若竹七海さんは常々コージー・ミステリィが好きだとおっしゃってますよねー。この本は、うん、たしかにコージーでした。コージーと、日常の謎系の違いが・・・よくわからないんですけど。えーと、コージーは日常の穏やかな雰囲気を出しつつ、謎は日常的とは限らない、のかな?日常の謎系は、謎自体が日常的?うーん、難しい(笑)
ミステリィの内訳って、ファン(っていうかぶっちゃけヲタ)が熱くなる分野で、最近でも「容疑者Xの献身」は本格ミステリィかどうか、がWeb上を飛び出すほどの騒動になっていましたが、でもこれだけほのぼのした本だと、この本が「コージー・ミステリィ」だろうが「日常の謎系」だろうが、どちらでもいいわ〜という気になりますね。
鎌倉と藤沢の間辺りにある観光都市、葉崎市を舞台にしたシリーズの、待望の新作。シリーズキャラクターは猫アレルギーの駒持警部補なのに、今回の作品の舞台は、人間より猫のほうが多い、猫好きでないと暮らせない、猫の楽園「猫島」という設定です。この若竹さんの発想だけでもう、笑ってしまいました。猫好きにとっては、究極の癒し系観光地であるこの島で、奇妙な出来事が次々に起こり、ついに、死体(人間)が発見されます。
描き方によっては不気味にも、おどろおどろしくもなれるはずの、奇妙な出来事、殺人、その真相。この舞台がもし、瀬戸内あたりの孤島だったりすれば、古典的な和風本格として成立してしまいますよね。最初の事件は、ナイフのささった猫の剥製が発見される、というものですし、島の土地はほとんどが神社の持ち物で、島から出たことのない神主さんが島の実権を握っているなんていう背景といい、金田一シリーズのようにもなれそうです。それをあくまでものどかに、とことんユーモラスに、描いてしまう。若竹さん、さすが、上手い!
数々の伏線がきちんと生きて、ラストにむけて収束していく、構成の上手さ。どこかにいそうでどこにもいないような、個性的な登場人物たち。猫島の雰囲気に癒され、登場人物ののびのびした会話が楽しく、展開も面白く、心地よい読書でした。
ただ、残された謎が・・・めっちゃ、気になる。響子と虎鉄、修学旅行で何があったのよ〜!!
葉崎市を舞台にした作品には、他に同シリーズの「ヴィラ・マグノリアの殺人」「古書店アゼリアの死体」、青春小説の「クール・キャンディ」があり、その主要キャラクターが、ちょこちょこ顔を出してくれるのも、ファンには嬉しかったです。しかも、時間がたっているので、それぞれ成長していたりして。私が気がつかなかったリンクもたくさんありそうです。猫たちのほうは、8割は名前に出典があるそうですが、記憶力にかなりの問題がある私には、さっぱり分かりませんでした。