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▲ 摂氏零度の少女 新堂冬樹
摂氏零度の少女摂氏零度の少女
新堂 冬樹

幻冬舎 2007-11

幼いときに目の当たりにした愛犬の安楽死と、初恋の男の子の裏切り。
二つのできごとが、涼子の心に人間の傲慢さを刻みつけ、彼女を少しずつ狂わせていく。
母親の期待通り、医者になるべく名門進学校に通い、
教師から一流大学医学部合格は確実と太鼓判を押される学業優秀な少女に成長した涼子は、
温めてきた計画を実行に移す。
それは、母親に劇薬・タリウムを盛るという実験だった。
致死量を一度に飲ませるのではなく、食事や飲み物に少しずつ混入させ、観察する。
そして、初恋の男の子の名前で、その経過を克明にブログにつづっていくのだが…。

女子高生の狂気を描きながら、正義、両親、倫理、道徳といった既成概念の意味を問いかける。

うーん、うーん、うーん。こんな内容の小説が、読んでいて楽しくないのは当たり前なんだけど、なんだろう、楽しくないだけでなく、恐くもないし、興味深くもないし、既成概念の意味を問いかけられたような気もしなかった…。あらゆる描写がグロテスクなまでに丁寧にされているのに、なんだかあっさりと終わってしまった小説という感じ。

確かに狂気ではあると思うのですが、母親を殺す動機が、彼女なりの愛情であり、死は解放であり救いだから、というのが、小説の世界ではありがちな気がして拍子抜けしました。実際にあった事件から着想を得た小説だそうですが、その事件に対する新堂さんなりの解釈を小説にしたってことなんでしょうね。

これは、かなり好みがわかれる本でしょうね。まあ、新堂小説はどれもそうですが。
| さ行(新堂冬樹) | 11:20 | - | - |
▲ 砂漠の薔薇 新堂冬樹
砂漠の薔薇砂漠の薔薇
新堂 冬樹

幻冬舎 2006-01

ネタバレがないとは言い切れない。

主人公は、娘の「お受験」にのめり込む、専業主婦ののぶ子。のぶ子が娘を入れようとしている「聖星学園」は、裕福な本物のセレブの子供たちが通う学校で、情報収集のためそのお受験グループに参加しているのぶ子は、いつも劣等感を感じています。

そのグループにのぶ子を誘ってくれたのは、幼馴染の十和子です。グループの中心人物、子供のときからいつもその場の女王様で、本物の太陽のような人です。のぶ子は子供のころ、自分の母親から、いつも十和子と比べられ叱られていました。今その同じ事を、自分の娘にしています。

「お受験」が原因で、近所の幼児を殺してしまった主婦の事件が実際にありましたよね。あの事件に触発された本なのでしょう。2代にわたる2組の母娘の確執が生む悲劇の物語です。読み応えはあったんだけど、なんとも後味の悪い一冊でした。

新堂さんは、人間の黒い心理を描くのは上手い作家さんです。それは、よーく知ってるし、この本でも、よーくわかりました。でも、母娘の確執と、女性の集団心理を男性が描くのは、本当に難しいんだなと思いました。特に、母娘の確執に関しては、この本では描ききれていない。甘いです。説得力がありません。だから、誰にも同情できず、読後感が悪いです。女性作家(やっぱり桐野夏生さんかな・・・)の誰かに、これをきっちり書いてみて欲しいなあ。

それから、一番読んでいて気分が悪かったのは、のぶ子の夫の言動でした。妻に対しても、娘に対しても、関心も愛情もちゃんと示さず、責任感がなくて、身勝手で、面倒なことからは逃げてばかり。こんなことになっても、きっと反省なんかしてないんだろうなあ。この悲劇をふせげたとしたら、それは、彼しかいないでしょう。もし、夫がのぶ子の心を、少しずつでも救うことができていたら、悲劇はもう少し小さかったかもしれない。起きなかったかもしれない。みんなが悪い人で、でもみんなが可哀想に思える本でしたが、彼に関しては、同情の余地なし、と、思いました。「リアルだな、現実にこういう事多いんじゃないかな」と、一番思えた部分でもありました。やっぱり、新堂さんは、男性作家さんですね。

