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■ レッド・マスカラの秋 永井するみ
レッド・マスカラの秋 (ミステリーYA!)レッド・マスカラの秋 (ミステリーYA!)
永井 するみ

理論社 2008-12
街路樹が色づき、空気がこうばしくなる。なにか素敵なことが起きそうな予感に満ちた、秋。ティーン向けのファッションショー、東京ガールズフェスティバルは、トレンドに敏感な女の子たちで大盛況。私は、三浦凪、17歳。ファッションに興味がないわけじゃないけど、今日ここに来たのは、モデルの友人、ミリの晴れ姿を見るため。ランウエイを颯爽と歩くミリはレッド・マスカラを塗ったアイメイクも印象的で、文句なくカッコよかった。でもその舞台裏は、彼女が勧めたマスカラのせいで、まぶたが腫れたモデルがいるという噂で持ちきり。あんなに仕事に情熱とプライドを持っていたミリが、モデルを辞めようとまで思いつめている。マスカラに問題があるのか、モデル仲間の嫉妬なのか?ミリには胸を張ってランウエイに立ってほしい。私は調査に乗り出す決心をした。『カカオ80%の夏』につづく、大好評のハードボイルド・ミステリー、シリーズ第2作。
やっぱり出ましたね、続き。そして、さらに続きが出そうで嬉しいです。

1作目に続き、この2作目でも、凪は探偵ばりの大活躍を、友達のためにすることになります。1作目と比べると、かなり積極的に動き、積極的に人と関わっていて、凪の成長がきちんと描かれていました。謎解きはちょっとあっけなさ過ぎて、1作目のほうが楽しめたけど、2作目は2作目で満足。凪とマスターの関係が、もどかしくてなかなかいい感じです。
| な行(永井するみ) | 21:35 | - | - |
■ グラニテ 永井するみ
グラニテグラニテ
永井 するみ

集英社 2008-07

愛しているから許さない。母と娘の物語。

万里はカフェのオーナー。夫に先立たれ、17歳の娘唯香と暮らしている。年下の恋人・凌駕との関係も順調だったが、唯香と凌駕が出会ったことで、歯車が狂い始める…母親と娘との三角関係を描く長編。
帯や紹介文を見て想像したほど、ドロドロとしていなくて良かったです。これは確かに、母と娘が1人の男性を巡って争う物語で、女の争いと、その心理描写に多くのページが割かれているけれど、そちらがメインではなく、本当は、親離れ子離れの物語でした。ほとんどの人が経験するその瞬間が、彼女たちにとっては、こんな風にドラマチックに訪れた、という物語でした。だから、読み終えてみると、意外と爽やか。自立した女性同士になった2人が、温かい関係を1から築いていってくれる事を願ってやみません。今すぐには無理でも、唯香がもう少し大人になったら、健全な意味で仲の良い母娘になれるのではないでしょうか。

…そうじゃなかったら万里さんが可愛そう過ぎるしね。
| な行(永井するみ) | 12:27 | - | - |
■ グラデーション 永井するみ
グラデーショングラデーション
永井 するみ

光文社 2007-10-20
14歳の少女が、友人、家族、憧れの人との関係のなかで、一つずつ自分の感情を増やしていく。進学や恋愛、就職の悩み…誰にでも訪れる当たり前のような出来事を、自分らしく受け止め、大人の入り口に立つ23歳になるまでを丁寧に辿る。

いつかの自分を投影するような、心地よい等身大の成長小説。<帯より>
永井するみさんが、ミステリーでも不倫小説でもない小説を書いていることにも、それが、こんなにも爽やかであることに驚きました。とても、いい小説でした。

「いつかの自分を投影する」「等身大」と帯には書いてありましたが、この本の主人公である真紀は、ごく普通、というタイプの少女ではないように思いました。あまりに地味すぎます。真面目で、人見知りで、物静かで、友達も多くありません。家族構成も家庭環境も平凡だし、恋愛経験は少ないし、バイト先はデパ地下の佃煮屋で、趣味は絵を描くことで、初めて書いた絵は漬物の絵です。あまりに地味。

