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■ ロードムービー 辻村深月
4062150859ロードムービー
辻村 深月
講談社 2008-10-24

by G-Tools

誰もが不安を抱えて歩き続ける、未来への“道”。子どもが感じる無力感、青春の生きにくさ、幼さゆえの不器用…。それぞれの物語を、優しく包み込んで真正面から描いた珠玉の三編を収録。涙がこぼれ落ちる感動の欠片が、私たちの背中をそっと押してくれます。はじめましての方にも、ずっと応援してくれた方にも。大好きな“彼ら”にも、きっとまた会えるはず。《出版社より》
「冷たい校舎の時は止まる」をすっかり忘れてしまってから読んだので、ああ、確かにこの人はどっかに出てきたような名前だが全然思い出せない…というような事の連続で(^_^;)。もう一度、「冷たい〜」を再読してから、この本を読み返そうと思います。でも、この本単独でも、わりと好きだったなあ。

○ ロードムービー
ワタルと友達になったことで、今まではクラスの人気者だったのに、いじめられっ子に転落してしまったトシ。いじめはエスカレートしますが、トシとワタルは友情を深めていきます。トシも、ワタルも、それぞれに素敵な子でした。あと、うん、どんでん返しにはまんまとやられました!

□ 道の先
塾講師のアルバイトになった俺は、先生いじめが趣味で、今まで数々の先生を辞めさせてきた千晶という少女に、なぜか気に入られてしまいます。教室では女王様のようにふるまう彼女ですが、彼女には彼女なりに悩みがありました。優しい…というよりは、押しに弱くて優柔不断な「俺」は、いい教師とは言えないかもしれませんが、彼もまた成長途中の学生さん。彼の優しさに触れた事が、千晶にとって、長い目で見て良い経験になるといいなあ、と、思いました。

△ 雪の降る道
自分と同じ名前の親友が死んでしまい、その後寝込む事が多くなったヒロと、毎日見舞いにくるみいちゃん。ある日ヒロは苛立ちに任せて、みいちゃんに酷い言葉を浴びせてしまったのですが…。すごくいい話で、感動的な話だったんだけど、なぜか印象が薄い…。この短編は、おそらく奥が深いのでしょうけれども、ちょっと残念。
| た行(辻村深月) | 16:03 | - | - |
■ 名前探しの放課後 辻村深月
名前探しの放課後(上)名前探しの放課後(上)
辻村 深月

講談社 2007-12-21
名前探しの放課後(下)名前探しの放課後(下)
辻村 深月

講談社 2007-12-21

「今から、俺たちの学年の生徒が一人、死ぬ。―自殺、するんだ」「誰が、自殺なんて」「それが―きちんと覚えてないんだ。自殺の詳細」不可思議なタイムスリップで三ヵ月先から戻された依田いつかは、これから起こる“誰か”の自殺を止めるため、同級生の坂崎あすならと“放課後の名前探し”をはじめる―青春ミステリの金字塔。
うん、面白かったです。なんというか、主人公の思い込みの強さと青さ溢れる辻村節全開で、前半は読みづらい部分もありましたが、最終的には「なんだよ〜いいお話じゃんかよ〜」と感動させてくれました。スッキリ爽快です。そして、さすが辻村さんで、ラストにはどんでん返しもばっちり決まり、伏線もしっかり生かされていて、「やられた〜」という気分になりました。他の作品とのリンクも楽しませてくれましたね。

辻村小説は、最初の2作がかなり好きだったのに、その後…って感じだったんですが、これは良かったなあ。辻村さんはやっぱり、ミステリーという枠の中で小説を書いてくれたほうが面白いです。やっぱりこの作家さんの将来には、期待しちゃうなあ。
| た行(辻村深月) | 11:37 | - | - |
■ スロウハイツの神様 辻村深月
スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)
辻村 深月

講談社 2007-01-12

スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)
辻村 深月

講談社 2007-01-12
猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた少女からの128通にも及ぶ手紙だった。
事件から10年――。売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせたコーキ。しかし『スロウハイツ』の日々は、謎の少女・加々美莉々亜の出現により、思わぬ方向へゆっくりと変化を始める……。
よくできた小説でした。面白かったです。

辻村小説の痛い心理描写が個人的に苦手なので、語り手が章ごとに変わり、それぞれの人物が、ほかの誰かの視点で描かれることが比較的多かったこの本は、読みやすかったです。それぞれの人物の自分語り(=心理描写)が、物語の流れを止めて中だるみになることなく、自然に謎解きの一部に組み込まれていたので、不快感を感じることなく読めました。

