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■ みずうみ よしもとばなな 
4902943123みずうみ
よしもと ばなな
フォイル 2005-12

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読み応えのある小説だったなあと、思わないわけではありません。いい本だったなあと思っています。登場人物の心情の、丹念な描写。人という弱い生き物に対する、温かい視線。静かで穏やかで、読みやすい文章。よしもとばななさんは、やっぱり上手いし、やっぱり好きです。

でも「あれ、初期の頃に戻っちゃった?」と、いうのが本心。ぶっちゃければ「またこれか」って感じ。

物語を前に進めるのは恋愛の進展。でもテーマは恋愛そのもではなく、心の傷の癒しや、人間の再生。モチーフは、崩壊した家族や、家族の縁の薄い人々の奇妙な人間関係や、新興宗教による誘拐や洗脳。

同じような小説を、もう、いくつも書いていませんか?同じテーマを色んなアプローチで書く作家さんは多いですけど、似たようなテーマを、似たようなアプローチ、似たようなモチーフ、似たようなキャラクター、似たようなタッチで、また書くのって・・・どう評価したらいいのかなあ?

それで作品がどんどん良くなっているのなら、同じような小説を、いくつ書いても、その事に価値があるのかもしれないですね。よしもとばななさんは、どうなんでしょう?どんどん良くなっているのかなあ。客観的な評価は、私の手に余ります。

でも、昔の作品を初めて読んだ時のほうが、わたしにとっては印象が強かったです。それは単に、私が当時、感受性の強いお年頃だったから、というだけのことかもしれませんが。10年前の私に、この本を読ませてみたいです。
| や行(よしもとばなな) | 01:14 | - | - |
● なんくるない よしもとばなな
4103834064なんくるない
よしもと ばなな
新潮社 2004-11-25

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沖縄を舞台にした4つの短編が収録されています。あとがきの「私はあくまでも観光客なので、それ以外の視点で書くことはやめた。これは、観光客がかいた本だ。」という言葉が、気に入ってしまいました。著者の謙虚な姿勢に好感が持てます。沖縄にいけば癒されるのだ!という、4つの作品に共通した認識というか信念というか、もうほとんど宗教のようなノリに、違和感を感じた私ですが、ケチをつける気がうせました・・・。

どの作品も、いわゆる「よしもとばなならしい」作品です。テーマといい、ストーリーといい、文体といい。それが“沖縄”という空間と出会ったとき、こうなるのか!という科学反応というか、コラボレーションの妙、というのを楽しみました。読むと、沖縄に行ってみたくなることは間違いありません。

タイトルロールであり、分量的にもこの本の半分以上を占めている「なんくるない」という恋愛小説がよかったです。離婚したばかりの女性が、沖縄旅行の最中に、トラという男の子に出会って、すごいスピードで恋に落ちる物語。私は、恋愛にめちゃめちゃ時間のかかるタイプで、我ながらイライラしているので、このストーリーにはスカっとしました。主人公のピンキーちゃんが自分に似ているように思えて、入り込みやすかったです。

よしもとばなな小説のファンの多くが、自分はピンキーちゃんに似ている、と、思うのではないかな?というようなキャラクター造形でした。上手ですねー。(わたしは、特に、ばななファンというわけではありませんが)
この、マザコン、シスコンぶりといい、家族べったりで仕事もこれらしいところといい、甘えぶりといい、この女性慣れした態度といい、迫り方の感じといい、若く見えるところといい、こりゃあ、ほんもののダメ男だ!と私は確信した。

「ダメ男、何人知り合えどダメはダメ」と心の中で、川柳まで作ってしまった。

きっとこの男はいくら恋愛しても、たくさんのダメなエピソードしか作れないに違いない、と私は思った。でもきっとそのだめなエピソードがいちいちいいんだろうなあ。
この文章が、とても好き。
| や行(よしもとばなな) | 23:18 | - | - |
■ High and dry (はつ恋) よしもとばなな
4163231609High and dry (はつ恋)
よしもとばなな
文藝春秋 2004-07-23

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とにかく、表紙がかわいい!山西ゲンイチさんの装画と挿絵が、キュートでラブリーで、素敵。挿絵も口絵も全部カラーですっごく贅沢な気分になれます。

ただ・・・この本の内容は、この絵と合っているとは、言えないような気はした。もっと大人っぽい絵のほうがいい、と、私は思いました。

14歳の夕子の初恋。相手は20代後半の絵画教室の先生で新進気鋭の芸術家でもある、キュウくん。とある「奇跡」によって、2人の仲は急接近しますが、当然のことながら、はじめは夕子は相手にされていません。そして、キュウくんは今はフリーとはいえ、ちゃんと元彼女たちが周囲にいて、思ったり思われたりしています。