それから、これはあまり深く考えていない単なる思いつきなんですけど、お受験グループの中心人物を、幼馴染の十和子ではなく、十和子に良く似た別の人、という設定にしたほうが、物語に深みもリアリティも出たと思うんですよねー。そうすると色々細かい変更点も出てくるはずなので、そのバージョンも読んでみたいです。
| さ行(新堂冬樹) | 20:23 | - | - |
● 黒い太陽 新堂冬樹 (ドラマ化)
黒い太陽黒い太陽
新堂 冬樹

祥伝社 2006-03

立花は、父親の入院費用を稼ぐために、キャバクラ「ミントキャンディ」にホールとして勤めなければならなくなりました。しかし本当は、水商売を嫌悪しています。立花は「ミントキャンディ」のナンバー1キャスト、千鶴に思いをよせていますが、それも、彼女が家の借金を返すためにしかたなくこの世界にいるのだ、という話を聞いたからでした。

そんな立花ですが、その性格と才能を、系列店すべてのトップに立ち、「風俗王」の異名をとる社長・藤堂に見込まれ、幹部研修を受けることになります。そしてしだいに立花は、千鶴の借金を肩代わりするためにも、この世界で上りつめよう、と、考えるようになります。

しかし、夜の世界に染まっていく立花から、結局千鶴は去っていき、藤堂社長に気に入られた彼に嫉妬した同僚からは、ひどい嫌がらせを受け、立花は「ミントキャンディ」をやめます。

ところが立花は、夜の世界からは足を洗いません。あんなに嫌悪していた水商売の世界なんだし、千鶴ともだめになったし。ここで肉体労働でも何でも別の商売を考えるという案もありだったと思うのですが・・・。立花は、さらにこの世界にはまっていきます。別の店でしばらく修行を積んだ後、今度は、渋谷に「フェニックス」というキャバクラを自分で立ち上げます。長瀬、そして藤堂と、本気で戦うつもりになったのです。もちろん、藤堂がそれをほうっておくはずもなく・・・
本人の意思とは関係なしに、夜の世界でしか生きてゆけない者がいる。まるで、黒い太陽に向かって歩いているようにな。
うーん、渋いなあ。でも、どうやら、みんな不幸っぽいな。

私はまったく「夜の世界」とは縁がない生活を送ってきたので、リアルなのかどうかもよくわからなかったけど、業界小説として面白かったです。ものすごく遠いんだけど、本当はすぐそこにある世界。新鮮でした。

ちょっと本筋がぶれてしまうかもしれないけど、千鶴の心情をもっとしっかり、本人の言葉で描きこんであったら、さらに終盤の深みが増したような気がします。

新堂さんの本の中では、純愛系よりずっと面白かったです。


さて。最近、積読本を、映像化にせかされて読むことが増えています。これもそんな中の1冊でした。

7月28日(金)よる11時15分スタート!
http://www.tv-asahi.co.jp/kuro-tai/


まだ↑の公式サイトは表紙しかできていない模様。でも、キャスティングは、立花=永井大、千鶴=井上和香、らしいです。立花はいいと思うけど、千鶴のキャスティングには、激しく違和感を感じます。この本には色んな種類のキャバ嬢が登場するのですが、千鶴は一番、井上和香から遠い感じ・・・。ナンバー2の奈緒さん役なんか、あってると思うんだけど。千鶴には・・・うーん、綾瀬はるか、なんていいと思うんだけど、どうでしょう。薄幸の癒し系、でしょう?。あとは、長瀬役が誰になったのか、とっても気になります。
| さ行(新堂冬樹) | 08:49 | - | - |
■ 吐きたいほど愛してる。 新堂冬樹
photo
吐きたいほど愛してる。
新堂 冬樹
新潮社 2005-01-20

by G-Tools , 2006/04/13





迷惑な妄想逆ギレ男が
夫の帰りを正座して待つ壊れた妻が
生き地獄を味わう可憐な美少女が
虐待される寝たきり老人が

自己の中心で愛を叫ぶ!

