもてない。…この物語は…どこをどう楽しんでいいのか…。

栗原円の章を無しにするか、例えば大人になった円の物語か、円の娘の物語か、何かもう1つ物語を追加して、後味よく終わってくれればよかったなあと思います。
| あ行(石持浅海) | 21:40 | - | - |
■ Rのつく月には気をつけよう 石持浅海
Rのつく月には気をつけようRのつく月には気をつけよう
石持 浅海

祥伝社 2007-09

長江高明、熊井渚、湯浅夏美の3人は、大学時代からの飲み友達。卒業後の今も、しょっちゅう長江の家においしいつまみと酒を持ち寄って飲んでいます。いつも同じメンバーではマンネリ化するということで、誰かがゲストを連れてくるのが定番です。毎回そのゲストがちょっとした謎を持ち込み、長江を中心に謎解きをする、という短編集。

好きな本でした。とにかく、出てくる食べ物が美味しそうで、読んでいて幸せ!おしゃれなお店を舞台にした、おしゃれな料理が登場する、おしゃれな小説はたくさんありますが、この本はそうではありません。庶民が気軽に食べられる味。気の置けない友人と、気取らずに飲むときにぴったりのつまみ。実際に食べたら、そこまで美味しいものではないことは、私も知っているのですが、この本を読んでいるときは、やけに美味しそうに思えました。深夜にチキンラーメンを砕いて食べたくなってしまった。

出来すぎなラストに読後感も最高。古くからの自分の友人と、恋人、あるいは夫や妻が、気が合って自然に仲良くなってくれるって、いいよね。それに、気心の知れた友人と結婚するっていうのも、きっと幸せなんだろうな。恋人や夫婦は、男と女の関係だけではなく、親友でもある関係になっていかなくちゃつまらないし、続かないものね。

基本的には安楽椅子探偵もので、謎解きには無理のあるものも多かったので、ミステリーとしては失礼ながらそこそこの出来といった感じ。でも、全体として満足しました。

・Rのつく月には気をつけよう
・夢のかけら 麺のかけら
・火傷をしないように
・のんびりと時間をかけて
・身体によくても、ほどほどに
・悪魔のキス
・煙は美人の方へ
| あ行(石持浅海) | 10:08 | - | - |
▲ 耳をふさいで夜を走る 石持浅海
耳をふさいで夜を走る耳をふさいで夜を走る
石持 浅海

徳間書店 2008-06-17

ネタバレあり

並木という1人の男が、たった一晩で何人もの親しい人を殺害していく様子を描いた連続殺人小説です。いくつもの殺人の場面が、丁寧に詳細に描写されていて、背筋が寒くなります。1人目を殺したのは正当防衛だった。でも、並木はそれをきっかけに、次々と人を殺していきます。殺すたびに「殺人」に対する意識が変化していきます。緊張と興奮、そして快感、最後にはそのすべてを無くして、ただ冷静に。この心理描写には読み応えがありました。エンディングも、恐怖の余韻が残って、良かったと思います。

ただ、ちょっと、並木の動機が弱いかなあと思ったりもしました。

並木は以前に、冤罪被害者を支援する団体で活動していました。そこには、特別に目をかけていた3人の被害者の少女がいました。彼女たちは、冤罪で父親が逮捕され獄中死をとげた、という過去を持っており、バッシングに傷つき世間を信じられなくなっていました。そんな彼女たちを助けたのが、並木と、心理カウンセラーのあかねでした。

少女たちは、カウンセリングを受けて回復していく段階で、人間を、自分の味方である「こちら側」と、敵である「あちら側」の2つに、完全にわけて考えるよう、並木やあかねによって誘導されます。そして、「あちら側」の人々をあっさり切り捨て、彼らの命すらどうでもいいと思うような精神構造をもつようになりました。並木は、彼女たちがその特殊な精神構造ゆえに、いつか「あちら側」の人間を殺し、大事件を起こす、それを心配しました。だから、その前に、彼女たち3人を、自分の手で殺さなければならない、と、そう決意したのです。

…これ、彼女たちの精神構造や思考回路を、なんとかして変えるようと努力するっていうのが普通で、だから殺さなければ、なんていう考えは、悠子に誘導されたとはいえ、明らかに異常だよねえ。作中で並木は自分の事を、恵まれた環境で育ったごく普通の人間で、どちらかといえば善人である、というような分析をしているんだけど…もともと普通の人じゃなかったんじゃないかなあ。

