多少のネタバレ!
「チーム・バチスタの栄光」のシリーズ2作目。1作目同様、読みやすくて面白かったです。タイトルが表しているように、今回は看護師の小夜が主要登場人物です。「バチスタ」に比べると、やや謎解き部分は弱く、真相は早い段階でわかっちゃう感じなんですが、個性的なキャラクターたちの会話と、それに対する田口先生の心の中の突っ込みが面白くて、どんどん読んでしまいました。前作の白鳥に加えて、彼の旧友である警視正・加納も登場、また、有名な歌手で末期ガンに犯された冴子も入院してきて、それぞれに強烈なキャラクターで田口先生を振りまわします。
ただ、いくら人間の潜在能力は計り知れないと言ったところで、歌が鮮明な映像を伝えるなんてことはありえない、と、そこにずっと引っ掛かりながら読んでしまいました。現実には無い事でも、ありそうに描かれていればいいんだけど、私はありえなさそうって思っちゃったので、そのあたりは入り込めませんでしたね。真相を告白するなら口で言えばいいじゃないか、歌での告白なんて何をまどろっこしい事を…なんて思っていました。でも、最後の数ページを読んで、ああ、そういう事だったのか、と、納得しました。その感動的なラストに向けて、そういう設定が必要だったのね、と。だったら小説としてはありだなって。
だからと言って、ラストに私が感動したかというと…そうでもないんですよねー。看護師と患者の恋愛なんて、よくある話ですが、患者がガンにかかって自暴自棄になっている中学生という事になると…やっぱりまずくない?大人の女性としても、プロの看護師としても、小夜っていうキャラクターの魅力が一気にガタ落ち。ちょっ、小夜ちゃんったら自重してっ!とか思っちゃったので全体的にテンションダウン。前半部分での小夜をはじめとする病院スタッフと子供たちのやりとりが素敵だったし、瑞人と由紀のシーンはとても美しく描かれていたので、余計に、ラストで小夜の生臭さがなんだか鼻についてしまいました。そうだなあ、今の段階では、瑞人と小夜の関係は、大好きな看護師さんと、特別に同情している患者、というだけにしておいて欲しかったな。で、数年後にもうちょっと大人になった瑞人と、罪を償い終えた小夜が、改めて恋に落ちる予感って感じなら良かったのに、と、思います。