隠された凶器を炙り出し、
想像力の限界に挑む、著者最凶傑作

帯より。
このあおり、いいなあ。「自己の中心で愛を叫ぶ!」とは、出版当時ピークすぎつつあった純愛路線を皮肉りつつ、この本に登場する愛のかたちにピッタリの、名文句ですね。素晴らしい。

新堂さんの短編集は初めて読んだのですが、短編の構成、上手いんだなあと思いました。冒頭の数行でぐっとつかまれて、するすると読まされて、ラストのどんでん返しで目が覚める。ページ数は短いのに、どの短編も、どの人物も、印象がとても強い。新堂さんは、短編、向いてますよねー。

でもまあ、この本は、二度と読まないと思うけどね・・・。グロい描写が多くて、生理的に受け付けません。○○チャーハンとか。ああー。

・半蔵の黒子
・お鈴が来る
・まゆかの恋慕
・英吉の部屋
| さ行(新堂冬樹) | 23:04 | - | - |
■ 誰よりもつよく抱きしめて 新堂冬樹 
4334924662誰よりもつよく抱きしめて
新堂 冬樹
光文社 2005-09-26

by G-Tools

最近の新堂作品、つまり純愛系では一番いいと思います。この本は、読んでよかった。いわゆる白新堂作品では、読み応えナンバー1だと思います。ダントツです。

児童書専門の書店のオーナー水島月奈と、作家である夫・良城は、結婚八年目。表向きは仲睦まじく見える2人ですが、良城は不潔潔癖症と、不完全潔癖症という病気をわずらい、あらゆるものを直接触れることが出来ず、本にも、携帯にも、リモコンにもラップをかけて暮しています。もちろん妻である月奈にも、触れることはできません。

帯に「脅迫的な潔癖症を患う夫とは7年間セックスレス。あなたなら、どうやって愛を確かめますか?」と書かれているのですが、月奈を苦しめるのはセックスレスなどという単純なものではありません。額にキスをする前に消毒されるなんて!何かの拍子にちょっと触れてしまうことにすら拒絶反応を示されるなんて!相手が病気だとわかっていても、自分が黴菌のように扱われては、精神的にかなりきついでしょう。

そんな二人の生活に変化が現れます。自分の経営する書店を訪れた青年・克麻に、惹かれているのを自覚した月奈ですが、克麻のほうにも深刻な事情があることが発覚。そんな揺れる月奈の気持ちに気がつきながら、良城は同じ病気に苦しむ千春と出会い、彼女に心を許すようになります。

それでも、二人が心底愛し合っていることが、とても不幸で。お互いに優しくしようとするあまり、また、お互いの幸福を願うあまり、ますます傷つけあってしまうという悪循環が続いていくのです・・・。

主要な登場人物が、こんな人いないよなあと思うくらい、みんないい人。良城も月奈も、そして克麻も、本当に純粋で、真面目で、優しくて、いい人!びっくり!(まあ、そうじゃないと成立しないストーリーなんですけどね。)でも、その内面の葛藤がしっかり描けていたり、他の登場人物のキャラがたっていたりするので、主要キャラのリアリティのなさが欠点に見えてきません。

良城の書いた童話がところどころに挟み込まれていて、それがいい味を出しています。この童話は、単独でも童話としてとても素敵。

ストーリーもテンポが良くて飽きなかったし、後味も良かった。いい本でした。

欲を言えば。っていうか、私の好みとしては。ラストの4ページくらいはいらなかったかな、と。そこで初めて「あ、白新堂さんだ。男性作家だ。ロマンチストだ。」と思いました。女性の作家さんなら、たぶんラストシーンは書かないだろうなあ・・・。根拠はうまく説明できないけど。
| さ行(新堂冬樹) | 13:58 | - | - |
▲ 天使がいた三十日 新堂冬樹 
4062129647天使がいた三十日
新堂 冬樹
講談社 2005-06-21

by G-Tools

愛する妻を亡くして1年。失意のどん底にいる作曲家に、生きる希望を与えたものは?