まあ、この本では、並木の動機が不自然なことなんて、たいして重要ではないと思うのでいいんですけど。気になったので一応書いておきました。
| あ行(石持浅海) | 17:55 | - | - |
■ 顔のない敵 石持浅海
顔のない敵 (カッパ・ノベルス)顔のない敵 (カッパ・ノベルス)
石持 浅海

光文社 2006-08-22
1993年、夏。カンボジア。NGOのスタッフたちが地雷除去を続ける中、突然の地雷の爆発音が轟いた。これは、純然たる事故なのか? 表題作を含め、「対人地雷」をテーマにしたミステリー6編と、処女作短編を収録。
対人地雷問題について、改めて考えさせられた一冊でした。著者の強い問題意識が伝わってきました。収録されている6編は、それぞれ、対人地雷問題の、別々の側面に焦点を合わせています。対人地雷の性質を説明し、その恐ろしさと被害の大きさを訴えるだけでなく、現在も続いている地雷除去作業や、それにともなうNGOの資金集めについても描かれていますし、日本と地雷問題の関わりや、未来への展望も描かれています。

もちろん、地雷問題はミステリーのモチーフとして扱われているだけなので、読みやすく、娯楽小説として楽しめる本でしたが、地雷問題に対する著者の真摯な姿勢が一貫していて、楽しいだけで終わらず、本当に考えさせられる本でした。あとがき込みで、勉強になりました。

世界は不幸であふれている。そのほんの一部を知っただけで、私はとってもショックを受けて、もうダメだ!なんて思ってしまうけど、現実には何千何万という数の人たちが、その悲劇を乗り越え、あるいはその悲劇のすぐそばで生き抜いている。人間は無力だけれど、意外と強い。そのことをとても素敵だと思いました。

・地雷原突破
・利口な地雷
・顔のない敵
・トラバサミ
・銃声でなく、音楽を
・未来へ踏み出す足

・暗い箱の中で
著者の処女作。これだけは地雷とは関係ない物語。
| あ行(石持浅海) | 07:07 | - | - |
■ 君の望む死に方 石持浅海
君の望む死に方 (ノン・ノベル)君の望む死に方 (ノン・ノベル)
石持 浅海

祥伝社 2008-03


若干のネタバレ!

なかなかインパクトのあるタイトルですよね。石持さんの作品じゃなくても、タイトルに魅かれて手に取ったかもしれません。

「扉は閉ざされたまま」の登場人物、優佳が再び登場しています。シリーズ物になるのかなあ。前作同様、閉鎖的な空間における、限られた人物の心理戦が見どころでした。この空間を支配しているのは、ガンで余命わずかと宣告された、会社社長の日向。日向は、熱海にある保養所に4人の優秀な社員を集め、研修を行おうとしています。この研修の真の目的は、社員の1人である梶間に、自分を殺させる事です。もともと両親の仇として日向を恨んでいる梶間が、自分を殺し、その後逃げ切って完全犯罪を達成できるように、日向は数々のしかけを施しています。

この日向の計画の邪魔をするのが、ゲストとしてやってくる優佳です。日向の数々のしかけは、次々に無効にされていきます。優佳と日向の対決シーンは読みごたえがありました。優佳が、前作にもまして鋭くて、とにかく有能。すごみすら感じました。女って恐いわ〜という感じのすごみでした。

前作の自分の感想を読み返してみたら、動機に納得がいかなかったらしいのですが、この本「君の望む死に方」の主人公である、日向の「動機」は、それなりに納得できるものでした。自分は、殺人を犯した事によって用心深さを身につけ、それによって会社を成長させる事が出来た。だから、自分の死後、自分の会社を託す者にも、殺人を犯させなければならない。自分を殺させるだなんて、なんとも荒っぽい方法ですが、社員教育の一環というわけですね。

ただ、優佳の気持ちが納得できない。優佳は殺人を止めたいと強く思っていたし、止める方法はいくらでもある。それなのに、止めなかった。それこそ、日向の部屋に一晩中いてもいいし、梶間にあなたのやろうとしていることはバレています、と告げるだけでもいい。それをしなかったのは、日向の覚悟と決意を尊重したって事なのかなあ。うーん。

