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● 死亡推定時刻 朔立木
死亡推定時刻死亡推定時刻
朔 立木

光文社 2004-07-21

帯に書いてあるとおり、ある誘拐殺人事件の発生→捜査→裁判、という流れが全部描かれた犯罪小説で、そこが新鮮でした。続編を先に読んでしまっていたので、てっきり弁護士の倫明先生が主役の本だと思って読み始めましたが、この本の主役は人ではなく、事件でした。

とくに、小説で描かれることの比較的少ない、逮捕から判決が出るまでの経過がしっかり描きこまれていて、読み応えがありました。冤罪というのは、こういう中で生まれてくるものなんだな、と考えると、本当に恐ろしくなりました。真に迫っていました。評価、高いはずですね。

わたしは、この小説を読む前に、2時間ドラマ化されたものを見ていました。2時間ドラマなんて滅多に見ないんですけど、大好きな吉岡秀隆さんが出ていたから見て、ドラマはドラマとして満足しました。そして、あらすじがわかっていて読んでも、小説は小説として、すごく良かったと思えます。こういう作品は珍しいです。

結末がわかっている小説は、妙に客観的に読んでしまい、入り込みづらいものです。映像化によって、イメージが限定されてしまうというのも、つまらないものです。私の場合、映画やドラマで見てしまった小説は、小説としては十分に楽しめないことが多いです。(逆もまた同じで、好きな小説の映像化には、たいていがっかりするんですけど・・・。)

でもこの本は違いました。小説が濃厚で、2時間という時間では収めきれない多くのシーンや、多くの登場人物の心情を描いていたからだと思います。いい小説なんだと思います。

それに、吉岡秀隆さんというのは独特の存在感がある俳優さんで、演技にクセがあるから、映像作品が彼の色で完結してしまうんですよね。小説を読むにあったって、「あのドラマ」のイメージが、まったく邪魔になりませんでした。こんなに原作に忠実なドラマなのに、まるっきり別物として、自然に両方を楽しめました。こんなことは珍しいです。
| さ行(朔立木) | 23:12 | - | - |
暗い日曜日 朔立木
photo
暗い日曜日
朔 立木
角川書店 2006-02

by G-Tools , 2006/04/26





ネタバレ警報!

ストーリー自体は、面白くなかったわけではありません。殺人事件の真相は、早い段階でわかってしまいますが、それでも面白かったです。関係者それぞれの複雑な思いが、きちんと描いてあるなあって思いました。それに主役の弁護士、リンメイ先生も、真面目で誠実ないい人キャラで、ステレオタイプではありますが、嫌いではありませんでした。

横山秀夫さんの「半落ち」を思い出しました。罪を犯したのは自分だと言いはる、容疑者の高潔な人間的魅力に、周囲の人が感じ入り、彼が犯人とは思えず、真相は他にあると信じてそれを知りたがる・・・というストーリーが似ていますよね。

でも、この本の場合、著者が魅力的に描こうとし、リンメイ先生が友情を感じるその容疑者に、私は全然魅力を感じられませんでした。全部自業自得じゃん、何人もの人を不幸にして、今さらいい人ぶってんじゃないよ、と、思ってしまいました。

だってすべての原因は、彼の不倫と優柔不断にあるんです。不倫がはじまってしまったことに関しては、百歩ゆずって許せるとしても、その後が実にいただけない。不倫相手は彼のために離婚し、子供まで生んで、彼にも離婚して欲しいと言っている。不倫はスキャンダルとして報道されてしまい、妻にも、相手の夫にも、幼い息子にもバレバレで、みんなが苦しんでいる。そんな中ですべてをうやむやにしたまま、15年も不倫を続けるなんて、もう同情の余地がありません。

「妻には悪いところはないので、離婚は言い出せない」とか「朝帰りはしても泊まってはこない事で、妻への誠意を示しているつもりだった」とか、考えている事がいちいち腹だたしい自己満足男です。

事件が起きて愛人が亡くなった後は、自分の過ちや思い違いに気づいて、つぐなおうとしているように見える彼ですが・・・。そして、そんな彼にリンメイ先生はひかれるわけですが・・・。

全財産を妻に譲って、息子の罪を肩代わりして、それで何かのつぐないになると思っているあたりが、余計にいただけない。つぐないたいのならまず、妻にはきちんと会って話をするべき。息子ともちゃんと向き合って、真実を明らかにするべき。この期におよんで、まだ逃げるか!って感じでした。

こんな男を、魅力的、と感じる主人公には、全然共感できません。読めば読むほど、なんか釈然としない本でした。
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