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■ ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎
ゴールデンスランバーゴールデンスランバー
伊坂 幸太郎

新潮社 2007-11-29

仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた―。

精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界―、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。

Amazonより
面白かったですねー。それなりに長い小説でしたが、続きが気になって一気に読めました。ただ、伊坂作品の集大成…という煽り文句には疑問を感じます。確かに「魔王」の世界には通じるものがありますし、学生時代の仲間との絆という点では「砂漠」や「チルドレン」を彷彿とさせるものがありますが、集大成、とは言いすぎ。

黒幕が誰なのか、なぜこんな事件が起こったのか、なぜ青柳雅春が選ばれたのか、などなど、最後まで大きな謎が明かされなかったし、何の罪もないたくさんの人が死に、主人公もああいう結末になり、納得できない事が多い小説でした。でも、その割に、すっきりした読後感でした。これってすごい事だと思う。伊坂さんはやっぱり腕があるんですね。すべての謎を明らかにし、勧善懲悪の小説にしてしまったら、この本は現実味が無くなってしまう。それをせずに、それでも爽快な読後感を残すというのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

現実にあり得る、と、思うから、この本は少し恐くて、そこが魅力なんですよね。セキュリティポッドなんて、世論を上手に煽れる人がいれば、いつ実現してもおかしくないと思う。国家権力は、簡単に多くの人の人権を無視する。もしも私が青柳雅春のような状況に陥ったら、家族や、友人たちは、私を信じて助けてくれるかなあ?かなり不安です(笑)

好きなエピソードは、青柳雅春と樋口晴子との、古い車の中のメモを通したやりとり。それから「痴漢は死ね」の書き初め。それから「たいへんよくできました」。

「たいへんよくできました」の印鑑を、樋口晴子は、いつか彼にバッタリ出会う日のために持ち歩いていたのでしょうか。それともたまたまそこに文房具屋さんがあって、飛び込んで買ったのでしょうか。その場合、一緒にいた夫にはどう説明したのでしょうか。あ、そんな事はどうでもいいですよね。

この小説は映像化にかなり期待できると思うのですが、できれば映画ではなく、連ドラにしてほしいですね。2時間に収めるとなるとかなり省略されてしまうと思うので、それよりは、膨らませて全10回くらいのドラマにして欲しいなあ。その場合、青柳雅春は誰がいいかなあ?中村俊介とか、イメージにぴったりかも。山本耕史もいいなあ。ジャニーズだったら稲垣吾郎。
| あ行(伊坂幸太郎) | 12:20 | - | - |
▲ フィッシュストーリー 伊坂幸太郎
フィッシュストーリーフィッシュストーリー
伊坂 幸太郎

新潮社 2007-01-30

短編集です。

□ サクリファイス
ラッシュライフの黒澤が登場。人探しを依頼されて、黒澤がやってきた山奥の小暮村には、こもり様、という古い習慣が、今も息づいていました。かつては、村人の誰かを生贄として洞窟に閉じ込めて殺すことで、災難から逃れられるという儀式でしたが、現代では、数日の間誰かが洞窟にこもるというだけの形骸化した風習です。黒澤は、その洞窟の中に、自分の探している相手がいるのではないかと考えますが…

□ フィッシュストーリー
時代も登場人物も違う4つの物語が、1つに収束していく、とても伊坂さんらしい作品。楽しめました。息子を「正義の味方」に育て上げたお父さん、かなり常軌を逸した子育てですが、素晴らしいですね。彼がそのように育てられている時、お母さんは何を思っていたのか、そのあたりも気になります。(作品の感想からはかなり脱線しましたね(笑)

△ ポテチ
赤ちゃん取り違え事件を、明るく温かく扱った、ちょっといい話。素敵な親子でした。

△ 動物園のエンジン
全体としては散漫な印象でしたが、登場人物同士の推理合戦は、なかなか面白かったです。
| あ行(伊坂幸太郎) | 17:27 | - | - |
■ 陽気なギャングの日常と襲撃 伊坂幸太郎
陽気なギャングの日常と襲撃陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂 幸太郎

