CATEGORIES
LINKS
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
■ 強運の持ち主 瀬尾まいこ
強運の持ち主強運の持ち主
瀬尾 まいこ

文芸春秋 2006-05

あれ。瀬尾まいこさん、作風が微妙に変わったかな?今までの瀬尾さんの作品には必ずあった、痛々しさを、この作品からは感じなかった。

ショッピングセンターの片隅で、占い師の仕事をしている、元OLのルイーズ吉田。ルイーズは、占い師として特別な才能があるわけではないので、もちろん姓名判断などの基本的な業は持っているけれど、本当は、お客さんの外見や話し方を観察して、客の期待している答えを、あとで文句を言われないように言う、という方法をとっています。本人いわく「直感」で仕事をしているそうです。

ルイーズは、かつて恋人に連れられて客としてやってきた通彦が、あまりに「強運の持ち主」で「自分と相性がぴったり」であることに驚き、あの手この手を使って、通彦を恋人と別れさせ、今は彼と同棲中です。でも通彦は穏やかな性格のごく普通の公務員で、今のところその「強運」は発揮されていません。

ルイーズが、その人間観察能力を駆使して、お客さんの持ち込んでくる、さまざまな悩みを解決する連作短編集。占いという仕事には、かなりいい加減に対応しているのに、相手が単なる客ではなく、一個人ということになると、ルイーズは実に誠実です。相手のために一生懸命になれる、いい人です。そのあたりがアンバランスで、「ルイーズ」という作中人物の中で微妙に噛みあっていなかった気がしました。不自然だよな、と思いました。でも、よく考えたら、これはリアルなんですよね。自分の性格とか、ポリシーとかが、そのまま仕事に発揮できることなんて滅多にないし、発揮しちゃいけないことが多いですもんね。ルイーズはプロの占い師として「いい加減さ」が必要だから、そうしてるんですよね。

終盤になってクローズアップされる「毎日何かが終るんだ」というフレーズは印象的でした。そうしてルイーズが、自分の仕事に関して気がつく「あること」に関しては、ルイーズは無意識のうちに、もう知っていたんじゃないかなあ、と、思います。

さらさら読めちゃう楽しい本でした。表紙もかわいくて素敵です。
| さ行(瀬尾まいこ) | 14:32 | - | - |
■ 温室デイズ 瀬尾まいこ
温室デイズ温室デイズ
瀬尾 まいこ

角川書店 2006-07

小学校6年生の時に学級崩壊があり、その恐さと虚しさをよく覚えている、みちる。彼女は、中学3年生になった今、その同じにおいを、その兆しを、敏感に嗅ぎ取っていました。そしてそれを食いとめようとして失敗し、崩壊した教室の中で、いじめられっこになってしまいます。

その同じ小学校時代の学級崩壊の中で、いじめに耐えられず、隣の小学校に転校した優子。彼女はみちるの唯一の味方でしたが、今回も教室に耐えられず、保健室登校をするようになります。みちるの幼馴染で、いわゆる不良の瞬には、クラスを立て直す力がありそうですが、今は、家庭の問題と将来への不安を抱えて苦しんでいます。小学校の時はクラスのリーダーだった斎藤くんは、クラスの有能なパシリになっています。

みちると優子が交互に語り手をつとめる物語ですが、瞬と斎藤君の気持ちも伝わってきます。それぞれがそれぞれの方法で、何かしよう、戦おう、としているのに、うまくいかない、辛い。そんな気持ちがとてもリアルで、息苦しいような本でした。

瀬尾まいこさんの本の中では、かなりリアルに痛くて、甘くない本だったと思います。ちょっといい話、なんかでは終っていません。友情とか、初恋とか、そんなものでごまかしてもいなくて、まっすぐに、学校という場で闘わなければならなくなった、二人の少女の心の軌跡を描いています。ラストもリアルで、甘くはない。この本を読むと、学校は「温室」だなんて、とても思えません。

私の中学生時代は、ずいぶん昔のことになりました。あの頃は、学級崩壊なんてなかったし、いじめもあったけど、ここまで陰湿な社会ではなかった。それでもやっぱり、「いじめ」という言葉に自分が完全に無関係であったとはいえません。みちるのように堂々と立ち向かったことなんてないし、斎藤君や優子のように、賢く立ち回ったこともない。なんとなくその言葉には、罪悪感を刺激されます。

私は、不登校の生徒と接する機会が多いのですが、学校が本当にこんな場所なら、行くようにと説得する気にはなりません。この本を読んでいる最中も、みちる、なんでそこまでがんばるの、やめちゃいなよ、と、ずーっと思っていました。でも、誰かが行かなくなれば、ほかの誰かがいじめにあうんですよね。やっぱり何か根本的な改革が、学校という存在には必要だと思います。それは、先生や保護者の学校に対する意識の問題かもしれないし、社会全体の子供に対する意識の問題かもしれない。とにかく、目に見えないものであることはまちがいないんでしょう。だから、なかなか解決しない。

