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エスケイプ/アブセント 絲山秋子
エスケイプ/アブセントエスケイプ/アブセント
絲山 秋子

新潮社 2006-12
神さまよ、人間なんて手にあまるだろ。だったら祈れ。あんたこそ祈りつづけろ。

闘争と逃走にあけくれ、20年を棒に振った「おれ」。だが人生は、まだたっぷりと残っている。旅に出た京都で始まった長屋の教会での居候暮らし。あやしげな西洋坊主バンジャマンと、遅れすぎた活動家だった「おれ」。そして「あいつ」。必死に生きることは、祈りに似ている。フェイクな日々にこそ宿る人生の真実を描く傑作小説。
よくわからない。という感想はかなり間違っているとは思うのですが…そんな感想です。断片的には心に響くセリフ等も多かったし、ダメ男が主人公なのに、全体として力強い雰囲気が良かったし、短編「アブセント」が付け加わったことで一冊の本としてもよくまとまって、悪くなかったんだけど…楽しみ方がわからない(汗)。

要するに、好みじゃなかったってことかな。それから、わたしよりほんの少し上の世代に受ける気がします。
| あ行(絲山秋子) | 06:50 | - | - |
■ ニート 絲山秋子 
4048736434ニート
絲山 秋子
角川書店 2005-10-29

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表題作の「ニート」。かけだしの作家である私は、元恋人のキミがニートであることを、とても似合っていると感じている。もちろんそのままで、いつまでもやっていけるとは思っていないのだが、彼を責めるでもなく、かといって守るでもなく、自分に出来るだけの事をして、少しの時間、彼と共にくつろぐ。

ニートの内側を描く本なら、わたしは読みたいとは思いません。「働けばいいのに」などという月並みな感想を抱かされそうで嫌です。ニートとひとくくりにした言い方も、そもそも嫌いだし・・・。

この本は、ニートを外側から、しかも味方の温かい視線で見ているので、好きでした。私とキミの、気負いすぎない、空気感が好きでした。

収録作は「ニート」「ベル・エポック」「2+1」「へたれ」「愛なんかいらねー」

「2+1」はニートの続編になります。この2作を、連続収録にしなかったことが、一瞬不自然な気もしたんです。でも、一冊通して読んでから思えば、うまいな、と、思います。ワンクッションの気分転換が、この小説を読むには必要だった気がします。

そして「ベル・エポック」は、ただのワンクッションではありません。わたしはこの「ベル・エポック」という作品の、痛々しいような清々しいような余韻も、かなり好きです。

というわけで、最初の3作は◎、4作目は印象が薄く、「愛なんかいらねー」はいらねー。(<単なる好みの問題。でも・・・やっぱり、この短編集の中で、浮いてると思う。なんで入れちゃったかなあ。)
| あ行(絲山秋子) | 22:40 | - | - |
■ 海の仙人 絲山秋子
4104669016海の仙人
絲山 秋子
新潮社 2004-08-28

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とても繊細な本でした。宝くじにあたり、3億円を手にしたことで、仕事をやめ、海辺の街で仙人生活をするようになった河野。そこにある日、「ファンタジー」がやってきて、物語は始まります。河野と、河野が出会う運命の女性・中村かりん、そして河野に片想いを続ける友人・片桐の、優しくて、切なくて、不思議な物語。

テーマになっていたのは「孤独」なんだと思います。優しく「孤独」を描いてくれていて、良かったです。あらすじを書くのも、感想をまとめるのも、むずかしくて、ずっと放置しておいたんだけど、読んだという事だけは、記録しておこうと思います。好きだった、ということも。登場人物が、みんな、真面目で、素直で、いい人で、いわゆる「癒し系」じゃないんだけど、癒される本でした。

ただ・・・前半は、ファンタジックで、静かな雰囲気を楽しむ事が出来たのに、後半は、シリアスでストレートで、あれれ?って思いました。芥川賞候補にまでなったわりには、完成度的に、あれれ?かな、と。

だから途中からなにか違和感があって。それが取れないまま読んだんだけど、それでも好きな本ではありました。芥川賞系にしては珍しく。チェロも出てくるし。



ああ、なんなんだ。この稚拙な文章は・・・。とにかく、私にとっては、感想を書くのが難しい本だったのです。
| あ行(絲山秋子) | 13:56 | - | - |
■ イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子
4163226303イッツ・オンリー・トーク
絲山 秋子
文藝春秋 2004-02-10

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2作収録なのですが、私は2作目の「第七障害」のほうがとても印象的でした。業界ものというか、自分の知らない世界を知ることが出来る作品は、それだけでポイントが高いです。「馬術」というのは、私には本当に縁遠い世界で・・・。しかも、特にお金持ちではない人の、スポーツとしての馬術、というのは、興味深かったです。