でも、いまどき明らかに少数派であるらしい、読書を趣味とする人の中には、真紀に共感できる人って多いでしょうね。だって、読書っていう趣味は明らかに地味だもの(笑)。そんな感じで、とても好感度の高いヒロインですよね。

私自身は、まったく真面目ではなく、まったく物静かでもない少女だったので、真紀と自分は似ていないと思いましたが、それでも、彼女の抱えるコンプレックスや悩み、感じるプレッシャーには、覚えがありました。そして、迷い傷つきながら成長していく真紀を、とても愛しいヒロインだと思いました。

それに、真紀以外の登場人物が、個性豊かで、活動的で、それぞれに華やかなので、ヒロインが地味だからと言って、物語に飽きてしまうということはありません。この人物造型、上手い!

真紀が23歳になり、大人になりかけたところで終わっています。10年も真紀の人生を見てしまうと、妙に親しみを覚えて、真紀の将来が気になり、続編希望!とも思ったのですが…どうでしょうね?大人になったあとの真紀の物語に、この本にあったような瑞々しさや清々しさが宿るとは思えないので、ここで終わるのが大正解なのかもしれませんね。
| な行(永井するみ) | 22:16 | - | - |
▲ ドロップス 永井するみ
ドロップスドロップス
永井 するみ

講談社 2007-07-26
やりがいのある仕事と家庭を持ち、
他人から見れば幸せに見える結婚生活を送るフリー編集者。
高校の同級生に言い寄られる、バツイチ子持ち美女。
奔放な恋愛をしてるように見えて、
実は10歳も年下のピアニストが気になるシングルマザーのソプラノ歌手。
かつての略奪愛を経て、夫と静かに暮らすホール経営者。
4人の女、それぞれの仕事と恋。
「年に一度、の二人」と同じ日に読んだので、類似点ばかりが目についてしまい残念でした。でも、個人的にはほんの少し、こちらのほうが好きかな。

同じように不倫小説なのですが、各短編をつなぐ舞台が、とある町の小さな音楽ホールということで、「年に一度、の二人」の舞台である海外の競馬場よりは雰囲気がやわらかく、身近な感じで、内容にあっていたと思います。登場する女性たちの境遇も、こちらのほうが身近に感じられ、心理描写に共感できる部分も多少は多かったです。

でもやっぱり、永井さんなら「不倫小説」じゃない小説のほうが好き。
| な行(永井するみ) | 22:06 | - | - |
▲ 年に一度、の恋人 永井するみ
年に一度、の二人年に一度、の二人
永井 するみ

講談社 2007-03-07

香港で出会った二組のカップル。
ハッピーバレー競馬場で楽しい時間を過ごし、
「一年後のこの日、ここでまた会おう」と約束するが、
お互いの連絡先は教えあわぬまま・・・。
どちらかが来なければその時はその時でおしまい。それだけの関係。
果たして二人はもう一度、再会することができるのか・・・。
1話と2話で、別々のカップルが描かれ、3話で2つの物語がリンクする構成になっています。

恋愛小説ではない「不倫小説」で…。一年に一度しか会わない、というとてもドラマチックな設定があるのに、それがまったく生かされていない気がしました。「恋愛」を描くとしたらにじみ出るであろう、ロマンや情熱は感じられなくて、まさに不倫小説でした。まあ、そういうのって、個人的には好きなタイプの小説ではないです。

ただ、父親も母親も不倫をしていて、そのことに子供のころから気付いていて、思春期に入って苛立っている息子、宗太郎という登場人物が描かれたことで、私が時々「不倫小説」に感じてしまう嫌悪感のようなものは、かなり薄まった気がします。

馬術とか、競走馬とか、競馬場とかのモチーフは面白そうなので、そのあたりを題材にした恋愛小説でも不倫小説でもない、かたくて読み応えのある小説を、永井さんに書いてみて欲しいなあ。
| な行(永井するみ) | 21:58 | - | - |
■ 義弟 永井するみ
義弟義弟
永井 するみ