どんな子供でも、その子にあった教育を受けるチャンスと空間が選べればいいのですが。
| さ行(瀬尾まいこ) | 00:07 | - | - |
● 幸福な食卓 瀬尾まいこ
4062126737幸福な食卓
瀬尾 まいこ
講談社 2004-11-20

by G-Tools

なるほど。納得。

この小説の感想としては、ちょっと変かもしれませんが、まずこう思いました。

私は、「図書館の神様」で、瀬尾さん、好きだ!と、思って、それから他の本をどんどん読んでいったのですが・・・。「図書館の神様」なみに、いいなあと思える小説には出会わなかったんですよねー。だから、「図書館の神様」は奇跡?と思ってたんです。だけど、ちまたで「幸福な食卓」の評価があまりにも高いので、これを読んでみるまで、評価は保留にしておこう、って感じで。

で、読んでみて、納得。これなら、評価高いのもわかります。家族の物語として読むもよし、女の子の成長物語として読むもよし、の、温かくていい本でした。

みんな優しくて、かわいくて、いい人ばっかり。瀬尾さんの本はみんなそうですが、それがいい方に転んでると思います。悪い方に転ぶと・・・人物の描写が薄い、物語が浅い、ってことになっちゃうんですけどねー。この本はこれでいい、と、思いました。

ラストの急展開に関する、他の人の感想はどうなのかなあ?私は、なんだか唐突で、物語から浮いている感じがしてしまったんだけど。もう少し穏やかな出来事でも、家族に同じ行動をとらせ、同じ感想を主人公に抱かせ、成長を描くことは出来たんじゃないか。そのほうが穏やかで温かい、この本全体の雰囲気にあっているんじゃないか、と、思っちゃったんだけど。でも、みんなの、「泣きました」という感想はあのラストじゃないと生まれてこないんだろうし・・・。

ちなみに、私は泣きませんでした。これは、私の心構えが悪かったんですねー。さあ、かかってこい!みたいな気分で読んじゃったから。失敗。
| さ行(瀬尾まいこ) | 22:10 | - | - |
▲ 優しい音楽 瀬尾まいこ 
4575235202優しい音楽
瀬尾 まいこ
双葉社 2005-04

by G-Tools

不倫相手の子供を預かることになった深雪さんは、気がつくと、その子供佐菜ちゃんと仲良くなり、彼女と彼女の母親(つまり不倫相手の奥さん)サツキさんの幸福な生活のために、奔走することになります。サツキさんは聴覚障害者です。わたしは、母親が手話通訳のボランティアをしていた人なので、このストーリーは印象に残りました。障害者の差別問題を扱った小説としては、あまりに薄く、パターン通りでしたけど。この小説は深雪さんのお人よし加減がメインで、だからこれでいいんでしょうね。

・優しい音楽
ごめんなさい。これは…タイトルロールなのに残念!。

亡くなったお兄ちゃんに似た顔である、という理由で、タケルに声をかけた千波ちゃん。千波ちゃんを次第に好きになるタケルくん。タケルの側で顔を見ていたい、という理由で彼女になった千波ちゃん。2人が本当に恋に落ちていく様子や、タケルと千波の家族の交流を描いた作品です。

正直…物足りないんです。書くべき事を何も書かずに、それこそ「優しい」事だけ書いているので、退屈なんです。葛藤があったり、怒りがあったり、悲しみがあったりするはずなのに、そこを全部すっとばして「優しい」所だけ文章にしても…嘘っぽいだけで、むずがゆい。なにこれ?って感じでした。

ああ、言ってしまった…。瀬尾まいこさん、かなり好きな作家さんなんですが、「図書館の神様」以上のものは出てきませんね。



他に、同棲中の彼女が、ホームレスをつれて帰ってきてしまう物語「がらくた効果」も収録されています。
| さ行(瀬尾まいこ) | 21:48 | - | - |
★ 図書館の神様 瀬尾まいこ 
4838714467図書館の神様
瀬尾 まいこ
マガジンハウス 2003-12-18

by G-Tools

バレー部の顧問になりたくて教師になったという、清、が主人公です。しかし清は、国語教師であるというだけの理由で、たった一人しかいない、文芸部の顧問をやらされることになります。

暗い過去を持ち、訳ありの恋愛をしているヒロインの、癒しと再生の物語です。そういう意味では、あまりにもありがちで、どこかで見たようなストーリーの小説です。それでも、ヒロインの性格が、他の類似品とは際立って違うし、ストーリーも面白いからいいんです。たった一人の文芸部員、垣内君もかっこいいし。

でも、私がこの本を特別に好きになった理由は、この本が、「本を読んでもいいんだよ」って言ってくれているからです。

さまざまな種類の娯楽があふれるようになった現代、「本を読む人」はたくさんの本を読むけれど「本を読まない人」はまったく本を読まない。そういう分け方をすれば、読書というのは、さまざまな娯楽の1つにすぎず、当然「本を読む人」は少数派で、大変肩身が狭い。しかも「本を読む人」には、暗い、孤独、地味、などなど、マイナスイメージがつきやすいので、学生時代は特に、なんとなーく肩身が狭かった。理不尽だ!

こんな、わたしの気持ちがわかる方は、一度お読みください。スカッとしますよ!
| さ行(瀬尾まいこ) | 23:43 | - | - |
| 1/1PAGES |