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▲ 思いわずらうことなく愉しく生きよ 江國香織
思いわずらうことなく愉しく生きよ思いわずらうことなく愉しく生きよ
江國 香織

光文社 2004-06-19

強気な恋愛ばかり繰り返す34歳の次女・治子は代々木公園の見えるマンションで同棲中。阿佐ヶ谷のアパートに住み、自動車教習所の事務をしている29歳の三女・育子は、恋愛なんて信じていない。理解できる他人とのつながりは友情と信頼、肉体関係だけ。36歳の長女麻子は、「理由もなく暴力をふるうわけではない夫」と結婚して7年になる。DV問題も絡めて、三姉妹の異なる恋愛のあり方を独特の文体で綴る恋愛小説。
amazon 内容紹介より

「思いわずらうことなく愉しく生きよ」というタイトルは、3姉妹の家の家訓です。そして、3姉妹は、自分たちの事を「わたしたちって、のびやかすぎるのよねー。」などと言って笑いあったりしています。でも、3人が全然のびやかにも、心から愉しそうにも見えないところが、痛々しい本でした。

本当にその家訓を実践する家庭で育ったら、麻子は暴力をふるう夫との生活に何年も執着することなんてなかったはずです。治子も、いざという時にだけその行動力を発揮して、頼られるばかりの女になんて、ならなかったはずです。育子の「天使のよう」と評されている、健全で博愛精神に満ちているけれど非常識な言動も、それ自体は悪くないけど、彼女自身にとっては、自分は普通ではない、という息苦しさにつながってきたように見えます。両親の離婚が、そのころにはもう大人になっていた娘たちの人格形成にも、なんらかの影響を与えたのかなあ?それは、ちょっと、考え方に無理があるかな〜。この家訓を実践するのは、意外と難しいという事でしょうか。

でも、3姉妹は仲が良さそうで、それぞれを思い合っていて、羨ましいくらいです。姉妹が欲しかったなあと思いました。とにかく、私はずっと、麻子が夫と別れ、治子が優しいだけのヒモ男と別れ、育子がちゃんとした恋愛をできるようになって欲しい、と、思い続けて読んでいたので、そういう意味ではパーフェクトなハッピーエンドでした。

わたしは初期の江國さんの作品に、好きなものがけっこうあります。あのころの江國作品の世界の繊細さや、脆弱さ、現実からふわっと浮き上がってしまったような独特の孤独感などが、最近の作品からは感じられなくてちょっと淋しいです。3姉妹全員を主人公にすることで、作品に「神の視点」をもたらすより、それぞれを主役に心情描写中心で、リアリティのない、3つの作品を描いたほうが良かったんじゃないかな・・・と、ちょっと思ってしまいました。誰を主人公にしても、「江國さんらしく」なったと思うんだけどなあ。
| あ行(江國香織) | 14:28 | - | - |
号泣する準備はできていた 江國香織
4103808063号泣する準備はできていた
江國 香織
新潮社 2003-11-19

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ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。まず、最初に謝っちゃいます。この本のファンの方は、この先を読まないほうが賢明です。

252ページの短編集。222ペーシ目で、ヴァイオリンケースが登場したところで初めて「あ、これ、再読じゃん」と気がついた。でも、その短編も、他の短編も、それ以外の記憶は一切よみがえらなかった。

そして、今。昨日読んだこの本の、感想を書こうとして、すでにほとんど忘れている事に気がついた・・・。とにかく、恋が終わるばっかりの暗い本だったことは覚えている。それから、短編のタイトルに、いくつか印象的なものがあった。あとは・・・なんだったっけ?私の記憶力に問題があるのだ、と誰かに言われれば、自覚があるだけに返す言葉がないけど。それにしてもやっぱり・・・この本は、つまらなかったんだと思う。ああ、言っちゃった。

江國香織さんの本には、好きなものもたくさんあるのに、時々、わたし的大ハズレがある。これは、そのくちですね。印象が薄すぎて、欠点も思い浮かばない。なんでよりによってこの本が直木賞?謎!