双葉社 2008-05-20

押さえきれない破壊衝動を封じ込めてきた弟、心と身体に深い傷を抱えながら生きてきた姉。血の繋がりのないふたりは、本当の肉親以上に信頼しあっていた。しかし、ある事件をきっかけに"姉弟の箍”が外れていく。

スポーツインストラクターの克己と弁護士の彩は、血の繋がりのない義理の姉弟。成人した今、克己の
彩に対する感情は、姉以上のものになっていた。そんな中、彩の不倫相手が彼女の職場で急死する。助けを求められた克己は、彼女を守るため遺体の処理をするのだが・・・。(帯より。)
彩の視点でだけ読めば、この本はとてもスッキリしていると思います。彩の精神構造や思考回路はわかりやすいし、小説の構成としても終盤に山があって秘密が明らかになるパターンでスッキリ。あのラストも、前向きにとらえることができますよね。彩は傷つけられた子供だったし、自分でもたくさんの間違いを犯したけれど、その間違いを後悔し、告白し、それを償おうとしている。回り道をしたけれど、本当に好きな人に気がつく事もできました。これから色々大変だろうけど、自分の心の傷を癒して、克己と支え合って、強く逞しく生き抜いていけそう。そして、いつかきっと、幸せになれるだろう、そんな風に思えます。

ただ、この小説は克己の視点からも描かれているんですよね。克己の抱える押さえきれない破壊衝動というのが、「姉に対する思いを封じ込めていたから」とか「父親への反発」なんていう簡単な理由であれば、すべてがシンプルに解決するのしょうが、そういうわけではなさそうなところが問題です。克己の破壊衝動というのは根が深く、おそらくは母親を失った幼い時に心に抱えた闇が原因で、いつか、犯した罪を償って、彩と一緒にいられるようになったとしても、それだけでは解決しそうにありません。

克己が、つまりは克己と彩が、これからどうするのか、どうなってしまうのか、何も語られないままプツッと終わってしまったようで、もうあとほんのちょっとでいいから続きを書いて!と、思わずにはいられませんでした。
| な行(永井するみ) | 12:32 | - | - |
■ カカオ80%の夏 永井するみ
カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)
永井 するみ

理論社 2007-04
私は、三浦凪、17歳。好きなものは、カカオ80%のチョコレートとミステリー。苦手なことは、群れることと甘えること。夏休みに、クラスメートの雪絵が、書き置きを残して姿を消した。おとなしくて、ボランティアに打ち込むマジメな雪絵が、いったいどうして…?カレでもできたのか?気乗りはしないけれど、私は調査に乗り出した。ひと夏のきらきらした瞬間を封じ込めた、おしゃれなハードボイルド・ミステリー。
ちゃんとしたYAでした!そして、ちゃんとしたサスペンス&ミステリーでした。(ただ、これがハードボイルドなのかどうかは、疑問)。永井さんって本当に有能!こんなのも書けてしまうんだなあ。どんどん引き出しが増えますね。

雪絵の家出の真相が気になって、どんどんページをめくりました。凪の行動力をうらやまし〜なんて思ったりしました。最初は、群れるのが苦手で、学校でも浮いていて、友達を必要としていないように見えた凪が、雪絵探しの過程で、友人の有難さに気がつく心の成長は、読んでいて清々しいものがありました。凪のマスターに対する淡い気持ちも、微笑ましくて、可愛らしかったです。続きがありそうなので、このちょっと背伸びした恋の行方も楽しみです。

あとは、うーんと、そうだなあ。凪と母親の間の関係って、たぶん凪が一人称で語るほど本当はカラッとしたものではなさそうなので、いつかそのウェットな部分も語られたらおもしろそうかな、と、思います。
| な行(永井するみ) | 21:30 | - | - |
▲ ダブル 永井するみ
ダブルダブル
永井 するみ

双葉社 2006-09

若い女性が突然、路上に飛び出し、車に轢かれて死亡するという事件がありました。事故と他殺の両方が疑われたこの事件は、その女性がかなりの肥満で、はっきり言えばブスであったことから、「いちゃつきブス女事件」として、世間の注目を集めます。真相がわからないままに、世間から忘れられそうになったころ、すぐ近所で第2の事件がおこります。今度は、中年の男性が地下鉄の階段で転落死し、こちらも事故と他殺の両面から捜査されます。この男性は、声の高いオタク男でした。

雑誌記者の相馬多恵は、この事件の取材をすすめるうちに、1人の女性にたどり着きます。柴田野々香は、外見は小柄で可愛らしく、夫の好むパステルカラーの服を身につけ、話し方もおっとりとしていて、清楚なお嬢さん風。現在は妊娠中で、幸せの真っ只中です。彼女とこの事件の間には、どんな関わりがあるのでしょうか?