犬好きの人にはたまらないだろうなあ、っていう1冊。白新堂さんは、悪くはない。悪くはないんだよ…。それに、この作品は、私が読んだ白新堂作品の中では、一番良かったです。少なくとも私には、「あ、これはあの作品のパクリっぽい」とかはわからなかったし(ファンの方、石を投げないでください…。)
| さ行(新堂冬樹) | 21:18 | - | - |
▲ 僕の行く道 新堂冬樹 
4575235148僕の行く道
新堂 冬樹
双葉社 2005-02-09

by G-Tools

ネタバレあり!

主人公・大志は小学校三年生。父親と二人暮し。母親はファッションデザイナーで、パリに単身赴任中で、大志は2歳のときから一度も母親に会っていません。毎週土曜日に届く、母親からの手紙を楽しみにしています。大志は典型的な鍵っ子で、寂しがりやですが、素直で、優しくて、とてもいい子です。

その大志が、母親が日本にいる証拠と思われる小豆島の写真を、父親の本棚から見つけてしまったことから物語が始まります。「母をたずねて三千里」ではありませんが、母親に会うために、大志は旅に出ます。東京から小豆島まで、父親には内緒の、はじめての一人旅です。小豆島には母親が住んでいるんだと、大志は信じています。小豆島についたら、母親に会って、一緒に暮らしてくれと頼む、それが、旅の目的です。

波乱万丈の旅の最後に大志が知る真実とは・・・。ラストは予想外で、ちょっと感動でした。てっきりお母さんは、死んでるか、離婚してるかだと思ってたから。ネタバレですけど、お母さん、若年性アルツハイマーで施設にいます。まだ記憶があるときに、「大志をつれてこないように」と言い残していたんです。親子愛の物語でした。

でも・・・。色々と、惜しい!というか、中途半端な本なんですよ・・・。流行にのってはみたものの、どっか、はずしちゃってるんだよなあ、というか。私が、あまり本を読まない人間で、映画もドラマもあまり見ない人間で、珍しく手に取った本がこれだったら、感動して泣いたかもしれません。子供にも読ませたいくらい、いい本であることは確かなんですけど。

親子愛がテーマで、それは流行とは関係のない普遍のものなんだと思います。「若年性アルツハイマー」「記憶喪失」も、目新しいテーマじゃないけど。やっぱり、今、はやってるよね・・・。書籍だと「博士の愛した数式」や「明日の記憶」や「君に読む物語」が売れまくったし。ドラマの「Pure Soul」は韓国映画「私の頭の中の消しゴム」として日本でもヒットしそうだし。ああ、「明日の記憶」も映画化されるんだよね。ちょっと違うけど「いま、会いに行きます」のお母さんも記憶なくしてたしなあ。

子供の成長を扱った、ロードムービー的な小説に仕上げるか。母親の病気のほうをメインに、涙々の物語に仕上げるか。どっちかに絞って欲しかった。どっちつかずで、中途半端に終わってしまった気がする。私の希望は前者なんだけど、それにしては、出会う人がみんな善人ばかりで、大志君は旅の途中で、特に成長する必要にせまられない。その善人な人たちとの交流でも「ああ、なんていい子なんだ!」という感想しかもてないし・・・。彼らから渡される、手紙や電話番号も何の伏線にもならずに宙に浮いたままだし。出会えた母親も、自分を捨てたわけではなかったりするから、結局、大志君の成長物語としては弱い。

後者だとしたら、子供目線より、夫目線のほうが泣けるに決まってるから、大志君を主役にした時点で失敗でしょう。というわけで、ああ、惜しい!という小説でした。

最近の新堂さんの作品をいくつか読んだんですけど、全部同じ感想です。いい話なんだけど、ぱくりっぽい上に、なんか惜しい!もしかしたら私は、「黒新堂」と呼ばれている、ちょっと前の新堂作品のほうが好きなのかもしれません。何を読めばいいかな?
| さ行(新堂冬樹) | 22:23 | - | - |
▲ ある愛の詩 新堂冬樹 
4048735209ある愛の詩
新堂 冬樹
角川書店 2004-02

by G-Tools

タイトルでかなりひいたんですけど・・・この本オリジナルテーマ音楽CDがついてるんですよねー。ああ、あの「ある愛の詩」だったんだね、と、その趣向に免じて、読む気になりました。