夕子の一人称で物語は進みます。恋する14歳であることの無力感や、悔しさは、リアルに伝わってきて、切なくて甘酸っぱかったです。14歳がテーマの本というと、援交・薬中・いじめ・自殺・拒食などなど、暗くて重い話が多いので、この本には心を洗われる感じがしました。
キュウくんは私が寝ていてもキスしたりしないし、ぎらぎらした目で眺めたりしない。そういう人はいるんだよ、ほんとうに。もっと大事なものの後にそれが来る人が。
と、ラスト近くで夕子が、心の中で言います。一瞬は「純愛」だなあ、と、心地よかったんですけど、すぐにちょっと待て、と、思いました。つまり、キュウくんは、夕子の成長を待つのかなあ。少なくとも、夕子はそれを願っているんだよね・・・。でも、大人になってしまった私の目から言わせてもらうと・・・それってどうなんでしょう?キュウくんって、自分のために大好きな夕子が絵画教室をやめてしまったのに、そのことはあまり重視してない。二股経験もあるくらい、ずるい所のちゃんとある普通の男の人だし。今でも自分の事を好きなミホさんを、必要なときにはちゃんと利用しているし、きちんと好きな人は他にいる。夕子の気持ちを知っていて、夕子との関係を続けるキュウくんは、誠実に見えて・・・ずるくないですか?それに、プラトニックに見えるけど、この関係かなりエロくないですか・・・?

この本は、初恋の話でもあるけれど、親子関係の本でもあります。夕子の母親の「友達みたいだけどちゃんと母親なのよ」的なものわかりの良さは、すごく不自然でした。自分の家族の関係を分析する夕子が、特に後半、大人びていすぎるのも、かなり違和感があります。(大人になった夕子が当時を分析しているのならわかるんですけど・・・。)それに、登場する親たちが、「子供を愛しているけど社会的欠落のある変人」という、似たようなキャラクターで、ちょっとは書き分けようよ、とも思いました。こんな本にもしっかりアニミズム的な要素が入っているところが、よしもとばななさんだなあ。
| や行(よしもとばなな) | 22:51 | - | - |
● デッドエンドの思い出 よしもとばなな
4163220100デッドエンドの思い出
よしもと ばなな
文藝春秋 2003-07-26

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あとがきで著者が、「出産をひかえて、過去のつらかったことを全部あわてて精算しようとしたのではないか?」と述べているような短編集。5編収録されていますが、すべて若い女性が主人公で、しかも、全員が相当ハードでシビアな環境にあります。彼女達が、じっと傷を癒し、静かに世界と折り合っていく様子を、丁寧に描いています。

・「おかあさーん!」
幼少時母親から虐待を受け、祖父母に育てられた「私」は、同棲中の婚約者とやりがいのある仕事があって、すぐ目の前に幸せがあるのに、なかなかそれを受け入れられません。そんなある日、彼女は社員食堂で、毒を盛られて倒れてしまいます。退院後すぐに仕事に復帰する彼女ですが、本当は身体も心も無理をしている事に、自分で気付く事ができず、どんどん追い詰められていきます。「虐待を受けた子どもは、自分の体の痛みと心を切り離すことができる」という仮説が、その理由としてあげられています。

わたしも、自分の「無理」に気がつけないタイプで、大きな失敗を何度もしているので、かなり身につまされるものがありました。そして、「無理」をしないために大切なことは、周囲の人たちの優しさや親切を、ひねくれずに受け止めることだと、常々思っています。(迷惑をかけていいという意味ではないけど)。だから、この小説は、けっこう好きでした。

・ともちゃんの幸せ
この本で、一番短い小説。神様の存在についてはどっかにおいておいて、ともちゃんには、絶対幸せになって欲しいなあ。

・デッドエンドの思い出
遠距離恋愛中の婚約者にあいに行ってみたら、そこで彼は別の女性と暮らしており、彼女と婚約し、結婚の日程も決まっていた。という最悪の状態から始まります。主人公のミミは、実家の家族がとても仲が良くて、たくさん愛されて、安定した環境にいる、育ちのいいお嬢さん。ミミが実家に「え〜ん!」と泣きつくのではなく、これは自分の悲しみだから、今は家族と距離を置こう、と考える。その部分が好きでした。

これこそまさに、この短編集のほかの主人公達が持ち得なかった、生きていく上のたくましさだと思います。本当の育ちの良さって、こういうことだよね、たぶん。一見無防備で、弱く見えるミミが、実際には一番強く、賢い。

ミミが居候することになる、バーの店主西山君も、素敵な人でした。さすがタイトルロール。短編集の最後を飾るにふさわしい、後味のいい小説でした。
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