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▲ ナイチン・ゲールの沈黙 海堂尊
ナイチンゲールの沈黙ナイチンゲールの沈黙
海堂 尊

宝島社 2006-10-06

多少のネタバレ!

「チーム・バチスタの栄光」のシリーズ2作目。1作目同様、読みやすくて面白かったです。タイトルが表しているように、今回は看護師の小夜が主要登場人物です。「バチスタ」に比べると、やや謎解き部分は弱く、真相は早い段階でわかっちゃう感じなんですが、個性的なキャラクターたちの会話と、それに対する田口先生の心の中の突っ込みが面白くて、どんどん読んでしまいました。前作の白鳥に加えて、彼の旧友である警視正・加納も登場、また、有名な歌手で末期ガンに犯された冴子も入院してきて、それぞれに強烈なキャラクターで田口先生を振りまわします。

ただ、いくら人間の潜在能力は計り知れないと言ったところで、歌が鮮明な映像を伝えるなんてことはありえない、と、そこにずっと引っ掛かりながら読んでしまいました。現実には無い事でも、ありそうに描かれていればいいんだけど、私はありえなさそうって思っちゃったので、そのあたりは入り込めませんでしたね。真相を告白するなら口で言えばいいじゃないか、歌での告白なんて何をまどろっこしい事を…なんて思っていました。でも、最後の数ページを読んで、ああ、そういう事だったのか、と、納得しました。その感動的なラストに向けて、そういう設定が必要だったのね、と。だったら小説としてはありだなって。

だからと言って、ラストに私が感動したかというと…そうでもないんですよねー。看護師と患者の恋愛なんて、よくある話ですが、患者がガンにかかって自暴自棄になっている中学生という事になると…やっぱりまずくない?大人の女性としても、プロの看護師としても、小夜っていうキャラクターの魅力が一気にガタ落ち。ちょっ、小夜ちゃんったら自重してっ!とか思っちゃったので全体的にテンションダウン。前半部分での小夜をはじめとする病院スタッフと子供たちのやりとりが素敵だったし、瑞人と由紀のシーンはとても美しく描かれていたので、余計に、ラストで小夜の生臭さがなんだか鼻についてしまいました。そうだなあ、今の段階では、瑞人と小夜の関係は、大好きな看護師さんと、特別に同情している患者、というだけにしておいて欲しかったな。で、数年後にもうちょっと大人になった瑞人と、罪を償い終えた小夜が、改めて恋に落ちる予感って感じなら良かったのに、と、思います。
| か行(海堂尊) | 17:53 | - | - |
■ チーム・バチスタの栄光 海堂尊
チーム・バチスタの栄光チーム・バチスタの栄光
海堂 尊

宝島社 2006-01

東城大学医学部付属病院では、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門チーム「チーム・バチスタ」を作り、次々に成功を収めていた。ところが今、三例続けて術中死が発生している。しかも次は、海外からのゲリラ少年兵士が患者ということもあり、マスコミの注目を集めている。そこで内部調査の役目を押し付けられたのが、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口と、厚生労働省の変人役人・白鳥だった……。


新人さんとは思えないくらい読みやすい文章で、専門用語の多い医療サスペンスなのに、さらさらと読めてしまいました。面白かったです。

特に、キャラクターが魅力的でした。前半での探偵役であり語り手である田口先生は、欲のない、面倒くさがりの、淡々とした人物で、彼の心の言葉には何度もクスッと笑わさせてもらいました。パッシブ・フェーズ、つまり受動的なアプローチ、要するにひたすら関係者から話を聞くだけの田口先生なのですが、心の中では色々と突っ込みを入れてるんですよね。それが面白かったです。逆に、先制攻撃を仕掛けることで、相手の口を開かせる、アクティブ・フェーズで真相をさぐる白鳥との対照が面白かったです。いくら有能であっても、白鳥のように無神経で遠慮のない人が身近にいたら、絶対精神衛生上良くないと思うのですが、小説の主人公としてはなかなか魅力的でした。なんか、彼の言葉にいちいちスッキリしました。

まあ、メインの探偵役である白鳥が、途中から唐突に登場するのがなんとも不自然な気がしましたけど。でもそれは、この作品の欠点というよりは、私が田口先生に好感を持ってしまったから、主役を横取りされたような気がして嫌だった、という個人的な感情かもしれませんねー。
| か行(海堂尊) | 17:50 | - | - |
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