外見で人を判断してはいけない、というのは誰もが正しいと言う建前だし、人は見かけによらない、ということも、たいていの人が実感したことがあるはずです。でも、実際には常に、人は外見で判断され続けているし、自分も人を外見で判断してしまう。外見から受ける印象に感情が左右されるのは、人間としてあたりまえで、どうしようもないことなんですよねー。でも、だからこそ「外見で人を判断してはいけない」と、自分に言い聞かせ続け、理性を働かせて正常な判断をくだそうと努力するのが良識だと思うのですが、それをしない主観的で自己中心的な人間もたくさんいる。

この本では、何をしていても自分には影響のない赤の他人を、見た目や声が悪いという理由で、不愉快だと思う心理について描き続けていきます。「いなくなってくれたらスッキリするかもね〜」という程度のものから、殺したいほどの憎しみまで。だからこの本には、自覚のない傲慢さと、悪意が満ちていて、すっごく読み心地が悪かったです。その「うざい!」という気持ちが、わかってしまう自分も嫌なら、自分が周囲からそう思われている可能性も考えずにはいられなくて、読んでいてどうにも嫌な気分になる本でした。

これだけ読者を嫌な気分にさせるのですから、好きにはなれない本だけど、かなりの力がある本だと思いました。

主役で探偵役である多恵が、正義感に燃えて、被害者に同情しているような、型どおりのヒロインであれば、もっと読みやすい本になったと思います。でも多恵もまた、主観的で自己中心的な人間の一人です。ライターとしての自分の評価が低いことに焦っており、キャリアを少しでもあげるために、この事件を利用しようとしているだけの、あまり好感を持てないヒロインです。男社会で戦う多恵と、家庭に収まった野々香は、対称的でありながら、2人とも「嫌な女」の典型であって、このキャラクター配置が、読者の「嫌な気分」を増幅させます。とても永井さんらしくて、実に上手い!と、思いました。

亡くなった人たちは、周囲から「うざい」と思われていたかもしれないけれど、本当に身近にいた恋人や、家族や、同僚からは、愛され、頼りにされていたのかもしれない。その点が描かれていた事は、少しだけ救いでした。
| な行(永井するみ) | 00:21 | - | - |
■ さくら草 永井するみ
さくら草さくら草
永井 するみ

東京創元社 2006-05-27

清純な少女っぽさと、上質な大人のエッセンスをバランスよく同居させている、ローティーンの少女たちに絶大な人気を誇るブランド「プリムローズ」。その「プリムローズ」の服を着た少女が次々に殺される、連続殺人事件が起きます。

「プリムローズ」の服を着た少女の写真をとったり、売買したりする、「プリロリ」と呼ばれる男たちの犯罪なのか?少女たちが犯人に誘われてついて行ってしまった理由、彼女たちを釣った「餌」はなんだったのか?ファッションにもブランドにも理解がない昔気質のおじさん刑事、俵坂と、若い女性刑事、理恵のコンビが、事件の謎を追います。

さすが永井さんで、ミステリーとしてだけでなく、キッズブランドという旬の業界を舞台に、ファッション業界小説としても楽しませてくれます。フェイスなんて業界用語、初めて聞きました。「プリムローズ」の社長兼デザイナーの桜子と、桜子を見つけ出し「プリムローズ」を育て上げたゼネラルマネージャー、晶子の確執も、読み応えがありました。「プリムローズ」を誰よりも愛し、ブランドイメージを守ろうと必死で戦う晶子を、応援せずにはいられません。桜子なんて嫌いだよ。

