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■ 猫島ハウスの騒動 若竹七海
猫島ハウスの騒動猫島ハウスの騒動
若竹 七海

光文社 2006-07-21

若竹七海さんは常々コージー・ミステリィが好きだとおっしゃってますよねー。この本は、うん、たしかにコージーでした。コージーと、日常の謎系の違いが・・・よくわからないんですけど。えーと、コージーは日常の穏やかな雰囲気を出しつつ、謎は日常的とは限らない、のかな?日常の謎系は、謎自体が日常的?うーん、難しい(笑)

ミステリィの内訳って、ファン(っていうかぶっちゃけヲタ)が熱くなる分野で、最近でも「容疑者Xの献身」は本格ミステリィかどうか、がWeb上を飛び出すほどの騒動になっていましたが、でもこれだけほのぼのした本だと、この本が「コージー・ミステリィ」だろうが「日常の謎系」だろうが、どちらでもいいわ〜という気になりますね。

鎌倉と藤沢の間辺りにある観光都市、葉崎市を舞台にしたシリーズの、待望の新作。シリーズキャラクターは猫アレルギーの駒持警部補なのに、今回の作品の舞台は、人間より猫のほうが多い、猫好きでないと暮らせない、猫の楽園「猫島」という設定です。この若竹さんの発想だけでもう、笑ってしまいました。猫好きにとっては、究極の癒し系観光地であるこの島で、奇妙な出来事が次々に起こり、ついに、死体(人間)が発見されます。

描き方によっては不気味にも、おどろおどろしくもなれるはずの、奇妙な出来事、殺人、その真相。この舞台がもし、瀬戸内あたりの孤島だったりすれば、古典的な和風本格として成立してしまいますよね。最初の事件は、ナイフのささった猫の剥製が発見される、というものですし、島の土地はほとんどが神社の持ち物で、島から出たことのない神主さんが島の実権を握っているなんていう背景といい、金田一シリーズのようにもなれそうです。それをあくまでものどかに、とことんユーモラスに、描いてしまう。若竹さん、さすが、上手い!

数々の伏線がきちんと生きて、ラストにむけて収束していく、構成の上手さ。どこかにいそうでどこにもいないような、個性的な登場人物たち。猫島の雰囲気に癒され、登場人物ののびのびした会話が楽しく、展開も面白く、心地よい読書でした。

ただ、残された謎が・・・めっちゃ、気になる。響子と虎鉄、修学旅行で何があったのよ〜!!

葉崎市を舞台にした作品には、他に同シリーズの「ヴィラ・マグノリアの殺人」「古書店アゼリアの死体」、青春小説の「クール・キャンディ」があり、その主要キャラクターが、ちょこちょこ顔を出してくれるのも、ファンには嬉しかったです。しかも、時間がたっているので、それぞれ成長していたりして。私が気がつかなかったリンクもたくさんありそうです。猫たちのほうは、8割は名前に出典があるそうですが、記憶力にかなりの問題がある私には、さっぱり分かりませんでした。
| わ行(若竹七海) | 10:37 | - | - |
★ 火天風神 若竹七海
4101490228火天風神
若竹 七海
新潮社 2000-04

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戦後最大級の台風が、三浦半島に上陸します。ちょうどその日に、とあるリゾートマンションに宿泊していた人々を、嫌というほどの災難が襲います。火事・事故・殺人などなどなどなど。外は嵐。マンションは手抜き工事の欠陥住宅。管理人はアル中。

不倫中のカップル、ここに耳の聞こえない少女、登校拒否の少年、家出してきた主婦、大学の映画サークルの仲間たち、といった、背景のさまざまな人々が、この危機をどう乗り切るか。そしてそのとき、どんな本性を表すのか。一気に読ませるパニックサスペンスです。

若竹七海さんと言えば、人間の内側とか、心の醜いところを、鋭く描いてしまう作家さんですが、この本ではそっちのほうは控えめです。どちらかというと、スピード感重視。でも、それでも、人間の醜いところと、強いところ、きちんと描いています。さすが!特に、子供たちのがんばりは感動的です。

何年ぶりだろう…。再読なんですが、やっぱりちゃんと面白かった。若竹七海さん、初期の秀作です。他の若竹七海作品とは雰囲気も、しかけも違うので、代表作にはならないと思うし、文庫化もとても遅かった(文庫版のあとがきによると、文庫に入るまでに6年もかかってるらしい。)。でも、ミステリーが6年たってもまだ古くなってなくて、文庫入りするんだから、それだけレベルの高い作品だということですよね。
| わ行(若竹七海) | 11:51 | - | - |
★ 依頼人は死んだ 若竹七海
4163192301依頼人は死んだ
若竹 七海
文芸春秋 2000-05

by G-Tools

私が、好きな探偵ベスト3を上げろと言われたら、絶対入ってしまう、女探偵葉村晶の短編小説集。この本では、自殺の理由をさぐってくれ、という依頼が多いです。

彼女のセールスポイントは、自称「貧乏を楽しめること、口が堅いこと、体力があること」なんだそうです。色んな仕事を転々として、様々な業界の裏側に通じ、人脈も人を見る目もある彼女は、とても有能です。しかも、仕事には絶対手を抜きません。愛想も色気もない人ですが、心底から、彼女に友情を抱いてくれる人が、たくさんいて、彼女のほうも、ちゃんと彼らを大事にしています。かっこいいよぅ。

日常生活の裏側に潜む落とし穴、悪意、恨み、嫉妬、罪悪感。自殺や殺人の理由を暴くという事は、それを見るということで、葉村晶の仕事はいつも、精神的にハードです。真相はいつも、切なく、悲しく、鳥肌が立つような恐ろしさがあります。

連作短編集で、全編をつらぬいている1つのストーリーがあります。その辺りの構成も面白かったです。やっぱり、若竹七海さん大好き。
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