祥伝社 2006-05

人間嘘発見器。リーダー的存在の成瀬。
話の半分以上が嘘。いい加減な演説の達人、響野。
正確無比な“体内時計”の持ち主。運転担当の雪子。
動物を愛し、本人も野生の勘で生きている。天才スリの久遠。

『陽気なギャングが地球を回す』に登場したこの4人の、銀行強盗チームが再登場です。とにかく、会話が面白くて、面白くて。先回同様、成瀬&響野の会話は、長年の付き合いが物を言い、息があってて、テンポが良くて、素敵な漫才コンビでした。それプラス、今回は響野&久遠の会話も絶妙で、笑えました。

頭を空っぽにして読める、楽しい1冊。あらすじとか、ストーリー展開とか、読んだばっかりなのにすでに忘れつつある感じですが・・・それでも他の部分で、満足してしまった本です。伊坂さんがあとがきで言っておられるとおり、“この銀行強盗たちは四人でわいわいがやがやと喋りながら、騒動に巻き込まれていくのが本領”。わたしはその“わいわいがやがや”を、十分に堪能しました。楽しかった!
| あ行(伊坂幸太郎) | 15:12 | - | - |
● 終末のフール 伊坂幸太郎
photo
終末のフール
伊坂 幸太郎
集英社 2006-03

by G-Tools , 2006/05/13

「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るのってそういうのだよ、きっとさ」
この本は大好き。しみじみといい本だった!伊坂さんの最近の作品ではダントツに好き。「砂漠」よりずっと好き。直木賞候補は、絶対こっちにしてください。

「8年後に小惑星が落ちてきて地球は滅亡する」と発表されて5年がたちました。発表直後には恐怖と絶望から、社会は大混乱に陥り、多くの人が亡くなりました。しかし現在その状態は一段落し、小康状態を保っています。

そんな中で、仙台ヒルズタウンに住むごく普通の人たちが、何を考え、日々をどう生きているのか、それが淡々とした筆致で描かれます。設定こそ奇抜ですが、彼らが迷い、悩み、考えることは、誰もが一度は考えたことがあるテーマだと思うし、考えなくてはいけないことなのだとも思いました。生き方、死に方、許すこと、愛することなど、重いテーマに正面から挑んでいるのに、静かで、温かく、読みやすい1冊。素敵です。

8つの短編で構成されており、それぞれの短編には、例によってリンクする登場人物がちらほらいて、それを発見するとちょっと嬉しい、伊坂流の連作短編集です。

公式サイトがとっても素敵
http://www.shueisha.co.jp/hillstown/

こちらは伊坂氏へのインタビュー記事
http://www.s-woman.net/isaka-koutarou/1.html

私だったら・・・。たぶん発表直後の混乱の中で、逃げ遅れてとか、事故に巻き込まれてとか、そういう間抜けな死に方をしていると思います(笑)。もし、そこを生き延びることができていたら、やっぱり、今の生活を続けていくと思います。でもきっと今よりもっと1日1日を大事にすると思うし、人間関係を丁寧に扱うと思う。日常生活の小さな幸せのきらめきが、もっと鋭く感じられると思う。そしていよいよその瞬間が近づいてきたら・・・パニックに陥って、みっともなく泣いたりわめいたりするんだろうなあ。

印象的だった作品。

終末のフール
お母さんの台詞「わたしは簡単には許さないですから」は、結局、ずっと一緒にいますから、という意味なんでしょうね。

太陽のシール
ずっと不妊症だった夫婦が、今になって子供を授かります。生むのか、生まないのか?主役の夫婦も素敵でしたし、障害児を育てながら生きてきた、主人公の友人の言葉も素敵でした。

現実の世界で、胎児診断によって子供に重い障害があることを知った人たちも、同じような悩みを抱えるのではないでしょうか。脳の障害があって、生まれても長くて数日しか生きられないと宣告された子供を、出産することを決意したご夫婦の話を聞いたことがあるのですが、そのご夫婦が出産した理由は「その子を抱いてあげるため」でした。その話を思い出しました。短かろうと、傍から不幸に見えようと、胎児であろうと、命は命ですよね。

