小学校を卒業したけど、中学生でもない春休み。隣の家とのいざこざが原因で家庭もギクシャク。居場所のなくなった12歳のトモミは、弟テツと共に、自分の住む町を歩き回り、ガラクタ置き場で、捨てられた古いバスを見つけます。トモミとテツは、今日からここで暮らそう、と、決めますが…。
この小説は、不要とされ、捨てられて、忘れられていくものへの哀惜というか、子供なりの同情や共感が表現されているんだなあと思って読みました。たとえばタイトルの「オルガン」はトモミの母親が子供のころ使っていたもので、作中でおじいちゃんが一生懸命修理するんです。他にも、ガラクタ置き場に捨てられているバスや、家具や、たくさんのネコたち。取り壊される古い家。忘れられた約束。
でも、本当に大切なものは、胸の中にいつまでも残せばいいんだよ。・・・という最終的なメッセージは、児童文学の王道で、私はちょっと照れちゃいましたが、いい物語でした。
児童文学の王道といえば。この本は、壊れかけた家族の再生の物語でもあるし、トモミとテツの成長の物語でもあります。「生と死」も重要なファクターです。王道を詰め込んだような、実に色んな読み方ができる本だと思います。