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★ DIVE!! 森絵都
DIVE!!〈1〉前宙返り3回半抱え型DIVE!!〈1〉前宙返り3回半抱え型
森 絵都

講談社 2000-04

DIVE!!〈2〉スワンダイブDIVE!!〈2〉スワンダイブ
森 絵都

講談社 2000-12

DIVE!!〈3〉SSスペシャル’99DIVE!!〈3〉SSスペシャル’99
森 絵都

講談社 2001-07

DIVE!!〈4〉コンクリート・ドラゴンDIVE!!〈4〉コンクリート・ドラゴン
森 絵都

講談社 2002-08

飛込み競技でオリンピックを目指す少年たちの、熱いスポ根小説でありながら、文句なしに面白い人間ドラマであり、繊細な青春小説です。いまさら帯の引用とか、あらすじとか、いらないですよね?

私の大好きな本だから、本当ならちゃんとした紹介をして、書評を書けたらいいな、って思ったんです。でも、文庫版についた解説を立ち読みして、それはあきらめました。あさのあつこさんと、佐藤多佳子さんという、児童文学の世界では森さんと並ぶ才能と人気の持ち主が書いているにも関わらず、失礼ながら、この解説が、全然おもしろくないんですよ。(<失礼・・・。)

お2人が、「DIVE!!」という本を絶賛している部分は、熱い文章で、非常に共感したんです。お2人も絶賛なら、この本は本当に本当にいい本なんだと、嬉しくなったんです。でも、まじめに解説したり説明したりしている部分は、本当におもしろくない。(ああ、わたしったら本当に失礼だなあ(笑)。でもお2人の小説は、本当に面白いので大好きなんですよ。あさのあつこさん、佐藤多佳子さん、お2人とものファンです。)

結局、この本には、解説なんて不要なんです。問答無用で、面白いの。

基本的には、ストーリーといいキャラの造形といい、スポ根少年マンガそのものなので、とてもわかりやすいんですよね。それぞれに異なった才能を持つライバルがいて、彼らには遠く及ばないけれど、いい仲間である凡人がいる。それぞれの才能に嫉妬しあったり、ライバルとも友情を深めたり、恋を犠牲にしたりしながら、ひたすら努力し上を目指す。ガンコ親父に反抗するのも、美人コーチの登場も、お約束です。基本的にはシリアスですが、文章もストーリーもテンポが良くて読みやすいし、挿入されるギャグや、少年らしいおバカなエピソードには笑えます。

だけど、著者が女性だからなのか、ところどころぬ差し挟まれるドキッとさせられるような鋭い一文があって、そこには「宇宙の真理」とか「人生観」とか、そういう言葉を使いたくなるような重みがあって、これが単なるスポ根少年マンガのノベライズではなく、森文学なんだなあと、思い知らされます。

超個人的でミーハーな事を言いますが、身近にいたら、私が憧れるのは知季だと思います。「失恋に失恋しちゃう」知季には、母性本能刺激されまくりです。絶対好きになって、ものすごく応援すると思う。でも、実際につきあっちゃうのは、要一タイプなんだよなあ。プライドが高くて、要領が悪くて、実はメンタルな面では一番弱くて、肝心なところで無理をする人。飛沫とは、恭子さんもセットで、お友達になりたいですね。

私は、このシリーズが、いまのところ森さんの最高傑作だと思っています。文句のつけどころがない!いや、あるのかもしれないけど、別に私は、そんなのわからなくていい(笑)。この本が大好きです。

なんといっても、第4部が秀逸。それまでの3部は、主役の3人それぞれの視点からそれぞれの物語が語られましたが、最終章は、彼らだけではなく、彼らの周囲の様々な人々の思いが描かれます。超脇役かと思っていた何人かの思いにも、きっちりスポットライトがあてられる。この章がもしも、こういう形ではなかったら、この作品をここまで好きにはならなかったでしょう。ラストは綺麗にまとまりすぎなんですが、それも含めて、私は好き。