冬眠のガール 
大混乱の中で両親が自殺してしまい、1人になった美智の物語。彼女は「お父さんとお母さんを恨まない」「お父さんの本を全部読む」「死なない」という、3つの目標を自ら立てて、静かに生きています。美智が健気で、この設定だけで、もう泣ける!でも美智は、けして悲壮感を漂わせたキャラクターではなく、おっとりとして、のほほんとして、可愛らしい「冬眠のガール」。彼女が「恋人を見つける」という4つ目の目標に向かっていく物語です。

同じく隕石による地球滅亡をテーマにした小説で、新井素子さんの「ひとめあたに・・・」という小説が、むかし好きでした。(最近読んでいないけど、今でも、好きかも。)やはり滅亡間際の一般の人々の日常的な世界を描いたSFラブストーリーです。パニックの時期の狂気を中心に描いた本だったので、この本とはイメージが全然違いますが、地球が滅ぶというときでも「ガール」って恋する生き物なんだなあ、と。可愛らしくていいですよね。

鋼鉄のウール
キックボクサー志望の16歳の少年の物語。極度に神経質になり、部屋にこもる父と、その相手に疲れて不眠症の亡霊のようになった母と、3人で暮らしています。彼が、父親と対決する場面が印象的でした。少年は強い。かっこいい。がんばれ。でも、鬱状態の両親のほうが、リアルではあります。

天体のヨール
オタクの道は、単なる趣味ではなく、生き方であり、死に方である!・・・という物語ではないのですが、私はそこが気に入った(笑)。「星を見るよりも明らかなんだ」って言葉が最高。




さて、ここから、ちょっとだけ、けなします。

色んな人が出てくるけれど、どの短編でも人々は結局、心情的には同じようなところに落ち着く。要約すれば、死に向かって前向きに生きよう、って感じでしょうか。だから、どの作品も読み始めてすぐ、だいたいの展開と結末がわかってしまう。美しすぎる予定調和が、乱されることが1度もない。連作短編集としては、メリハリに欠けるし、パンチが弱い気がします。

この作品は、素直に、視点が時々変わる長編にしたほうが良かったんじゃないかなあ。美しすぎる予定調和も、1度なら(あるいは終盤でまとめて行われたのであれば)納得できるし、私は個人的に、この本の価値観が嫌いじゃないので、もっともっと感動できたと思うんです。でも、繰り返されると・・・やっぱり飽きてしまう。

どうしても伊坂流連作短編形式にこだわるなら、ストーリーのバリエーションに、もっと幅が欲しかったです。(そういう意味で、「天体のヨール」はポイントが高い。この短編がなかったら、もっと評価がさがっていました。)
| あ行(伊坂幸太郎) | 10:48 | - | - |
■ 砂漠 伊坂幸太郎 
4408534846砂漠
伊坂 幸太郎
実業之日本社 2005-12-10

by G-Tools

大学生活の「日常」を丁寧に描いてくれて、懐かしさを感じさせてくれる本です。ああ、大学時代って、こんな感じだったなあ、と。実際は、麻雀、合コン、ボーリングなど私はあまりしていないことを、彼らはするので、実体験的にはオーバーラップしないんだけど、その「感じ」だけは、たぶん大学に行かなかった人も、「青春の思い出」感覚を共有できるんじゃないかと思います。

そして、もちろん、伊坂さんですから。「日常」を丁寧に描くだけで終るはずもなく・・・。「オアシス」の中にいる彼らにも、次々に事件がおこります。特に、夏の事件はとても辛かったです。(でも鳥井くんはかっこいいです!)。もちろん楽しい事件も起こります。謎もあります。恋もあります。家裁調査官も出てきます。おお!

時々、伊坂調っていうのかなあ、伊坂節っていうのかなあ。素敵な文章がするっと入ってくるんですよね。(たとえばラストの一文みたいな感じで・・・)。それが、すごく、きいていて、やられてしまいまいした。さすがだ。

でも、ちょっと全体的にインパクトが弱いかなあ。十分面白いんだけど、伊坂さんにしては、炸裂してない感じ。

春、夏、秋、冬、の4章で構成されています。私は、この4章が、1年生の春、2年生の夏、3年生の秋、4年生の冬、であることに全然驚かなかったんですよね・・・。時期にこだわって読んでいなかったというか、あんまり章タイトルに着目していなかったというか。ごく自然に、受け入れていたので、今さら感想を書くにあたって、パラパラと本をめくってみて、「あれ?ここって驚きどころだったんじゃ・・・」と気がついています。驚きそこねた。もったいなかった。