ストーリーは比較的おとなしいです。派手な事件も、強引な展開も、ありません。小笠原でイルカとともに育った純粋な青年・巧海と、東京から観光に来て彼と出会う、声楽家志望の流香。2人の恋がはじまるまでを描いた、純粋なラブストーリーです。巧海も流香も、魅力的なキャラクターですが、魅力的過ぎてリアリティが全然なかった・・・。古い映画の登場人物みたいでした。(これはたぶん、著者の確信犯的な設定だと思います。)南の海、イルカ、音楽、マリンスター。ディティールが一つ一つ綺麗で、登場人物はどこまでも純粋で、ストーリーは、癒し系で。いい本でした。(退屈と紙一重、ギリギリセーフって感じ!)

音楽CDですが・・・。メインの「ある愛の詩」はやっぱり名曲で、どうアレンジしてもやっぱり名曲だなあ、と、思いました。でも、この曲って「切ない」名曲なんだよね。メロディがもう「切なさ」全開なので・・・。この本のストーリーとはちょっと合わない気がしました。どうせなら、白血病になったり、実は兄妹だったり、記憶喪失になったり、最後に死んだりするような、派手な純愛小説に合っていると思います。この小説は、純愛とはいえ、もっと癒し系だし、ハッピーエンドだし、せっかくのオリジナル音楽CDは、なんだか残念!(私の個人的意見。)
| さ行(新堂冬樹) | 02:56 | - | - |
▲ 忘れ雪 新堂冬樹 
4048734504忘れ雪
新堂 冬樹
角川書店 2003-02

by G-Tools


読み応えは、ありました。先が気になって仕方なくて、一気に読みました。

帯には「純恋小説」と書いてあるんですよねー。ピュア・ストーリーというルビまでふってある。「最後の雪に願い事をすると必ずかなうって本当ですか?新世紀、もっとも泣かせる純恋小説」とあおってあって、しかも表紙が見てのとおりの、かわいらしさで。もう、「泣いてください、お願いします」と、土下座されているような気分で読み始めました。

両親を失った少女が、怪我をした子犬を拾って途方にくれている時に、獣医志望の高校生に助けられて初恋をする。京都に住む叔父に引き取られるまでの1ヶ月、という期間限定の短い恋。2人はおもちゃの指輪で婚約をし、7年後の再会を約束します。この段階では、少女はまだ小学生。男のほうは本気にしてはいません。でも、ここから、2人の長い長い「純恋」がはじまるんです…。

この「恋愛」の部分、悪くはなかったです。少女の純粋さ、青年の真面目さ、そして、2人のむかえるラストシーン。でも、男の人の書く恋愛小説だなあ、っていう感じがしました。とことんロマンチックで、男の側に都合がいいの。小学生だった少女は、一目ぼれしてしまうような美女に成長し、しかもずっと彼だけを思い続けてくれている。職場の同僚も美人で、いくら断っても彼に片思いをし続ける。男の人ってなんてロマンチストで純粋なの!(この感想は、セカチューにも、ちょっと古いけど「冷静と情熱の間に」の辻版にも持ったんだけど…)

というわけで、前半は確かに、帯にも表紙にもぴったりの純愛系で、このままいくなら、それはそれでありだな、と思ったのですが。

後半。だんだん黒くなってきちゃうんですよねー。殺人事件がおきて2人が巻き込まれたり、少女の義理の父になった人物や、少年の親友の父親が、政界にも顔が利くような権力の持ち主だったりして。これは「純恋小説」じゃなくて、サスペンスだよなあ、という感想に終わりました。そんなこんなで邪念が入ってしまい、かなり感動ものの、切ない切ないラストだということはわかっていたのに、なんだか泣けませんでした。

サスペンスとロマンスが、上手に混じれなくて喧嘩しているような本です。

日本で近年ブームだった「純愛」系というよりも、噂に聞く「韓流」に近いような気がします。日本の「純愛」は、ある程度日常に足をつけたままで、美しい恋の夢を見る。韓流の「純愛」は、現実では絶対にありえない空間で、美しいだけじゃなくていいから、大恋愛をさせたい。この微妙な違い、誰かわかってくれるかな…。
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