直木賞もとれたことだし。森さん、また、こういうの書いてくれないかなあ。

で、これはちょっとした脱線なんですけど。この本の少年たちの、化粧に関する考察の鋭さは、なんなんでしょうね。天真爛漫な中学生のはずの知季でさえ、「放課後の練習でくたくたになった中学生を待たせても化粧の手はぬかない。ここだ、この女の信用ならないのはこういうところだ。」なんて言ってます。ウォータープルーフのアイラインだの、マスカラだのという言葉を、恋愛には比較的縁遠い、体育会系の少年たちに、いったい誰が教えたのか?母親?謎です。
| ま行(森絵都) | 21:30 | - | - |
★ カラフル 森絵都
カラフルカラフル
森 絵都

理論社 1998-07

再読。

死んだはずの「ぼく」の魂が、もう一度生まれ変わるために、人間界で修行をさせられることになりました。プラプラという名の、飄々とした天使のガイドのもと、「ぼく」は、自殺した「小林真」という少年の体をかりて、「小林真」として暮らし始めます。

自殺するくらいですから、「小林真」の生活には、嫌なこと、辛い事がたくさんあります。家族それぞれとの確執、身長コンプレックス、いじめ、自分の進路。「ぼく」はその一つ一つに向き合い、解決していかなければなりません。逃げられないのです。だってこれは、リタイアは許されない、修行なのですから。

もちろんこの修行は人生そのものの暗示であって、この本は非常にメッセージ性の強いタイプの児童文学です。それでも、テンポの良い展開で物語を楽しく読めて、キャラがたっていて面白くて、だから説教くささに嫌気がさしたりしない。そこが、森さんの上手さですよね。森さんの児童文学は、やっぱりいい!

この本は、わたしにとっての、初森作品でした。それまで森絵都という名前を聞いたこともなく、誰に薦められたわけでもなく、なにげなく手にとって、読んでみたら大好きな本だった。それで森さんのほかの作品も読んでみたら、やっぱり、どれも良かった。そんな風に、自分で発見した作家さんには、特別の思い入れがあるような気がします。
| ま行(森絵都) | 00:19 | - | - |
★ 宇宙のみなしご 森絵都
宇宙のみなしご宇宙のみなしご
森 絵都

講談社 1994-11

頭と体のつかいかたしだいで、
この世界はどんなに明るいものにもさみしいものにもなるのだ。
この本は大好きだ!森作品の中でも、上位に入ります。子供が読んで楽しいと思えて、登場人物の誰かに共感できて、感動もできる本だと思うから。児童文学なのに、説教臭くない。ここ、大事です。だから、大人が読んでも、素直に楽しい本です。

構成が本当に上手で、次々に事件が起き、飽きずに読ませてくれて、最後はきっちり感動でしめてくれます。文章もテンポがよく、ユーモアがあって、とても読みやすいです。主人公は、個性的な2人の姉弟、陽子とリン。いつも誰にも負けないという顔をして、好きな人とだけ仲良くしたい、陽子。穏やかで、優しくて、だれとでも仲良くできる、リン。正反対の性格の2人ですが、退屈が嫌いで、我慢の出来ないところは同じ。仲の良い2人の会話は、テンポがよくて楽しいです。

真夜中に他人の家の屋根に上ること。それは、子供の頃からずっと2人で遊んできた、陽子とリンの姉弟が、中学生になって始めた秘密の遊びです。この遊びを知った、陽子のクラスメイトで、リンと同じ陸上部の、七瀬という少女が、仲間入りしたいと言い出します。そして3人で屋根にのぼったところを、やはりクラスメイトのキオスクにみつかってしまい、彼も仲間に入ることになります。