さあ、この本が直木賞を取れるかどうか・・・。「死神の精度」が取れなかったことで、ファンの熱い期待を背負うことになってしまった一冊ですよね。まだまだ遠い話で、これからどんな本が出版されるか分からないので、もちろんなんとも言えないのですが。引き続き、在庫一層セールをやってくれるとすれば、取っても文句の出ない出来と、ジャンルの、上質の本だとは思います。文春じゃないという事以外には、大きなケチのつけどころはない。取ってくれるといいなあ。

追記:みなさんのブログをめぐってみたら、みんな「なんてことはない」を、自分の文章の中で真似してるの〜。思いつきたかったぞ。私もやればよかった。

それから、陣内と西嶋のキャラってかぶるよね、を書き忘れていた。最初は痛いんだけど、読み進めるうちに、かっこいいところが見えてきました。
| あ行(伊坂幸太郎) | 08:15 | - | - |
● 魔王 伊坂幸太郎 
4062131463魔王
伊坂 幸太郎
講談社 2005-10-20

by G-Tools

ネタバレあり!

超能力兄弟が、ファシストと戦う!
じゃないな。
超能力兄弟が、ファシストと戦おうとする・・・。
ですね。あらすじとしてはそういう物語です。

あとがきで“ファシズム”や“政治”がテーマではない、と著者が書いているのですが、本当にその通りの本です。作中に、憲法改正・日米問題・歴史問題などが登場するだけで、それに対する伊坂さんなりの主張や、なんらかの答えが用意されているわけではありません。

しいて言えば、第1話「魔王」の中で、超能力兄弟の兄・安藤さんが繰り返す、「考えろ、考えろ」という言葉が、主張らしい主張でしょうか。安藤さんは、最近若者たちに人気の、小さな野党の党首・犬養と、ムッソリーニとの類似点に気がつきます。そして、犬養に簡単に踊らされていく大衆に危機感を覚え、犬養をとめなければならない、と、考えるようになります。

安藤さんは、政治家でも、社会運動家でもないので、本来なら犬養と対決しなければならない立場にはいません。ごく普通の、善良で不器用な若いサラリーマンです。ただ、いわゆる衆愚(この言葉は私は嫌いですが・・・)になりきれなかった事、そして、他人に自分の思ったとおりの言葉を言わせることができる「腹話術」という能力を持ってしまった事で、犬養に敵対する事になってしまいます。しかし、この「腹話術」は、30m以内の範囲にいる、見える人にしか使えないという、かなりしょぼいものなので・・・。

第2話の「呼吸」は、「魔王」の5年後の物語です。世間では憲法改正の国民投票が行われようとしており、安藤さんの弟の妻・詩織ちゃんの視点でその5年後の日本が描かれます。安藤さんの弟、潤也君にも超能力が現れています。こちらはさらにしょぼくて、なんと「じゃんけんに負けない能力」。正確には「十分の一以下の確率なら、賭けには負けない能力」なのですが、それでもやっぱり、小説の中の超能力としては、かなりしょぼいですよね。でも、潤也君もやはり衆愚にはなりきれず、そのしょぼい能力を利用して、何かをしようとするのです。

結局、目に見えない大きな力で歴史や、大衆が動いていくとき、市井の一個人に、いったい何が出来るのか、という事を考えさせられるストーリーになっています。「スカートを直す」のエピソードが印象的でした。
大きな洪水は止められなくても、でも、その中でも大事な事は忘れない
ラストが好きです。物足りないと思う人もいるような気がしますが、これ以上書けば、政治的な主張をしなければならなくなり、エンターテイメントとしてはダメになってしまうと思います。ここしかない、というピンポイントで、物語をしめた伊坂さん、うまい!

テンポのいい会話、しょぼすぎる超能力、ちらちらと登場する他の作品のエッセンス「グラスホッパー」「長身の調査員」など、クスッと笑える場面も満載で、いつもの伊坂節もちゃんと楽しめました。

こういう本が読みたかった。と、思った一冊。
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| あ行(伊坂幸太郎) | 00:09 | - | - |
■ グラスホッパー 伊坂幸太郎 
4048735470グラスホッパー
伊坂 幸太郎
角川書店 2004-07-31

by G-Tools

ネタバレ注意!