早坂順子は、馬術大会で第七障害の跳越に失敗し、乗馬クラブからの借馬「ゴッドヒップ」は、その時の怪我が元で安楽死させられます。そのトラウマを引きずったまま、群馬から東京へ出てきた順子の、再生のストーリー。見方によっては恋愛小説。

どこからどう見ても、よくあるパターンの物語なんですけどね。「イッツ・オンリー・トーク」とは、違う人が書いたかのような、無理のない真面目さと、清々しさ。乗馬クラブ時代のライバル・篤、元カレの妹・美緒など、登場人物のキャラも魅力的で。東京育ちで、田舎に憧れのある私は、とても素直に読めました。

表題作に関しては、語りつくされた感がありますよね。確かに、一風変わった人ばかり出てくるけれど、温かい物語で、私も嫌いではありません。メンヘラ系の人々を明るく描くという点では、これが「逃亡くそたわけ」につながっていったんだなあ・・・なるほど、という感じでした。でも「イッツ・オンリー・トーク」のほうは、主人公が無理をしているのがひしひしと感じられて、胃が重たい・・・。雰囲気作りが、中途半端なような気がしました。
| あ行(絲山秋子) | 23:33 | - | - |
■ 袋小路の男 絲山秋子
4062126184袋小路の男
絲山 秋子
講談社 2004-10-28

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川端康成文学賞受賞作。帯によると、現代の純愛小説、と、絶賛されたんだそうです。

うーん。小説としては、嫌いじゃない。「袋小路の男」と続編の「小田切孝の言い分」は、特に、なかなか良かったと思う。あ、悪い男と、馬鹿な女がいるぞー!!って感じなんですけど・・・切ない。ちょっと身につまされる部分も。私はこんな苦しい恋愛は絶対にしたくないし、できないけど。

それにしても、これは本当に純愛本なのかな?日向子も孝も、手を握る事もなくお互いを18年も思いあっているんだから、純愛と言えば純愛だけど・・・。でも、二人とも「浮気」と「不倫」をしまくって、ほんっと、はた迷惑なヤツら。

孝は日向子を好きなんだろうけど、恋愛感情はないよね。落ちぶれてしまった自分ではなく、昔のかっこよかった自分を見る目で、今も自分を見てくれるから、日向子に執着しているだけだと思う。

日向子のほうも、本当に孝が好きかというと、違う気がする。高校生のときの、幼い、一目ぼれの瞬間に、いつまでも執着しているだけ。しかも、あれだけひどい扱いをされて、「バカだ」と言われて嬉しいなんて、やっぱり歪んでる。病んでる。

なかなか読み応えのある本で、味わい深くて、後味は良かった。でも、いい本だとも、純愛小説だ、とも、思えなかったです・・・。
| あ行(絲山秋子) | 12:15 | - | - |
● 逃亡くそたわけ 絲山秋子
4120036146逃亡くそたわけ
絲山秋子
中央公論新社 2005-02-26

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躁鬱病の21歳の女の子・花ちゃんが、治りかけ(一番危ない時期)の鬱病のなごやんを道連れに、精神病院を脱走し、九州を南へ南へと逃げる、一風変わったロードノベルです。わたしは、父方の田舎が熊本県なので、本当に細部の描写まで楽しかったです。いきなり団子は本当においしいし、本当に阿蘇って独特な雰囲気の山だし、本当に九州人って地元を熱烈に愛しています!対する名古屋人のほうは、なんだか卑屈に描かれていますが…これはちょっと極端じゃないかなあ?名古屋人が読んだら怒るんじゃ…。

物語全体のトーンとしては明るく、生気にあふれていて、笑えるし、爽やかです。でも、2人の病状は実は結構深刻です。薬がないと眠れないし、幻聴・幻覚に悩まされるし、死にたくなるし、パニックにもなります。「ねえなごやん、悲しかね、頭のおかしかちうことは」というセリフが、本当にしみじみと、悲しかったです。方言の威力ってすごいね。

精神科で処方されるような薬の名前が、しごくあっさり出てきます。なごやんが鬱状態にはまってうじうじ言うと、花ちゃんが「そりゃ大変やね。デパス飲みない」「もう飲んだ」。みたいな感じです。最近は、精神科にかかる人もふえましたし、メンタル系サイトも大繁盛の様子なので、こういう部分に親近感を持って読める人、多いんじゃないでしょうか。

差別も同情も励ましも、優しささえも辛い時、同じ経験をしている人の言葉だけは、素直に聞ける。って、病気じゃない人にもある心理ですよね。

逃げている間に、万引きし、無免許運転し、当て逃げし、食い逃げし。ろくなことはしてないし、逃げているだけで目的も生産性もないのですが、それでも2人が「生きている」という実感を得ていく様子に、軽く感動しました。
| あ行(絲山秋子) | 15:53 | - | - |
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