クラスでは、内気で大人しいだけの少女だと思われている七瀬ですが、彼女には彼女の悩みがあります。いじめられっこでパシリのキオスクも、本当は変わりたいと思っています。陽子とリンを中心にした成長と友情の物語と、仲間2人の悩みの両方が、しっかり描かれていてすごいです。「いじめ」「仲間はずれ」「登校拒否」「孤独」「自殺未遂」。暗い言葉が容赦なく使われているのに、物語は終始明るくて、前向きな雰囲気で進み、爽やかです。

ラストの4人の決断が、とても好き。みんな本当に成長しました。この体験は4人とも忘れられないでしょうね。陽子の最後の一言「こんどは何して遊ぼうかな」も大好き。大人も子供も、とにかく読んで損はない本です。

個人的には、陽子とリンが、「七瀬が、走るのが好きだからではなくて、リン目当てで陸上部に入ったんだったら嫌だ」と思うシーンがとても印象に残っています。わたしも同じ事をおもったことが数え切れないくらいあるから。私は、陽子たちよりもっと年をくってから、友達の行動の多くが、男目当てや恋愛がらみであったことに、ある日突然、遅ればせながら気がついて、けっこうショックだったのです(笑)。そこにはとっても共感しました。

どうして、わたしがこの本が好きかって、やっぱり陽子に共感できるからだと思うんですよねー。もう、本当に、自分の事のようだよ。弟は全然リンのように可愛くないけどなっ(笑)。でも、私ってたぶん少数派よね(^_^;)。でも4人の中の誰かには、たくさんの人が、中学生の頃を思い出せば共感できると思います。

タイトル「宇宙のみなしご」については、ラスト近くに、実に感動的に語られます。あえて、引用はしません。

最近、森絵都作品は、入試に出るようになったので、私がバイトをしている塾でも教材に使われることがあります。でね、たとえばこういう物語のヤマである感動的な部分だけを抜き出して、「輝S箸呂匹譴。仰肖箸呂匹譴。」とか文法問題にされたりするの。まじで勘弁して欲しい。これをきっかけに、森作品を読むようになる子供たちが増えたら、嬉しいけど・・・。一番の感動シーンを問題文として先に読んでしまった子供たちは、この本をずっと読んできて、涙が出そうになる最高の瞬間に、「あ、あの問題だ」と、思うわけでしょう?そんなん、嫌ですよ〜。

というわけで、ネタバレを極力排除しようとした結果、あまり魅力の伝わらない感想文に(笑)・・・。本当にいい本なんですよ!
| ま行(森絵都) | 08:51 | - | - |
● ゴールド・フィッシュ 森絵都
ゴールド・フィッシュゴールド・フィッシュ
森 絵都

講談社 1991-11

「リズム」の続編で、中学3年生になったさゆきを描いています。

同じ女の子の中1と中3の書き分けが、自然に出来ているのがいいですね。この年代の女の子は成長するし、波は大きいし、外からは何もかもが変化していくように見える時期だけれど、核になっているものは変わらない。そこらへんがちゃんと伝わってくるのが、さすがだなあと思いました。それに、「リズム」では、真ちゃんとおばさんの登場シーンが多かったけど、こちらでは、テツとおじさんの登場シーンが多くて、2つあわせて1つの物語だな、と、思います。

でも、同じような長さなのに、「ゴールド・フィッシュ」のほうが、内容が濃い気がします。私は断然、こちらのほうが好きです。

受験生になったさゆきのまわりで、年上の姉や幼馴染は、次々に自分の夢を諦めていき、とうとう大好きな真ちゃんのバンドも解散してしまいます。さゆきはすっかり落ち込んでしまいます。

「ゴールド・フィッシュ」のメッセージは、「自分の夢を見つけろ、自分の人生をだれにもジャマされるな」ということです。真、さゆき、テツ、それぞれに、自分らしい夢をちゃんと見つけた、このラストは好きでした。特に、さゆきの出した答えが、すごくいいですね。