もしもこれがシリーズものになるなら、優佳という人物の人となりがもっと見えてくるでしょうから楽しみですね。日向と梶間の対決の結果も、いつか明らかになる日が来るといいな。
| あ行(石持浅海) | 17:31 | - | - |
■ 温かな手 石持浅海
温かな手温かな手
石持 浅海

東京創元社 2007-12

大学の研究室に勤める畑寛子の同居人・ギンちゃんは、一見、料理上手な普通のサラリーマン。でもその正体は、人間の生体エネルギーを手の平から吸う、人間とはまったく別の種族の生命体です。ギンちゃんの妹ムーちゃんも、元気いっぱいの女子大生に擬態しつつ、サラリーマンの北西匠の同居中。寛子や北西の出会う事件を、名探偵ギンちゃんとムーちゃんが解決する連作短編集。

ギンちゃんとムーちゃんの謎解きが、とにかくスピーディーなので、よく考えると残酷で重い事件が扱われていても、さらっと読めてしまいました。主要キャラクターがみな善良で「清らかな生体エネルギーの持ち主」ばかりなのも良かったです。ラストの一遍が、途中で予想できたオチとはいえ切なくて、お気に入りでした。

そして一番の感想はやはり、わたしもギンちゃん&ムーちゃんとお知り合いになって、今日うっかり取ってしまった過剰なカロリーを抜いていただきたいという事です!清らかな心の持ち合わせがなくて残念でなりません。

個人的にはそろそろ、石持さんの、ガッツリ本格の長編が読みたいのですが・・・。

・白衣の意匠
・陰樹の森で
・酬い
・大地を歩む
・お嬢さんをください事件
・子豚を連れて
・温かな手
| あ行(石持浅海) | 23:30 | - | - |
● 扉は閉ざされたまま 石持浅海 
4396207972扉は閉ざされたまま
石持 浅海
祥伝社 2005-05

by G-Tools

してないとは思うけど、一応、ネタバレ警報は出しておこう

あいかわらず石持さんは、閉鎖的な空間や、登場人物が限定的な作品が好きなんだなあ。この本では、7人の大学時代の旧友が、高級ペンションで同窓会を開きます。

リーダー格の伏見は、後輩の新山を、密室状態の客室で、事故を装って殺害します。集合時間になっても新山が起きてこないので、メンバーは心配しますが、鍵のかかった現場に侵入する手段はありません。扉を壊す、窓を割るなどの方法で、新山の状態を確認しようとするメンバーを、伏見はたくみに誘導して、死体の発見時間を遅らせようとします。

他の4人が伏見にいいようにコントロールされる中、一番年下の優佳だけが、わずかな手がかりから、伏見の計画をくずしていきます。犯人・伏見の視点で描かれるので、どのシーンにも、すごく緊張感がありました。

過去のいきさつ、2人の性格、賛否両論あるであろうラストシーン、すべてを含めて、伏見と優佳の頭脳戦・心理戦は、読み応えがありました。私はこのラストはけっこう好きです。ピタっと決まった感じがしました。女って恐いわ〜。(っていうか・・・伏見なら、メンバーに優佳が入っている事を知った時点で、計画を先送りにしそうですけどね。それだけ急いでたのかな。)

トリック的には、言いたい事がたくさんありますが、そこはつっこんじゃいけないんだろうなあ、という作品なので、まあいい事にします。ただ・・・。

動機は納得できません!弱すぎです。でも「ただなんとなく」殺人が起こる時代に、動機の弱さなんてミステリーの欠点ではないのかもしれませんね。だから、もうひと言つけたしますが、弱いだけじゃなくて、矛盾してる気がするんです。優佳いわく「高潔」で、こんなに正義感だか、人間愛だかに溢れちゃっている人物が、殺人?しかも後輩を?この矛盾は・・・納得できない。

という感じですが、かなり面白かったです。ミステリー好きなら、読んで損はないと思います。

館ミステリーの様式美を踏襲しているようで、していない設定。それに「扉を叩き壊すというのが、本格ミステリの世界にはよくあるシーンなので、そうでない話を書こうと思った」という、著者のことば。いわゆる「本格ミステリ」というジャンルに対する、チャレンジ精神というか、客観性というか、そのあたりが、東野圭吾さんっぽかったです。