あ、「好きなもの」各種は、今年読んだわけじゃないので、このブログに感想はありません。でも、そのうち再読してUPしたいと思います。どっちかっていうと、江國さんは、好きな作家さんなんです。
| あ行(江國香織) | 12:02 | - | - |
● すきまのおともだちたち 江國香織
4592750101すきまのおともだちたち
江國 香織
白泉社 2005-06

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「すきま」にふと落ちたときにだけ会える女の子と、私の、友情の物語。過去を積み重ねていくのに、成長することのない少女の、「過去の思い出って淋しいのね」という言葉は印象的でした。帯に書かれるだけある!

「すきま」に落ちてしまう人の物語は、よくありますが、たいてい「すきま」に落ちていない現実の時間についても、多くが語られ、主人公が「すきま」で起きた出来事に、どんな影響を受けたか、という事がテーマになってくる。でも、この本は、そこにはほとんどページがさかれていない。「すきま」の世界の魅力、「すきま」で暮らす少女の魅力、それをメインに成立している本。説教くささが全くなくて、そこがとても素敵。

歩いていったほうが近い海に、街をぐるっとまわる鉄道に乗っていく、というエピソードが好き。それから「お皿」というキャラクターがすごく好きでした。お皿を糊付けする女の子のシーンも好きだなあ。
捨てられずに傷がふえていくことは、お皿に言わせると愛されたしるし、お皿の名誉なんですって
江國さんの作品では、恋愛小説も好きですが、一番好きなのは「ホテルカクタス」です。この本もその次ぐらいに好きかも。
| あ行(江國香織) | 10:59 | - | - |
■ 間宮兄弟 江國香織
4093874999間宮兄弟
江國 香織
小学館 2004-09-29

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感想書くの、難しいなあ・・・この本。

生真面目で、多趣味で、人に優しく、努力家。でも、外見に恵まれず、性格も要領が悪く、おたくっぽい雰囲気もあってもてない。年齢=彼女いない歴で、「ありえない」男兄弟のむさくるしい二人暮し。2人はたくさんの思い出を共有し、2人にしか通じないたくさんの言葉や気持ちがあり、都会のとあるマンションで、静かで満ち足りたときを送っています。なんでも、「女の尻を追いかけるのをやめたら、平安が訪れた」んだそうです。

しかしこの夏、二人にちょっとした出会いがあります。二人が企画したカレーパーティーをきっかけに、何人かの女性に出会い、二人はそれぞれに恋をするのです。

ここからは少しネタバレですが。

なんだかんだいって、二人のこの夏の恋が成就する事はありません。二人がそれぞれに失恋し、ひとつの不倫が終わり、ひとつの夫婦が離婚し、結局恋愛的にハッピーエンドなことは何一つない恋愛小説です。(個人的には弟さんの恋心が切なかったです・・・)それなのに、読後感がとても爽やかなのはなぜかな?間宮兄弟はともかく、周りの女性たちが、間宮兄弟から癒しや慰めを得て、それぞれに成長していったからかもしれません。

でもやっぱり、間宮兄弟はもてないだろうなあ、というのが、結論(笑。女性たちが間宮兄弟に好感を持っても、恋愛感情にはいたらない理由がわかる気がしてしまいます。おたくっぽい男の二人暮らしは、気持ち悪い・・・と思うけれど、別にそういうことや、外見のせいだけで、もてないわけじゃないよね。性格もすごくいいんだしね。

二人は二人とも、自分の居心地のいい世界に、非常に満足しているんですよね。子供の頃から慣れ親しんだ、実家的な空間に。恋人が欲しい、妻ができたら大事にする、なんて、考えてはいるんだけど、女性と新しく何かを作っていこうとか、彼女たちの世界に飛び込んでいくような勇気はなくて。あくまでも、自分たちの完全な世界に、それを壊さないような、理想の女性がすべりこんできてくれないかなあ、と、心のどこかで待っている。これだと・・・なかなか普通の恋愛するのは難しいよね。たとえば幼馴染の彼らをよく理解している女の子がいたり、彼らに恋をする母性本能の豊かな女性が突如現れるというような、何か運命的な事がない限り。