不器用な担任の大西先生とのシーンが好きです。大西先生を見る、さゆきの視線が温かい!本当にさゆきって、やさしくていい子だよなあ。それから、テツもいい!かっこよく、賢く、優しく成長しましたねー。ちなみに私なら、初恋の相手は、真ちゃんじゃなくて、テツですね。テツみたいな人いないかなあ(笑)。それにしても、幼馴染って、いいですね。

「リズム」「ゴールド・フィッシュ」のハードカバー版の装丁が、すごく素敵なんです。表紙も、内部の活字のデザインも。杉山佳奈代さんという方みたいです。
| ま行(森絵都) | 21:48 | - | - |
■ リズム 森絵都
リズムリズム
森 絵都

講談社 1991-06

森絵都さんのデビュー作です。主人公は、中学1年生のさゆき。森さんが描く、この年頃の少年少女が、私はやっぱり大好きです。

小学校を卒業して、中学生になったけど、ほとんどの友達が同じ学校に進学し、さゆきのダラダラした生活は何も変わらないはずでした。でも、第2の我が家だと思っていた、叔母さんの家は離婚でバラバラになってしまいそう。大好きな従兄妹の真ちゃんは、東京に行ってしまう。変わらないと思っていたものが、どんどん変わってしまう。さゆきの心も揺れます。

「周りの音が邪魔なら、自分で自分だけのリズムを打てばいい。それを大切にしていれば、自分は自分でいられるかもしれない。」

という、真ちゃんがさゆきに残したメッセージが素敵です。全体的に、優等生な正統派の児童文学で、子供向け丸出しでインパクトの弱い本なのですが、このメッセージがどんな人にとっても大切な、普遍性のあるメッセージなので、大人が読んでも、ちょっといい本だったな、と、思えます。今の中学生に読んで欲しい、とは、特に思いませんが、中学生のころの自分に読ませてみたいです。どんな感想を持つんだろう?

それにしても、森作品が、なんとなく優等生っぽくて、いい本だけどちょっとインパクトが弱い、っていうのは、デビュー作からそうだったんですね。「風に舞いあがるビニールシート」もそうですよね。もちろん今の私は、森作品はそういうものばかりじゃないってわかってるから、森ファンなんですけどね。

それから、時々すごく印象的な1文があって、一瞬ページを繰る手がとまり、深呼吸したくなるのも今と変わっていないです。上手く表現できないんだけど、この感じ、誰かわかってくれるかなあ・・・。もちろん、これはいい意味で、です。すごく好きな感じです。

直木賞受賞記念!というわけで、古い森作品の再読をすることにしました。最近の、世間ではやたら評価の高い2作品より、私はYA時代の森作品のほうが好きなので、いつかは再読したいと思っていたのです。・・・まだ、先回の直木賞の時に宣言した、東野作品の再読が半分しかすすんでないけど・・・。
| ま行(森絵都) | 19:47 | - | - |
● 風に舞いあがるビニールシート 森絵都
風に舞いあがるビニールシート風に舞いあがるビニールシート
森 絵都

文藝春秋 2006-05

愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。
大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。
△ 器を探して
有名なケーキ店の、オーナーパティシエであるヒロミの秘書として働く弥生。以前は自身も菓子職人を目指していたのですが、今ではすっかりヒロミの才能に心酔し、彼女の店を守るために奔走する毎日に満足しています。ただ、1つ問題があって、それは、弥生の恋愛に、ヒロミが嫉妬し露骨に邪魔をすることです。

この小説は、単に女性が「恋と仕事の間で揺れる」というような単純なものではありません。1人の人間の偉大な才能に、心が負けてしまったことで、歪んでいってしまう途上にある女性の物語です。この長さにしておくのは惜しいくらい深くも描ける題材。