そんな風に、少なくはない登場人物1人1人を丁寧に描いた結果、前半は物語の展開が遅くてじれったくなってしまったのですが、後半になってテンポアップし、終盤でたくさんの伏線が見事に収束し、読み終えたときには、よくできた小説だったなあと、感心してしまいました。面白かったです。

それにしても、ライトノベルって何なんでしょうね。


以下覚書。

赤羽環
「スロウハイツ」のオーナー。大学3年生の時にデビューして以来、人気急上昇の脚本家。勝ち気で、行動力があり、自分にも人にも厳しい。母親が詐欺で逮捕され、家族が崩壊してしまったという過去がある。

チヨダ・コーキ
中高生に絶大な人気を誇る小説家。過去に彼の小説を真似た大量殺人事件があってバッシングを受け、責任を感じ傷つき、断筆していた。「コーキの天使」と名付けられたファンの少女が新聞社に送った、128通にも及ぶ手紙をきっかけに再起を果たし、現在にいたる。

狩野壮太
少年漫画家の卵。子供むけの、感情的で、綺麗すぎる世界しか描こうとしない。

長野正義
現在は映画制作会社で働いているが、映画監督になることが夢。狩野とは逆に、感情を作品に込める事をかたくなに拒絶している。

森永すみれ
営業の苦手なイラストレーターの卵。映画館でアルバイト中。正義の彼女で「スロウハイツ」の炊事担当。

黒木智志
チヨダ・コーキを売り出した、敏腕編集者。

加々美莉莉亜
自称小説家。自称チヨダ・コーキのファン。彼女の登場が平穏だった「スロウハイツ」の生活に変化をもたらす。

円屋伸一
(元)201号室。環とは高校からの親友。漫画家を目指しているが、環をライバルとして強く意識しすぎたために「スロウハイツ」から出て行った。
| た行(辻村深月) | 21:33 | - | - |
■ ぼくのメジャースプーン 辻村深月
ぼくのメジャースプーンぼくのメジャースプーン
辻村 深月

講談社 2006-04-07

「ぼく」は小学校4年生。人を殺すことさえ出来る、強い「声」の超能力を持っているが、小さいころに母親に使うことを禁止されていらい、それを使わず、それについても深く考えないで生活してきた。

「ぼく」には大事なおさななじみのふみちゃんがいる。ふみちゃんは、学校のうさぎを可愛がっていて、うさぎたちの世話をすることより楽しいことはない、というくらいだ。しかし、ある日、うさぎたちが、惨殺されるという事件が起き、それを目撃したふみちゃんは、学校に来ることも、言葉をしゃべることも出来なくなってしまう。「ぼく」は、最初、自分の力をつかって、ふみちゃんの元気を取り戻そうとしたけれど、それができないことがわかって、結局、その力を、犯人に対する復讐に使うことにする。

ここまでのストーリーが、全体の4分の1くらいかなあ。そしてそのあとずーっと、ひたすら、この小説は「ぼく」と、ぼくのお母さんの知り合いで「ぼく」と同じ力を持った、「先生」とのディスカッション小説になります。200ページ以上えんえんと、罪と、罰と、反省と、償いと、責任と、そして能力の使い方に関する、超真面目な、子供らしくないディスカッション。

そうして、「ぼく」が最終的に下した、決断とは・・・?

子供が主役の超能力小説なのに、超能力を使うことについてここまで深く考えさせている小説って、それだけでめずらしいよね。力のあるものには責任があるということから、子供を全然逃げさせない。最後の決断に向けて、とことん追い詰める。

中でも、「ぼく」が加害者に復讐をしようとしているのは、うさぎのためでも、ふみちゃんのためでもなく、自分のためである、ということを認めさせられるくだりは秀逸。そして、「ぼく」自身もPTSD患者である、という点をはずさなかったのも、それと対になる、はずせないシーンでした。全体的に、心理劇としてすばらしかったです!

でもやっぱり、心理劇部分は、小説のバランスとしては長すぎ、かな。どうしてもテンポが悪くなってしまって、中だるみをおこしてはいました。終盤の展開はかなりよくて、私は好きだったので、終盤をもう少し延ばせばバランスがとれたかなあ、と、思います。あと、「子供たちは夜と遊ぶ」とのリンクが、けっこう意義あるリンクで、かなり嬉しい感じでした。

ああ、でも、辻村さん、とうとうミステリーではなくなってしまいましたね・・・。まあ、このひとの人物の描き方は、YAかジュヴナイルだろ、とは思っていたけど。でも、もうしばらく、ミステリーをやっていたほうがいい小説を書くと思ってたんだけどなあ。だって、この人からミステリーのかせをはずしてしまったら、自己愛の肥大した若者がひたすらウジウジと悩んでグルグルするだけの小説になってしまうじゃないか!