それでも、彼らが彼ら二人で、自分たちの温かい世界でずっと暮らしていくのなら、やっぱりそれも「幸せ」の1つの形かも。江國さんらしく、日常生活のこまごました事を丁寧に描いていて、どこか懐かしい感じのする、いいお話でした。間宮兄弟もそれぞれに、ほんっとに人柄が良くて、爽やかな読後感でした。そんな感想です。
| あ行(江國香織) | 10:16 | - | - |
▲ 東京タワー 江國香織 
4838713177東京タワー
江國 香織
マガジンハウス 2001-12

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不倫小説は苦手・・・。でも、不倫の小説だとわかっていて、それでも読んでしまうくらいには、江國香織さんという人は気になる作家さんです。

なんで不倫小説が苦手かというと、別に個人的に何か苦い思い出があるとかいうことではなくて、先が読みやすいから小説としてつまらないから。しかも、後味が悪いものが多い。

でも、この、「東京タワー」は、後味が悪くなかった。っていうより、「後味」にたどりついていない感じ。透と耕二の二人の物語は、まだ全然終わっていなくて、ずいぶんたくさんの「あえて語られないその後」が、読者の想像力にゆだねられている気がします。続編が読みたいような気もするけど・・・読みたくないような気もします。

不思議だったのは、同じ女性であり、年齢的にも近いはずの、喜美子さんや詩史さんに、私は全然感情移入できなかったこと。喜美子さんのような女性はたくさん知っているけど、自分とは違う生き物のようにいつも思う。そして、詩史さんのような女性というのは・・・たぶん男性の思い込みの中にしかいないような気がする・・・。

逆に、透と耕二の気持ちは、よくわかりました。つまり・・・遠くなってはしまったけれど、私には19歳だったことがある。でも、大人の女性だったことはない。ってことかな?精神年齢がまだまだ低いようです。
| あ行(江國香織) | 22:08 | - | - |
赤い長靴 江國香織 
4163236104赤い長靴
江國 香織
文藝春秋 2005-01-15

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酷評注意!

タイトルの「赤い長靴」は、夫婦の齟齬の象徴です。2人でいるのに、いつも寂しい。これはそういう本です。

日和子と逍三は、子供のいない、結婚10年目の夫婦。他の人といるときは無口なのに、夫といるときだけは、一生懸命くだらないことでも話そうとしてしまう日和子。日和子の話をほとんど聞いていない夫・逍三。日和子は、不満も怒りも通り越して諦めの境地に達し、それでも間違いなく夫を愛している。逍三も、日和子を重荷に思いつつ、それでもおそらく彼女を愛しているんだろう。そんな2人の生活を、淡々と描いています。

私自身に結婚の経験がないので、一瞬「こんな結婚生活もあるのかぁ」「結婚10年ってこんなものかぁ」と、思いそうでしたけど、それは違うような気がします。これに近い結婚生活もあって、そういう人たちにこの本は受けるのかもしれないけど、そういう読み方だと、この本って退屈じゃありませんか?私は、これは2人の結婚生活を描いたというよりは、日和子さんの心の中を覗き込む、純文学かあるいは、サイコホラーなんじゃないかと思います。

日和子さんは、かなりデフォルメされた人格で、実際にこんな人がいたら、ほとんど病気です。夫依存症。言葉が通じない、話を聞いていない、自分から話すこともほとんどない。それでも彼以外の人はみんな恐い。だから、それでも彼を愛していると自分に言い聞かせ続け、彼に尽くし続け、縛られる心。私なら耐えられません。

逍三さんはいつの時代の人だって言うくらい、「フロ・メシ・ネル」の世界の人で、妻を自分の所有物のように思っている、付き合いづらい夫です。でも彼が、日和子を重荷に感じてしまう気持ちはわかるような気がしてしまいました。少なくとも、日和子の気持ちよりは。

それから。そんな風に私なりに読んでも、ストーリーはやっぱり退屈でした…。
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