というわけで、とても印象的でした。でも、オチをはっきりきっぱりつけて欲しいストーリーだったので、消化不良感が大きい作品でもありました。この先が気になる・・・。

□ 犬の散歩
行き場を無くした犬たちの里親を探すボランティア活動に生活を捧げ、犬たちの世話にかかる費用を稼ぐために、スナックでパートまでするようになった、主婦、恵利子の物語。

ボランティア活動にのめりこむ心理を、美化するでもなく、皮肉るでもなく、1人の女性の思いをありのままに描き、それだけにとどめている、そこに好感を持てた作品でした。

○ 守護神
とある大学の夜間部に、優をとれるレポートを代筆してくれる、ニシユキという人物がいる、という噂がある。どうしても4年で卒業したい、フリーター学生の祐介は、ワラにもすがる思いでニシユキを探しますが・・・。

ストーリーの展開が意外だし、会話も楽しいし、面白かったです。爽やかで、愛しい作品。祐介も、ニシユキも、大好きなキャラクターでした。特に、祐介の話を他にも読みたいなあ。超地味なストーリーになりそうですが、それでいいから。

△ 鐘の音
若いころ共に仏像修復の修行をしていた二人の男が、久しぶりに再会。二人にとって特別な、とある仏像の修復作業を回想します。仏像がらみのうんちくが、興味深かったです。取材が面白そう。

□ ジェネレーションX
高校時代の野球部の仲間と、草野球をするという約束を果たす、という、あらすじをちらっと聞いただけで、爽やかとしか言いようのないショートストーリー。タイトルロール前の小休止、といった感じで、肩の力を抜いて素直に楽しめました。ストーリーは単純なんですけど、構成が工夫されていて上手い。

○ 風に舞いあがるビニールシート
冒頭で、タイトル「風に舞いあがるビニールシート」について語られます。子供の頃公園に敷いたレインボーのシートを思い浮かべてしまった私は、とてもメルヘンチックな可愛いタイトルだと思いましたが、全然違いました。もっと必死で切実な意味が込められています。とても印象的でした。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で、現地採用の一般職員として働く里佳。東京で、主に事務仕事を行って、専門職員を補佐するのが仕事です。彼女は3年前、専門職員であるエドと離婚しました。七年間の結婚生活を通して、二人が共に過ごせたのは百日足らず。フィールド活動を重視し、常に世界中の危険地帯を飛び回るエドと、エドの安全と安定した生活を願う里佳は、生活も、考え方もすれ違い、結婚は失敗に終りました。しかし、憎しみあって別れたわけではありません。

物語は、エドがアフガンで殉職し、その死から3ヶ月たったところから始まります。里佳がこの悲しみから、どのように立ち直るのか。里佳の最後の決断は、予想通りの予定調和ではありますが、素敵です。

そして「エドが死の瞬間について感じたもの」について語る里佳の言葉が、とても森さんらしいと思いました。私が、まだ児童文学しか書いておられなかった頃の森さんを、大好きになった時の、あの感動が再び!と、いった感じでした。



「別冊文藝春秋」連載、もちろん「文藝春秋」発行。内容も、社会派のテーマをおりこみながら、人と人との触れ合いを描いた心温まるストーリーばかりで、直木賞候補にならないほうがおかしいという一冊。やっぱり狙って書いたのかなあ(笑)。個人的には、森絵都さんのYA作品のほうが好きですが、森さんが直木賞をとってくれれば、それはそれで嬉しいです。
| ま行(森絵都) | 10:00 | - | - |
▲ 屋久島ジュウソウ 森絵都
photo
屋久島ジュウソウ
森 絵都
集英社 2006-02

by G-Tools , 2006/05/08

注目作家の素顔が見える、初の旅エッセイ!
皆で縄文杉を見に行こう、と楽しいグループ旅行のつもりで訪れた屋久島。そのハードさにはまだ気づかずに…。にぎやか取材旅行記と、忘れがたい旅の思い出を綴った14編を収録。著者初の旅エッセイ集。
屋久島をグループ旅行だなんて、恩田陸さんの「黒と茶の幻想」を思い出さずにはいられません。しかし、森さん一行は、過去の謎について語り合う余裕なんてありません。想定外の本格登山に疲労困憊し、幻覚を見るメンバーまで出る始末。