・・・と、思っていたら、やっぱりそうなってしまいましたね。今回は、主人公が子供という事と、「先生」というディスカッションの相手が存在したおかげで、それなりに読めるレベルだった(と、私は思いました)けど、このグルグル路線で辻村さんがどこまでいけるかは、微妙だと思う。グルグル路線はね、そこから卒業した人が書いてこそ、いい小説になりうるんだと思うから。

私は今でもまだ、辻村さんのファンです。辻村さんの成長に期待しています。まだまだ過渡期が続いている作家さん。次作、どっちに転ぶんだろう。ドキドキ。
| た行(辻村深月) | 08:22 | - | - |
▲ 凍りのくじら 辻村深月 
4061824589凍りのくじら
辻村 深月
講談社 2005-11

by G-Tools

1・2作目よりミステリー部分が弱くなり、心理描写がメインになってきた3作目。タイトルと装丁はものすごく好きです。

辻村さんの作品の、主役をつとめる女の子を、好きになれたためしがありません。今までの2作は、それでも物語が面白かったので、まだ作品としては好きだったんだけど。今回は、「主人公嫌い度」が、「物語が上手い度」を超えてしまったようです。

とりあえず「物語が上手い度」のほうから書きますが、ドラえもんワールドの小道具との絡みは、すごく面白かったし、無理がなくて上手い!それだけでも読む価値はあります。それから、プライドを打ち砕かれて、壊れていく元カレの描写はリアルで、繊細で、すごかったです。それだけでサイコサスペンスとして本が一冊できそうです。

で、もうあとは、「主人公嫌い度」の話になってしまうのですが・・・。

理帆子は、「自分は頭が良くて、顔もいい。だから、どこにも居場所がない」と言い切り、周囲の人々を馬鹿にし、見下し、1人1人にレッテルをはって分類し、人と話すとき自覚的に手を抜く。基本的な性格がそんな風に鼻持ちならない上に、高校生にしては、精神年齢がびっくりするくらい低い。その事には無自覚。実際には、本人が言うほど賢くないし、大人でもないし、浮いてもない。ごく普通の、青臭い、自意識過剰の十代女子です。

こんなやつに共感する読者は、いったいどれくらいいるのかなあ・・・と、考えて、読書人間の中には意外とたくさんいそうな気もして、それがまた嫌でした。周囲との違和感に悩む、というのは、思春期にはありがちな事で、そんな経験はきっと誰にでもあります。「読書量」とか「頭の良さ」とかには、まったく関係ないんです。でも、読書人間は頭でっかちになりがちで、自分だけが特別なのだと思い込みやすい。

私も読書人間なので、彼女を嫌いなのは、たぶん近親憎悪ですね。私は、彼女ほど性格悪くない(と思いたい・・・)し、子供じゃなかった(と思いたい・・・)ですけど、本質的に同じタイプの若者だったのでしょう。もう、記憶が薄れるほど、昔のことになってしまいましたが。

理帆子は典型的なACで、過去も、現在も、親との縁が薄くて、本当にかわいそうです。こんな風に人と深く付き合うことを避けたがるのは、弱さの証拠だし、自分よりさらに「ダメ」人間の元彼から離れられないのは、自信がない証拠でしょう。だから、同情はできました。でも、共感はできないし、しつこいようだけど、嫌い(笑)。

まあ、この物語は、その辺の事に、彼女自身も気づいて変化する、成長ストーリーだったりもするので、10代独特の痛々しさを、きっちり描いた、という意味では上手いのかもしれません。だけど・・・やっぱり、何かが足りない。やたら心理描写が丁寧なのが、悪い意味でイタイ。

おばさんくさい感想ですが・・・著者もやはり、まだ若いのだな、と、思いました。そこが惜しいです。若い人には「傑作」と評価されるのかもしれません。それから、元カレの描写はすごいし、藤子不二雄レスペクト全開だし、理帆子のキャラは、男性の共感のほうを呼ぶような気がするので、この本は女子向けに見えて、男子受けのほうがいいかもしれません。

辻村さんは、もう少し年をとったら、心理描写メインの本で傑作を書いてくれそうな気がします。でも今はまだ、きちんとしたミステリーの世界にいたほうがいいと思います。
| た行(辻村深月) | 02:29 | - | - |
● 冷たい校舎の時は止まる 辻村深月
4061823752冷たい校舎の時は止まる (上)
辻村 深月
講談社 2004-06-08

by G-Tools
4061823787冷たい校舎の時は止まる (中)
辻村 深月
講談社 2004-07-06

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4061823825冷たい校舎の時は止まる (下)
辻村 深月
講談社 2004-08-06

by G-Tools

ネタバレ警報!

