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■ ほどけるとける 大島真寿美
ほどけるとけるほどけるとける
大島 真寿美

角川書店 2006-07

きっかけはちょっとした人間関係のもつれですが、結局はたいした理由も、将来への展望もなく、勢いで高校を中退してしまった、18歳の美和。どんなバイトをしても続かず、夢も希望も自信も失って、今は、祖父の経営する銭湯でバイトをしながら、先の見えない日々を過ごしています。

序盤で、大和湯の常連客について語る美和のこんな言葉に、ものすごく共感して、一気に美和に共感してしまいました。
年季が入ったおしゃべりの難易度はけっこう高い。どこかに多量の毒を孕みつつ、表面的には対して誰も傷つかないですいすい前へ進んでいく。眺めながら、あんなふうにするすると綱渡りみたいに誰かと関係していくなんて自分には百年たっても無理なんじゃないかと思え、ため息が出そうになった。
いやー、本当に、私もそう思います。本当に私も、女同士のあの世界には、小学生の頃から現在に至るまで、できるだけ関わらずにいようとしてきたし、関わった場合、いたたまれない思いをした記憶しかありません。女の子は大好きだし、女友達は大事だけど、ある程度の人数の女が集まった仲良しグループっていうところで、うまくやっていくには、そうとうのバランス感覚と、柔軟性と、ある意味での鈍さと、たくましさが求められ、女性の多くが生まれながらに持っているそれを、私は持ってないのです。

かといって、私が男らしいかといえば、そうではないんですよね。男性は、そういう女性グループが孕んでいる「毒」や「棘」に気がつかないことが多いようです。気がつくタイプの男性も、それは何か理由があって学習しただけであって、「毒」や「棘」に、うっかり気がついて滅入ってしまう私は、非常に女らしいのです!!!

まあ、そんなことはどうでもいいんですけど。とにかくそんな感じで、美和をすっかり好きになってしまったので、美和が大和湯の年配のお客さん達との関わりから、色々な事を学んだり、恋をしたり終らせたり、自分の将来を自分で見つけたりする様子を、温かい気持ちで見守ることが出来ました。舞台が「銭湯」という場所であることも、温かい気持ちにさせてくれたり、マッサージシーンがよく出てくることも、癒された気分になった一因かもしれません。私って、単純なので。

いい本でしたよー。美和がプロのマッサージ師になったころに、大和湯に行って、至福の時を過ごしたいです。
| あ行(大島真寿美) | 00:04 | - | - |
■ 羽の音 大島真寿美
4652071981羽の音
大島 真寿美
理論社 2001-05

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骨がぎしぎし鳴るたびに、焦るようになった。しかし、焦ることはないのだろうと、今、思った。むくむくを待つことにする。
ふと糸が切れたように学校へ行く気がしなくなった高校生・菜生。婚約者がいるにも関わらず、初恋の人透樹が忘れられない事に気づいた姉・花保。両親の離婚で二人暮しになった家で、プチひきこもり状態になった菜生の1ヶ月を、1日1日丁寧につづっています。初雪の1日のエピソードが切なくて、印象的でした。ラストシーンも前向きでよかったです。

タイトルの「羽の音」は、菜生の恋人(?)で神経科に入院中のミキオが、「背がのびているみたいで、骨がぎしぎしいう音がする」と言ったのに対して、菜生が「それ、背が伸びるんじゃなくて、羽が生えるんじゃないの」と、答えたセリフから。

「誰でも一度は経験がある・・・」と、書こうとして、「いや、違う。」と、思いました。たとえば、この本に出てくる北山さんのような人は、こういう時間をすごしたことはないような気がします。もちろん、ふられたりすれば、落ち込むだろうし、悲しんだり、傷ついたりもするんだろうけど。ただ静かに、ひざを抱えて、季節が過ぎるのを眺めるだけの時間が、必要な人と、そうでない人がいるのかもしれない。それは、幸・不幸とは関係がないような気がします。作品の感想からは、少し脱線してしまいましたが。

さて。この本は、最初の8ページが絵です。おそらく菜生の描いた絵、という設定かな?と、思うのですが、静謐な印象の文章に比べると、ものすごく荒々しくていびつな絵なんです。これぞ羽化する直前、という感じが切々と伝わってくる絵です。絵と文章は対称的なんですが、すごくいいんです。あわせて1つの作品という感じがします。
| あ行(大島真寿美) | 22:40 | - | - |
● かなしみの場所 大島真寿美
4048735349かなしみの場所
大島 真寿美
角川書店 2004-06

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離婚して実家に戻り、雑貨をつくりながら静かに暮らしている果那。離婚の原因は、なんと、果那の「寝言」です。寝ている間に、「天使のおじさん」に関する妙な寝言を言ってしまう果那に、夫は距離を感じて離れていきました。それ以来、果那は、寝言を誰かに聞かれるのが恐くて、眠る事ができません。