とにかく森さんが、紀行エッセイにしては驚異的に正直なのが印象的でした。苦労の末に宮之浦岳の頂上に立ったときのことも、「『頂上からの眺め』にさほど感動しなかった」と、きっぱり。「『頂上からの眺め』と『頂上の少し手前からの眺め』とは、さほど変わりがないと思う」と、あっさり。あの有名な縄文杉を見ても、「私はその樹に生命力を感じなかった。とうに魂が離脱している感じ。抜け殻というか、屍というか。」と、ばっさり。素敵すぎます。

でもまあ、森さんは、エッセイストとしてよりは、小説家としてのほうが、わたしにとっては魅力的なようです。
| ま行(森絵都) | 23:57 | - | - |
■ アーモンド入りチョコレートのワルツ 森絵都 
4043791011アーモンド入りチョコレートのワルツ
森 絵都
角川書店 2005-06-25

by G-Tools

3つのピアノ曲をもとにした3つの短編。もともとは児童文学だったようですが、大人が読んでも、いい本です。文庫落ちした表紙、すごく素敵。好みだな。

森さんらしく、どれも、大人と子供の境界線上にいるような年頃の、すべての感情が増幅されてしまうような季節を、静かに描いています。

一番心に残ったのは、1作目の「子供は眠る」です。毎年、夏休みを、別荘で一緒にすごしてきた、仲の良いいとこたち。リーダーは、一番年長で、別荘の持ち主、クラシック好きの章君です。

シューマンの「子供の情景」は、私もけっこう好きで、一時期よくかけていました。これを、じーっと無理やり聞かされていたら、眠くなる気持ち、わかります。それだけじゃなくて、王様な章君に対するみんなの気持ちや、行動には、いい大人の私も共感してしまいます。

損得を考えて、人間関係に卑怯になってしまう気持ち。大人になると、もっと柔軟に対応できるし、気持ちを賢く逃がせるようになるけれど、その分「卑怯」度数では、大人のほうがはるかに高いと思います。でも、それを「卑怯」と感じる心は、大人になればなるほどなくしてしまうような気がする。だから、この小説はとても眩しかったです。

2作目の「彼女のアリア」も素敵な物語でした。不眠症の少年と、虚言癖のある少女の物語。ちょっと切ない、ボーイ・ミーツ・ガール小説です。卒業の日の、「ぼく」が、すごくかっこいい。きっと、素敵な男性に成長するでしょうねー。藤谷さんにも頑張って欲しいな。「ゴルドベルグ変奏曲」は、ちょっとこの物語のBGMにするには、こうるさいとは思うけど。

3作目は「アーモンド入りチョコレートのワルツ」。ピアノ教室の物語。職業柄興味深く読んで、色々考えさせられるところはありました。ただ、小説としてはどうかな?一番大人っぽくて叙情的ではあったんだけど。ストーリーがちょっとわかりづらいというか・・・あまりに微妙。個人的には、他の2作のほうが好きでした。
| ま行(森絵都) | 23:17 | - | - |
★ つきのふね 森絵都 
4062092093つきのふね
森 絵都
講談社 1998-06

by G-Tools

このごろあたしは人間ってものにくたびれてしまって、人間をやってるのにも人間づきあいにも疲れてしまって、なんだかしみじみと、植物がうらやましい。
最初のこの文の最後のひと言「植物がうらやましい」に、ぐっとつかまれて、引っ張り込まれてしまった本。そして、ラストをしめくくる「手紙」で一気に泣かされてしまった本。森さんは、ちゃんと、小説がうまい。

