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■ 春のオルガン 湯本香樹実
4198602506春のオルガン
湯本 香樹実
徳間書店 1995-02

by G-Tools

小学校を卒業したけど、中学生でもない春休み。隣の家とのいざこざが原因で家庭もギクシャク。居場所のなくなった12歳のトモミは、弟テツと共に、自分の住む町を歩き回り、ガラクタ置き場で、捨てられた古いバスを見つけます。トモミとテツは、今日からここで暮らそう、と、決めますが…。

この小説は、不要とされ、捨てられて、忘れられていくものへの哀惜というか、子供なりの同情や共感が表現されているんだなあと思って読みました。たとえばタイトルの「オルガン」はトモミの母親が子供のころ使っていたもので、作中でおじいちゃんが一生懸命修理するんです。他にも、ガラクタ置き場に捨てられているバスや、家具や、たくさんのネコたち。取り壊される古い家。忘れられた約束。

でも、本当に大切なものは、胸の中にいつまでも残せばいいんだよ。・・・という最終的なメッセージは、児童文学の王道で、私はちょっと照れちゃいましたが、いい物語でした。

児童文学の王道といえば。この本は、壊れかけた家族の再生の物語でもあるし、トモミとテツの成長の物語でもあります。「生と死」も重要なファクターです。王道を詰め込んだような、実に色んな読み方ができる本だと思います。
| や行(湯本香樹実) | 13:52 | - | - |
■ 西日の町 湯本香樹実 
416321190X西日の町
湯本 香樹実

文藝春秋 2002-09

老人と子供と死の話。とても湯本さんらしいのですが、この本は大人向けということで、あの『夏の庭』とは、少し違った雰囲気になっています。主な登場人物は、てこじいと、その娘である母と、僕。『夏の庭』と違うのは、僕の視点から、母の心情をクローズアップしている点です。それは時に残酷で、とても複雑で、確かにこれは大人の本だな、と思わせてくれました。

せっかく上質の文芸書になりそうなのに、少し描き足りなくてもったいない、というのが感想です。もっと分厚い本になれると思う。てこじいの人生、てこじいの妻や、兄弟や、子供達の人生、時代背景など、ちらっとしか描かれていないものをきちんと描きこめば、大河長編になれるプロットだと思います。上下2分冊になってもいいくらい。そうしたら、爪を切る母親にも、うずくまるてこじいにも、もっと心を寄せられたのに・・・。というわけで、『夏の庭』のほうが好きでした。

でも、家族というのは、とても不思議で、憎んでも、恨んでも、捨てたくても、実際に捨てたとしても、心のどこかで捨てきれないもの。期待するたびに裏切られても、結局はいとおしく思ってしまうもの。湯本さんの温かいメッセージが伝わってくる素敵な本です。
| や行(湯本香樹実) | 22:48 | - | - |
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