そんな果那が唯一眠れる場所が、雑貨の卸し先「梅屋」の奥の小部屋。「梅屋」には、みなみちゃんという店番がいて、なじみの客がいて、大家さんがいて、果那を少しづつ癒してくれます。果那は、にぎやかな親や親戚に振り回されながらも、自分の暮らし、というものを取り戻していきます。

天使のおじさんとは誰なのか?過去の甘い記憶の真相は?子供の頃、自分が誘拐された事があるというのは本当なのか?これらの謎が、少しづつあきらかにされます。

全体として、優しくて、静かで、美しい物語でした。悪い人は出てこない、どろどろの恋愛もない。過去を大切にしつつ、今をしっかりと生きる人の、素敵な物語です。
| あ行(大島真寿美) | 21:47 | - | - |
■ チョコリエッタ 大島真寿美
4048734466チョコリエッタ
大島 真寿美
角川書店 2003-03

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もう高校生のくせに、「犬になりたい」とか、「わたしは本当はチョコリエッタという名前」などと言っている、現実逃避型の少女が主人公です。本名は知世子。チョコリエッタというのは、亡くなった母親だけが彼女を呼ぶときに使っていた名前です。今では誰も呼んでくれることのない名前です。

「春のフィルム」「夏のフィルム」「秋のフィルム」と三部構成になっています。「春のフィルム」では、自分はチョコリエッタであるということに執着していた主人公ですが、「夏のフィルム」で映画研究会の作品に出演し、「秋のフィルム」ではその作品に写った自分を、もういなくなった「チョコリエッタ」、今の自分ではない別人、と客観的に認識するようになっているようです。これは知世子の成長物語なんですね。
私は私を悪魔にのっとられないように、適当なところで手を打って、霧湖が辻さんと結婚しても牧丘典子さんが父と結婚しても、私はくじけずにやっていけるよな、と呪文のように唱える。
最終章「秋のフィルム」でのこの言葉が印象的でした。「悪魔」というのは、父親や母親代りの霧湖さんが自分から離れてしまうのが寂しくて、彼らの不幸を願ってしまう気持ちのことです。知世子さんは、素直でいい子ですね。このセリフは本当に健気で、成長したな、って感じで、頭をなでてあげたくなります。

ただ、「夏のフィルム」の章は、個人的に退屈でした。印象が薄くて残念です。そのせいで、彼女の成長の理由やきっかけがつかみきれない。夏の映画撮影と「春・秋のフィルム」のストーリー上の関連性が、よくわからない…。でもまあ、夏の映画を撮った人と恋に落ちる、というようなあまりにできすぎの展開ではなかった事が救いです。
| あ行(大島真寿美) | 21:44 | - | - |
■ 水の繭 大島真寿美
4043808011水の繭
大島 真寿美
角川書店 2005-12

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母親は、双子の兄だけを連れて、家を出て行った。父は死んでしまった。それ以来、家に閉じこもりがちになり、ただぼんやりと日々をすごすようになった、とうこ。そこに居候として飛び込んできたのが、行動力と生命力にあふれた、従妹の瑠璃です。瑠璃によって外に引っ張り出されるようになったとうこは、父親の一周忌や、双子の兄・陸との再会をへて、少しづつ、自分の知らなかった、父や、母や、兄の、心情を知っていきます。自分を責め、いなくなった人たちを恨み、漂っていたとうこが、新しい一歩を踏出すまでの、一夏の物語です。

印象的だったのは、とうこが「絶対的な孤独の中にいる」と自分を表現するのに対し、瑠璃は「相対的に楽しいって事を確認する」という描写です。面白いなあ、と、思いました。

前半のとうこが感じている事の描写がとても上手だなあ、って思います。泣けないし、戒名も唱えられないけど、吐いてしまう。自分から腐臭を感じる。夏の暑さに周囲が蒸し暑くよどむなかで、自分だけが冷凍庫に入っているように寒い。

逆に、たくさんのページ数をさいて描かれている割に、瑠璃は薄いです。瑠璃は狂言回しの役だし、重要な台詞を言ったりもするキャラなんだけど、瑠璃本人の人物描写はなんとなく薄くて、なぜか魅力的でも印象的でもない…。瑠璃を、とうこと同じくらいの重さで分厚く描いてくれれば…と残念な気がします。

後半の、とうこと、兄・陸のエピソードはよかったです。陸は、瑠璃ほどたくさん登場するわけじゃないけど、インパクトは抜群のキャラクター。この本はそこに絞って、「とうこと陸のお話で、脇役に瑠璃とおばあちゃん」という話にすればよかったのになあと、思います。他の登場人物も、幽霊も、水害も、物語を薄めてしまった感じで、もったいない!

初期の吉本ばななっぽい、って思いました。キッチン+TUGUMI+N.P. な感じがした。
| あ行(大島真寿美) | 21:28 | - | - |
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