2人を比べてしまえばもちろん、現時点では、東野さんの圧勝です。(同じ倒叙ミステリーの「容疑者Xの献身」とこの本を比べれば、一目瞭然です!あくまでも私見・・・つまりファンのひいき目ですが)でも、石持さんがいつか書くであろう傑作が、とても楽しみです。
| あ行(石持浅海) | 01:36 | - | - |
▲ セリヌンティウスの舟 石持浅海
4334076211セリヌンティウスの舟
石持 浅海
光文社 2005-10-20

by G-Tools

ネタバレ警報

ダイビング中の事故で、共に海面を漂流し、固い信頼で結ばれた仲間、6人。そのうちの1人、美月が自殺します。残された5人の仲間が、四十九日のあとに集まり、彼女の死に関する些細な疑問点について、あーでもないこーでもない、と、議論をする物語です。

青酸カリの入っていた小瓶のキャップは誰が閉めたのか?美月の自殺には協力者がいたのではないか?それは誰なのか?なぜそんな事をしたのか?美月が死んだ本当の理由は?

物語の設定は魅力的でした。

石持浅海さんは、好きです。毎回読み終わると、どこかしら、それでいいのか!と、納得のいかない点があるんだけど、それを含めて好き。読んでいる最中楽しかったり、イメージが素敵だったりするから、まあいっかあ、と、思ってしまう。

そんなわたしでも・・・さすがに、この「セリヌンティウスの舟」は、読んでいる間から、もうつっこみどころが多すぎて、全然入り込めませんでした。というわけで、

酷評警報!

この小説は、6人の「固い信頼」を前提に成立しています。その信頼関係に、全然説得力がないんです。ほとんど初対面同士の人間が一緒のツアーでダイビングをし、遭難した時に共にいた、というだけなんです。それも、たかだか40分くらいの事らしいんですよね。孤島で何日も生活して・・・とか、協力し合って助かって・・・、とかならまだ、わかる気もするんだけど。ただ、海面で救助を待ってただけなんです。

まあ百歩ゆずって、そういう信頼関係ができることがあったとして。それでも、この小説で描かれた「信頼関係」は、不自然過ぎ。だってその「信頼関係」を根拠に、他人の気持ちを決め付けるんですよ。しかも仲間はみんな、聖人君子みたいな、いい方向に決め付ける。ダイバーはみんな、綺麗な心の持ち主ばかりだとでも?

特に、死んだ人の気持ちを、勝手に決め付けることなんて、誰にもできないはずなのに、「美月がそれを考えないはずはない」「美月がそんなことするはずがない」といった言葉で、「自殺」なんていう重いテーマを扱っている、色んな議論に、あっさり終止符が打たれちゃう。しかも、みんな簡単に納得する。

そもそも、5人とも美月の自殺を受け入れることができなくて、美月の自殺の理由も納得できないから、死後に集まってみたりしているわけで。設定上、最初から矛盾してるんだよなあ。

他にも「私達の誰もそんなことできない」とか、「私達はみんなそうでしょう?」とかいう決め付けに、「固い信頼」以外の何の根拠もないんです。「ルールはひとつ。信じること」って背表紙に書いてあるから、それがテーマの小説なのはわかります。でも、読者は、全然納得しないってば!

自分たちの中に、犯人も、協力者もいないと信じるなら、とりあえず他殺を疑おうよ。いくら警察が自殺と処理したからって、他殺を全然疑わないなんて、ミステリーとしてありえない!あんたたちが疑わなくても、ミステリーファンは疑うよ。小説の中では、不可能な状況であればあるほど、他殺は起こるんだからさー。5人が、全然、他者が侵入した可能性について議論しないのが不自然すぎる!