あれ?わたし、まだ読んでなかったんだ・・・の、「グラスホッパー」。

何人かの主要人物がいて、それぞれの物語があって、どこかでつながっていく。形式としては、伊坂さんらしい小説です。

たくさんの殺し屋が登場します。一家皆殺しが得意なナイフの殺し屋・蝉は、「俺は自由だ」ということにこだわり続け、脅しをかけて人を自殺させる「自殺屋」・鯨は、「人はいつもみんな死にたがっている」と主張します。道路や線路に人を押して殺す「押し屋」・槿は、自分の仕事に誇りと自信を持っています。みなさんどこかシュールです。(個人的には鯨のキャラが好きでした。)

そこに絡んでくるのが、たぶん主人公・鈴木です。事故で死んだ妻の復讐を果たそうと、非合法の仕事をしているとわかっていて、加害者の父親が経営する会社「令嬢」に契約社員としてもぐりこんだ、真面目でお人よしの一般人。妻を亡くした痛手から立ち直れなかった彼が、殺し屋さんたちとちょっとずつ関わって、なんとか無傷で表社会に帰還し、最後には「生きようと」思うようになる。読後感は悪くありません。

それでも・・・この作品には苦言を呈したい気がします・・・。言っておきますが、私は、伊坂幸太郎ファンです。伊坂作品の大部分が、本当に好きですよ。でもね・・・。

まず殺害シーンには、不必要なほどリアリティがあるのに、犯罪小説としては致命的なほどに、ご都合的主義すぎる。物語の中で非常に重要な事件のいくつかがが「偶然」で処理されるし、一番の悪役は何の脈絡もなく死ぬし、物語の最後では、後片付けの雑さが目に余ります。

伊坂流ファンタジーとして読もうとすると、登場人物が重くて暗い。わざわざ、三人の殺し屋の話を、別々の流れにする必要があったのでしょうか?それが、「伊坂スタイル」とはいえ、それが繋がっていく「伊坂マジック」は、他の作品に比べると、不発に終わっているような気がするのです。

鈴木の話を軸にして、三人は脇役(あるいは別の物語の主役)にして、奇をてらわない小説にしたほうが、読みやすく、読後感のいいものになったのではないでしょうか?鈴木と亡き妻の物語はなかなか感動的ですし、伊坂さんの魅力であるウィットに富んだ会話も、鈴木を中心に、楽しめましたから。

この作品は、伊坂さんのほかの作品に比べると、イマイチな感じ。私が運命論者ではないどころか、アンチ運命論者なので、「神のレシピ」という言葉に、ちょっと引き気味だからかもしれません。最初はあっと驚かされた、伊坂さんの手法を、読みなれてきたからかもしれません。「ラッシュライフ」を思い出しました。伊坂作品で、私が唯一、好きじゃなかった作品です。(でも、WEB上での評価は高いんですよね・・・)。
| あ行(伊坂幸太郎) | 23:59 | - | - |
● 死神の精度 伊坂幸太郎 
4163239804死神の精度
伊坂 幸太郎
文藝春秋 2005-06-28

by G-Tools

連作短編集。読みやすいけれど、軽い本ではありません。なにせテーマは「死」で、主人公は「死神」ですから。

今回もキャラクターが面白いです。主役の死神・千葉は黒いマントも着ていないし、鎌も持っていません。ごく普通の人間の姿になりすまし、音楽をこよなく愛しています。人間界の言葉や常識にうとくて、人と会話がかみ合わず「おもしろい人」だと思われてしまいます。(このかみ合わない会話がまた面白い!)本人としては真面目なつもりなので、「おもしろい」と言われると、不本意だ、と、思います。千葉は、そんな“天然”系の憎めない死神なんです。

死神の仕事は、不慮の事故などで死ぬかもしれない人に関して、死ぬべきか、生かすべきか、「可」「見送り」の書類を出し、「可」を出した場合には、相手の死を見届けるというものです。第1話「死神の精度」で、主人公の死神・千葉は、1人の女性の死に関して、彼女の歌手としての将来性にかけて「見送り」の書類を出します。この段階で思ったんです。ずっとこんな風に、死神が人間に同情して、「見送り」にする、単なるハートウォーミング小説だったら、嫌だな、って。