被害者となる少女たちにも、それぞれに夢があり、それぞれの家族にそれぞれの物語があります。「プリムローズ」が大好きだった娘を、自分の父親が運転していた車の事故で失った母親が、今でも毎月「プリムローズ」の服を買い続けているという狂気のストーリーも事件に絡んできます。俵坂と理恵のコンビが信頼関係を深めていく様子は、この本に清涼感を足してくれます。複雑なストーリー、スピーディーな展開、読ませます!面白い読み物でした。

連続殺人事件の真犯人は、伏線が足りなくて、やや強引な気もしますが、まあ納得できない、というほどではありません。でも、この真相をあてられる読者がいたら、すごいね。私が何の根拠もないけどなんとなく犯人だと決め付けていた人は、完全に脇役でした。
| な行(永井するみ) | 08:30 | - | - |
■ ビネツ 永井するみ
4093797358ビネツ
永井 するみ
小学館 2005-05

by G-Tools

エステ業界と、そこで働く女性たちの人間関係を描いた・・・ミステリー。一応ミステリーなんですよね、これ。6年前に「神の手」を持つ、と言われたサリさんというエスティシャンが、強盗殺人で亡くなったという事件の、真相を追っているんです。でも、どうもこの本筋が、中途半端というか。本筋だけど、なくても良かったんじゃないの、そのエピソード、という状態になっています。そのほかの部分が、濃厚で、興味深かったからです。

主人公は、マッサージを得意とするエステティシャン・麻美。彼女は、高級エステティックサロン「ヴィーナスの手」の社長・京子に、あなたは「神の手」を持っている、と、スカウトされ「ヴィーナスの手」で働くようになります。そこで、6年前に死んだサリさんの後釜として雇われた事を知り、サリさんの事件に興味を持ち、調べ始めるのですが・・・ミステリーであれば探偵役であるはずの麻美は、途中からその事件への興味をじょじょに失い、あるものに魅入られ夢中になってしまうのです。

やはりこの本の見所は、ドロドロの人間関係。「ヴィーナスの手」の社長・京子と、夫・安芸津弘庸、弘庸の連れ子である息子柊也、弘庸の愛人・みどり、そしてそこに巻き込まれていく麻美。このあたりの人間関係は、曖昧に微妙にぼかされつつも、ドロドロでした。それに「ヴィーナスの手」に、麻美より前にスカウトされた、結花というエステティシャンの嫉妬と悪意はやっぱりドロドロ。また、「ヴィーナスの手」の客である綾乃と舞の関係もすごいです。高慢で、同僚である舞を見下げる発言を繰り返すわりに、舞の足を引っ張り、舞を傷つける事に余念がない綾乃。仕事はできるのに、要領が悪く、自分に自信がなくて、綾乃の真似ばかりしている舞。お互いの競争心は本当にもう子供っぽくて、ドロドロ。どこもかしこもドロドロで、読み応え、ありました。

ただ・・・麻美という主人公は、好きになれなかったなあ。仕事に情熱を持っていて、自分の可能性を信じてて、努力家で、でも弱かったり、騙されやすいところもあって。好感を持てそうな主人公なのに、なぜか好きになれなかった。

本人が「エステティシャンにはお客様の気分を感じ取れることが大事」とかなんとか、しょっちゅう言っているわりに、他人の気持ちを全然考えてない自己中な女性だったから、かな。出る杭にならないようにと仕事の手を抜いてみたり、スカウトされればされたで他のスタッフを見下していたり。柊也があらわれたとたん、今まで甘えっぱなしだった彼氏をあっさり振って、でも励まして欲しい時には電話して。

ミステリーとしての結末は、単純じゃないところが、私は好きでした。はっきりとは描かれていないたくさんの恐ろしい犯罪。この先、麻美はその何も知らないまま、崖っぷち人生を歩いていくんだ、と、思うとぞっとしました。余韻の残るうまい終わらせ方だと思います。それからやはり、私は全然詳しくないので、エステ業界の裏側を描いた業界ものとしておもしろかったです。
| な行(永井するみ) | 18:04 | - | - |
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