そもそも、「サークル内恋愛」じゃないけどさー。男女3人ずつのグループで、その中に公認のカップルが一組いて、もう一組恋愛関係はないとか言いつつ、こっそり肉体関係のあるカップルがいて。それだけで、もうここで描かれているようなピュアっぽいイメージの仲間ではないよねえ。「1人1人が自立した、対等な固い信頼関係」とか、「日常と切り離していたからこそ、キラキラ輝く特別な友情」とか、最初から全然なかったんじゃ・・・。

それにさー。美月と磯崎は、残された人たちに、これからどうしろっていうの?ラストは嫌いじゃありませんが、その後は?美月は「舟が沈まない」事を確信していたらしいけど、そんな馬鹿な!無理だってば!磯崎は言うまでもないし、児島と清美には重苦しい罪悪感が残っているはず。麻子と三好だって、色々と秘密にされていたことがあったわけで・・・気分悪いでしょう。もう舟は撃沈だよねえ?美月と磯崎ってバカなんじゃ・・・。

というわけで、ごめんなさい。この本だけはダメでした。石持さん、次回作、期待してます・・・。
| あ行(石持浅海) | 23:46 | - | - |
■ 水の迷宮 石持浅海 
433407586X水の迷宮
石持 浅海
光文社 2004-10-20

by G-Tools

ネタバレ警報!

羽田国際環境水族館には、三年前、残業中に過労死した飼育係長・片山がいました。彼の命日、彼と親しかった人の幾人かが、水族館を訪れています。そこにメールでの予告と共に、水槽への異物混入という、展示生物への連続攻撃が始ります。犯人は?動機は?

当然のようにこの事件は、三年前の事件とつながりが疑われ、様々な真実が明らかになっていきます。展示生物を狙った攻撃の犯人は、わかりやすすぎてびっくりです(笑)。動機も、手帳のネタも含めて、まったく意外性なし。でも、この本には、この人物以外にも、いくつかの「事件」と「犯人」がいて、謎解きをちゃんと楽しめます。殺人事件まで起こってしまうので、ハラハラドキドキです。

終盤で明らかになる、三年前に片山が見ていた「夢」。それが本当に本当に素敵で、魅せられました。感動でした。わたしもそこに行ってみたい!それに、こんな素敵な「夢」を見て、がむしゃらに動いてみたい。深澤さんを誘ったときの言葉も素敵ですよね。誘われたいなあ。

ラストには賛否両論かと。結局、犯人たちは誰一人、法の裁きを受けるという意味では、罰を受けません。それでも、ほとんどの犯人に関しては、このラストで、十分納得できるんです。その後の人生で罪を償っていると思えます。

でも、はっきりとした殺意を持って殺人を犯した人、あの人は法の裁きを受けるべきだと思うのです。だって人は殺しちゃダメでしょう!!!それに、それでも「夢」はつぶれないでしょう?職員同士の揉め事なら、水族館に対する致命的なダメージにはならない、という記述もありましたし。それにあの人は、能力的に片山さんの「夢」を継ぐのに最適な人材だった、というわけでも、特にないし。

その1点が嫌だったのですが、この本はとても好きです。ミステリーとして面白かったし、水族館好きには、「業界物」としても楽しく読めるし、それでいて感動的なんです。オススメです。
| あ行(石持浅海) | 10:31 | - | - |
■ 月の扉 石持浅海 
4334075339月の扉
石持 浅海
光文社 2003-08-21

by G-Tools

わーい。面白かった!あたりだ。

主人公は、那覇空港で、離陸直前の琉球航空第8便をのっとったハイジャック犯3人組。警察に逮捕されている自分たちの「師匠」を、滑走路まで連れてこい、という要求を出した3人は、思いもよらない事態に直面します。機内のトイレで、乗客の死体が発見されたのです。なぜ?そして、どうやって自分たちの目を盗んで?ハイジャックに忙しい3人組は、たまたま死体を発見した乗客の1人、座間味くんに、探偵役を押し付けます。

殺人事件の真相は?そしてこのハイジャックの動機と、結末は?2本立てのストーリーですが、けして複雑ではなく、続きが気になってさくさく読めます。

ただ…これは宗教だよね。何で宗教じゃないと言い張るんだか…。

「BG、あるいは死せるカイニス」しか、石持さんの本を読んでいなかったので、SFよりの人だと思っていました。「BG〜」もミステリーでしたが、パラレルワールドものの要素が強い、というか、そこで勝負していたので…。でも、この「月の扉」はほとんど(あくまでも、ほとんど!)本格推理小説。最初に「琉球航空8便座席配置図」なるものが載っているあたりが、本当に本格推理っぽくて、好きでした(必要性は疑問ですが(笑))
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