でも、そうはなりませんでした。第2話目から第5話目までで、やはり彼は死神であって、人間とは違う視点を持っている事が描かれていきます。人間と同じ感覚や感情はもたないし、生死に対する考えも根本的に違う。まじめに仕事をして、容赦なく「可」の書類を書き、死を見届けて去っていく。すべての事態を淡々と見つめ、淡々と受け止め、音楽だけを愛して生きています。

でも。それでも。はっきりと書かれてはいないけれど、彼は人間が心の底では好きなんだと思います。最終的には死なせる事になる相手に対してでも、彼の視線が温かいような気がするのです。音楽を愛する人に、悪い人はいない・・・というのは、私の偏見でしょうけれど。だから、読みやすくて、素敵な本でした。

最終話「死神対老女」が一番好きです。やられましたねー。本当によかった。(次に好きなのは、第四話「恋愛と死神」)伊坂さんらしさが出ていました。あー!つながった!っていう、あの快感です。でも、これまでのほかの作品に比べると、そのあたりはちょっと弱いかな〜。

ファンの方たちは、この本でぜひ直木賞を!と、思っておられるようですね。私もその可能性は否定しません。伊坂さんはいい加減に直木賞を取ってもいい頃です。でも、作品だけを比べれば・・・。「チルドレン」で取れなくて、これで取れちゃったら、納得できないかも、というのが本心。
| あ行(伊坂幸太郎) | 03:17 | - | - |
● 陽気なギャングが地球を回す 伊阪幸太郎 
4396207557陽気なギャングが地球を回す
伊坂 幸太郎
祥伝社 2003-02

by G-Tools

ここに日記を書くたびに、「ああ、私ったらまた同じ言葉を使っている…」と、自分のボキャブラリーのなさにうんざりしている私ですが、この言葉は最近あまり使っていません。この本は、とても「痛快」な本です。

4人の銀行強盗が逃走中に、同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に、お金を横取りされます。4人は、現金奪還のために動きはじめます。ストーリーはとにかく痛快で、手放しで面白い!

キャラクターも個性的です。4人組は、人間嘘発見器のリーダー、動物愛好家のスリ、演説好きの大法螺吹き、そして正確な体内時計をもつ運転手。みんな超個性的で、全然違う価値観の持ち主で、なのに非常に仲が良い。彼らのおしゃべりも笑えます。

それに、本の小細工といいますか、前書きにあたる部分の文章や、章タイトルの後に小さい文字で書いてある文章も、シニカルでツボでした。

映画化あるいは、2時間ドラマ化、してくれないかなあ。と、配役まで考えてしまいました(笑。
| あ行(伊坂幸太郎) | 23:32 | - | - |
● アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎 
4488017002アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎
東京創元社 2003-11-20

by G-Tools

壮絶に面白かった・・・。さすが伊坂幸太郎さん!

初対面の美青年に「広辞苑を盗みに行こう」と誘われる、という最初の事件によって、ぐっと本に引き込まれ。例によって例のごとく、完全にミスリードされ、最後には、あっと驚いてしまいました。それに、構成の妙といいますか、バラバラだったパーツが収束して、謎が解けていく快感は、期待通りです。

それに、この作品の魅力はなんと言っても、テンポのいい気のきいた文章。会話の面白さには定評がある伊阪さんですが、この本ではその魅力が全開な上に、交互に語り手をつとめる「僕」と「わたし」の一人称の地の文が、もう本当に面白い。2人とも、特に変わった性格というわけでも、特に面白い思考回路の持ち主というわけではないのですが。普通の人の考えている事でも、伊坂さんが書くとなんでこんなにも面白いんでしょうか。

この本のテーマが何なのかは、読む人それぞれだと思うんです。テーマとか深く考えないで、面白く読めればそれでいい本だとも思います。でも1つだけ。

ブータンから来た、留学生から見た、私たちの国日本は、どんな国だったのでしょうか?それを考えると、なんだか悲しくなります。
| あ行(伊坂幸太郎) | 16:05 | - | - |
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