ある雪の日、学校に閉じ込められた8人の仲間。入る事はできるのに、出ることはできない玄関。さっきまで人がいた形跡があるのに、誰もいない職員室。登校してこない生徒たち。不可解なこの謎を調べるうちに、彼らは、2ヶ月前の学園祭のときに、自殺したクラスメートがいたこと、そして、そのクラスメートの名前を自分たちが思い出せないことに気づきます。

不安に支配されていく学校の中で、大量の血と人形を残して、一人、また一人、と仲間が消えていきます。死んだのか?それとも、元の世界に戻ったのか?なにもわからないまま、8人の過去と心の闇がじっくり描かれていきます。平行して、学園祭の時の事件についても描かれます。とにかく構成の凝った本で、すごく読み応えがありました。

伏線がいっぱいはってあって、謎もいっぱいあって、再読せずにはいられない感じ。私は、「自殺したクラスメートは誰か」はわかっちゃったし、だとしたら「この世界のホストは誰か」に関しても、かなり早い段階でわかっちゃったんですけど(っていうか、かなりわかりやすいよね・・・)「菅原の正体」「どうして榊はいないのか」このあたりの真相には驚きましたねー。でもちゃんと読めば、「ひまわりの家」のお話の部分で、伏線がはられてるんだよね。やられました!

どうやら2作目の「子どもたちは夜と遊ぶ」のほうが、評価が高いみたいなんですが・・・わたしは、「冷たい校舎の時は止まる」のほうが好きです。キャラクターのリアリティがないのは、同じだと思うし・・・。こんな高校生いないよ!という意見に対しては、こんな大学生いないよ!と、2作目にも同じつっこみができる。展開の強引さで言えば、事件が虚構の世界で起こっている1作目なら、ああ、そういうことならしょうがないね、と、思えばいいでしょう?それに2作目のようなズルは、1作目にはない。ちゃんと伏線はってあるし、筋が通ってる。

8人のキャラクターに関しては、そりゃあ言いたい事はたくさんあります。リアリティはないよね。まあそれはファンタジーだからいいとして。女子は、一応キャラの描き分けができてるし、一人一人をきちんと描いてる気もする。でも、男子はまったく描けてないねー。いくら頭がいいって言っても、こんなに大人な男子高校生が揃うなんてありえない。性格だけ見てると、誰が誰だかさっぱりわからなくなる。全員、古い少女漫画に出てくる憧れの先輩みたい(この言葉・・・「夜のピクニック」の感想でも使ったな・・・。あ、そういえばこの人、恩田陸さんの一部に作風が似てる)

女子は著者の分身で、男子は著者の憧れなのかなあ。ただ、たぶん主人公ということになるのであろう、深月ちゃん。彼女は、ものすごーく同性に嫌われるタイプだよね。上・中巻での彼女のキャラクターがちゃっちいことに関しては、下巻にオチがあって嬉しかったんだけど、それを抜きにしても、深月は女子には嫌われるよね。春子にいじめられたの、わかる気がするもの。この本は、深月が色んなタイプのいい男にひたすらちやほやされまくる小説、と言っても過言ではない。このキャラクターに、自分と同じ名前をつける、辻村深月さんという作家こそ、一番興味深いキャラクターです。

とにかく。この本は好き。そして、この作家さんもたぶん好き。次回作にも期待。
| た行(辻村深月) | 11:56 | - | - |
● 子どもたちは夜と遊ぶ 辻村深月
4061824295子どもたちは夜と遊ぶ(上)
辻村 深月
講談社 2005-05-10

by G-Tools

4061824309子どもたちは夜と遊ぶ(下)
辻村 深月
講談社 2005-05-10

by G-Tools

ネタバレありあり!