「いつかパラソルの下で」を読んで、森さん、大人向けの本を書くために、ずいぶんがんばってるなあ、必死だなあ、無理を感じて肩がこる、と、思いました。あの本は、あの本で、ちゃんと好きだけど・・・。もうからないのかもしれないけど、YAの世界にもうちょっといて欲しいなあと思いました。ただ、最近森さんのYA本を読んでなかったので、一番好きだった、という記憶にしたがって、この「つきのふね」を再読してみました。

やっぱり、すごく、いい。きちんとした構成で、きちんと人物が描けていて、子供向けだと言われてしまうのは、確かにもったいないできばえなんだけど、すべての年齢層にオススメできる、素敵な本。やっぱり森絵都さんは好きだなあ。
| ま行(森絵都) | 00:32 | - | - |
■ いつかパラソルの下で 森絵都 
4048735896いつかパラソルの下で
森 絵都
角川書店 2005-04-26

by G-Tools

本人は大真面目なんだけど、傍から見るとそこがどうにもこうにも面白い。最初は微笑ましいという程度なんだけど、何度も「クスッ」を繰り返しているうちに、腹を抱えて大笑いしたくなってしまう。でも、本人は大真面目だし、何を笑われているかもわからない。非常に愛すべき人物なので、周りも一生懸命笑うのを我慢する。でも、我慢すれば我慢するほど、おかしい。

この本は、私にとっては、そういう本でした。そういう性格の登場人物がいるということではありません。この本が、そういう性格の本だったんです。人に性格があるように、本にも性格ってありますよね。

いえ、全然、コメディではないんですよ。文学です。真面目な本なんです。

病的なまでに潔癖で厳格な父親に育てられた3人の兄妹は、その父の死後、父親の浮気という意外な事実を知ることになります。母親はすっかり元気をなくします。3人の兄妹は、父親の真実や過去を理解しようと、調査を始めます。家族愛、兄弟愛、恋愛、その中での価値観のすれ違い、生と死、人生、過去、トラウマ、などなどなど、真面目なテーマのてんこもりで、考えさせられたり、感動したりする本です。

でも、なんでかなあ。私は、かなり色んなところで笑わせてもらいました。主人公の長女・野々ちゃんは能天気なふりをして、かなり悩み多き人。現実逃避体質なんだけど、優柔不断な性格ゆえに、いつも逃げられない。だから彼女の独白はかなり面白かったです。精神年齢が実年齢に追いついていないというか、どこか地に足のつかない3兄妹の会話にも笑ってしまった。彼らの、周囲の人たちや、親戚とのぎこちない交流も笑えるし、色んなところで、どうでもいいディティールが笑いを誘う。

これは、作者、天然かな?確信犯かな?後者だといいなあ。プロの作家さんが、重いテーマをすんなり読めるように、作品の雰囲気を壊さないギリギリのところまで笑わせてくれた結果、ものすごいバランスで、この素敵な本ができた。そうだといいなあ。

正直なところ、野々ちゃんの恋愛に関しては、結末が不満です。できれば自立するなり、できなければ新しい恋人の家に転がり込むなりして欲しかった。単なる棚ボタのハッピーエンドで、あまりにもご都合主義で・・・最後の最後でさめました。お兄ちゃんに関しては、とっても素直に祝福できたんだけど。できちゃった婚なんて、らしくていい!

まあ、とにかく、お母さんが立ち直って良かったし、3兄妹も、やっとまっとうに人生と取り組みはじめた感じがして、読後感は良かったです。

児童文学の森絵都さんを好きな方には、前半の重さや、セックスシーンが受け入れられないような気もします。私もああいうどろどろ、特に好きじゃないけど、「大人の本」として頑張ってる感じが出ていて、微笑ましい感じがしました。児童文学でも、大人向けでも、森さんは森さん。家族との快適な距離を探ったり、自立を目指したり、扱っているテーマは同じだと思いました。
| ま行(森絵都) | 23:22 | - | - |
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