アメリカ留学をかけた論文コンクール。同じ大学に通う、努力家の秀才・狐塚と、天才肌の美青年・浅葱の二人が、最優秀賞候補と目されていた。しかし、選ばれたのは「i」という謎の人物で、その論文は、二人の力量をはるかにしのぐものだった。

2年後。「i」の正体を探っていた浅葱は、「i」から意外な事実をつきつけられ、そして、悲しい殺人ゲームが始まる・・・。

ミステリーというよりは、サイコホラーというか・・・病んだ人間と、ゆがんだ人間関係を描いた小説としてオススメ。(一応、童謡の見立て殺人とかもやってるんだけどね・・・。)うん。大学生ってのは、本当に子供だよね・・・。だって高校生の次は大学生なんだから、こんなものでしょう。

ストーリーの割に登場人物が多くて、しかも心理描写が驚くほど丁寧です。縦軸は、狐塚と浅葱の大学仲間を中心に進んでいくのですが、そこには狐塚の彼女・月子、同居人・恭司、狐塚と浅葱の先輩・荻野さん、月子と同じゼミの真紀ちゃん、そのゼミの担当教授秋山、月子の友人・紫乃といった人々がいます。全員主要キャストです。

これだけの数の人間の、過去や、事情や、複雑に絡まるそれぞれの思いを、しっかり描いていて、色んな人に感情移入させられてしまいます。うまいです。やはり、浅葱の暗い過去というのが、一番の目玉でしょうが、わたしは月子&紫乃の「病んだ恋人同士」のような友情の描き方にもしびれました。うまい!

だからこそ、下巻の怒涛のストーリーが本当に切ないのですが、上巻がだれた感じは、なきにしもあらず。

これ以外にも、平行して語られている、赤川翼という少年のストーリーもあるし、構成は複雑です。緻密にはりめぐらされた伏線あり、小さなどんでん返しが随所にあり、なんというか・・・メフィスト賞作家さんらしい本です。読みがいがあります。

このぐらいでいいかな?もう、ほんとにネタバレするよ。

ミステリーだと思って読んだけど、最後まで読んだら、この本ったら、純愛本だった。かなり切ないラブストーリー。そんなあって感じ。泣ける!

月子が浅葱を好きだって事は、かなりわかりやすく書いてあって、ばればれだったので、てっきり、月子が、狐塚から浅葱にのりかえる話なんだと思ってしまいました。月子と狐塚の関係に関しては・・・叙述トリックというより、もう「嘘」の領域だよね・・・。わたし、叙述トリックは大好きで、してやられた時は本当に快感なんだけど、ここまで来ると・・・わたし的に、ギリギリアウト!だって、この本「狐塚孝太と別れるかどうかが、今日決まる。月子は・・・」って始まるんだよ。浅葱じゃなくても騙されるって。とにかく浅葱が可哀相でした。

浅葱と恭司はもちろん病んでいるんですけど、二人が「健全だ」と、羨んでいる狐塚と月子も、かなり病んでるんだよね。っていうか、二人の家庭が病んでるんだね。月子と母親の関係は、遠慮がありすぎて気味が悪い。孝太と月子の関係も病んでると思うなあ。兄妹でお揃いのストラップをいつまでも使い続けてるなんて、なんだかなー。確かに、本人が独白しているように、月子と紫乃の関係が病んだのは、月子のせいなんでしょうね。

それから、「i」の正体という一番の謎のオチが、ちょっとしょぼかった。ミステリーとしてはあまりに安易。その手前まで、浅葱=「θ」と月子のストーリーが山場をむかえるまでが、すごく良かったのでとても残念。

そこまでが本当に、良かったんだよねー。月子と狐塚の関係がはっきりしてから、浅葱と月子が対決するまで。作者、力入ってますって感じで。読むほうも、本を持つ手に力が入るというか、ページをめくるのももどかしいというか。かなりテンションが上がっていたので・・・なんかこけました。最後、恭司くんがかっこよく持ち直してくれて、多少救われたけどね。

というわけで、一番好きなキャラクターは、恭司です。彼の言葉を1つ引用♪
人間てのは、大好きな人が最低一人は絶対に必要で、それを巻き込んでいないと駄目なんだ。そうでないと歯止めがかからない。
かっこいいなあ。結局彼が、一番大人だと思う。秋山教授なんて、単なる変態親父だし。(あ、でも、真紀ちゃんの彼氏になんて言ったのかは気になる)

まあ、この感想の長さからわかるとは思いますが、色々つっこみどころはあれど、わたしはこの本好きです。盛り上がりました。
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