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▲ カフェ・コッペリア 菅浩江
カフェ・コッペリアカフェ・コッペリア
菅 浩江

早川書房 2008-11
人間とAIの混合スタッフが、おいしい珈琲とともに恋愛相談に乗ってくれるカフェ・コッペリア。客のひとりが恋してしまったのは果たしてAIだったのか?―理想の恋に惑う若者たちを描いた表題作、アロマペットを手に入れたOLのせつない日常「リラランラビラン」、最先端美容室のヘアケア技術が招いた意外な顛末「エクステ効果」ほか、すこし未来のささやかで切実な人間模様をつづる七篇。『永遠の森 博物館惑星』『五人姉妹』につづく最新作品集。
△ カフェ・コッペリア
○ モモコの日記
○ リラランラビラン
□ エクステ効果
□ 言葉のない海
△ 笑い袋
△ 千鳥の道行

「五人姉妹」「永遠の森」が良すぎたので、それ以降、菅浩江さんに対する期待値が、無駄に高くなってしまっていけません。切なく温かい、素敵な短編集だったのに、つい、「永遠の森」に比べるとイマイチ…、と、評価が低くなってしまいました。

でも、いい本だったんですよ。装丁が綺麗で、とても好きだしね。
| さ行(菅浩江) | 21:44 | - | - |
■ プリズムの瞳 菅浩江
プリズムの瞳プリズムの瞳
菅 浩江

東京創元社 2007-10

「永遠の森」「五人姉妹」の流れをくむ、抒情SF短編集。前述の2冊には及びませんが、優しく、切なく、美しい物語でした。うん、良かったです。

かつては最先端機種として、期待を一身に集めていた人型ロボット、ピイ・シリーズ。しかし、現在ではその役割を終え、無用の「残存種(レリクト)」と呼ばれ、絵を描きながら各地を放浪しています。

血液の病気の恋人との仲に悩む女性。自分のした研究の結果、多くの人の命を奪う事になり、贖罪の日々を送る老人。今の自分にも周囲の大人たちにも漠然とした不満を抱え、居場所を探し、暴力をふるう少年達。子どもの頃に世話をしてくれたロボットとの、温かい思い出を大事にしている女性。

ピイには感情がないので、ピイと出会う様々な人たちは、ピイと会話をすることで、結局、自分の内面にある感情を見つめ直すことになります。それは多くの場合、自己中心的で、目をそむけたくなるような醜いものですが、そこを掘り下げるのではなく、温かく包むのが菅さんの小説ですよね。どの短編も、後味は悪くありませんでした。

正直、前半を読んでいる間は、ピイたちがなぜ全員画家になっているのかが納得できず、そこにずっとひっかかってしまっていました。だって、ピイたちは、もともとはそれぞれに異なった分野のプロフェッショナルロボットだったはずなのに、どうしてすべてのロボットが画家に?芸術なんて、ロボットが一番向いていない分野だと思われるのに、どうして?無益で無害な作業なら他にもいくらでもあるだろうに、どうして?などと、ぐずぐず思ってしまって。でも、後半、フィー・シリーズについての言及が始まってからは、かなり読みやすくなり、どんどん引きこまれました。そして、ラストで制作者、与謝野博士の、ピイ・シリーズの存在意義は何なのかが明らかになると、なるほどー、って納得できました。

表紙にもなっている、ピイと共に放浪する年をとらない少女、という構図は、絵的に菅さんらしく美しいですよね。そこがもうちょっと、生きていたらなあ。与謝野博士の人生をもっともっと描いて欲しかったなあ。そうしたら、文句ないんだけどなあ。

近々「永遠の森」「五人姉妹」を再読して、その感想を、このブログに追加したいものです。

・収録作品
「レリクト・クリムゾン」
「クラウディ・グレイ」
「ミッドナイト・ブルー」
「シュガー・ピンク」
「メモラブル・シルバー」
「ミラーリング・ブラック」
「エバー・グリーン」
「トワイライト・パープル」
「サティスファイド・クリア」

完全なる蛇足ですが…。ピイ、ぴーちゃん、ピーさん、と言われれば、私はつい、ジャニーズ山下智久君を連想してしまうので、その連想がこの本を読むにあたって自分の脳内で邪魔でした(笑)。

JUGEMテーマ:読書
JUGEMテーマ:SF小説
| さ行(菅浩江) | 09:57 | - | - |
● おまかせハウスの人々 菅浩江 
4062131498おまかせハウスの人々
菅 浩江
講談社 2005-11

by G-Tools

「せつなさの名手」とも評されている菅浩江さん。私は大好きで、もっと人気があってもいいと思うのですが、あまり知名度は高くないようです・・・。SFが苦手な方でも、日常の謎系ミステリーなどを読まれる方には、受け入れられる世界ではないかと思うのですが・・・。傾向的には、松尾由美さんに近いな、と、私は思っています。

・純也の事例
さすが、菅浩江、という感じの感動作。期間限定のモニターになって、人間の子供のようにロボットを育てる・・・つまり、ロボットに人間らしさを教える仕事についた夕香。感情が乏しく、表情も殆ど変化しない純也に、夕香は母親として愛情を注ぎ続けます。いずれ、別れが来ることがわかっているので、その愛情がとても切ないです。純也もその名前の通り、純粋で、有香をひたすら信じて、有香から学ぼうとしています。2人の間にいつしか生まれたものは・・・。

実は、子育てに悩む、現在のお母さんの話と、心情的に変わるところはなく、リアルです。

・ナノマシン・ソリチュード
人間の身体の中に入り込み、医療行為を行う、極小の機械が使われるようになりました。そして、自分のために、目に見えないところで、必死で働いてくれるこのナノマシンに、孤独を癒されている人々がいました・・・。

他のストーリーのテーマが「家族」であるのに対し、この作品のテーマは「孤独」かもしれません。この物語の登場人物も、「孤独」に悩む現代人そのもので、新しいテクノロジーをディティールに使っているだけ。キャラがリアルで、かなり痛い物語でした。

・おまかせハウスの人々
家事労働のいっさいを家がやってくれるという、画期的な家を販売する営業マンと、モデルケースになった3件の家に住む人々を描きます。ある家では、家事も買い物も必要のない家に若者が引きこもり、ある家の姑さんは、家事をさぼる嫁を見て苛立ちを募らせます。「おまかせハウス」は近い将来、確実に可能になる技術でしょう。その技術をどう生かすかは、それを使う私たち一人一人の肩にかかっているのですね。

・・・という正統派のメッセージを、私はこの作品から受け取りました。

・麦笛紀行
これは、空気の読めないサラリーマンの悩み。

・フード病
これは、台所問題で対立する、嫁と小姑のバトル。

というわけで、6編の短編全部において、科学の進歩はスパイスにすぎず、日常生活を一生懸命がんばる、ごく普通の人々の心情を、淡々と描いたという感じです。SFファンには、甘い、退屈、と、言われそうな気がしないでもありません。だから、好みが分かれる本だと思います。それから、女性向けだなあとも思います。

私は好きです。オススメです。
| さ行(菅浩江) | 23:56 | - | - |
▲ プレシャス・ライアー 菅浩江 
4334075223プレシャス・ライアー
菅 浩江
光文社 2003-06-20

by G-Tools

近未来SF。VR(バーチャルリアリティ)世界で、探し物のアルバイトをしていた詳子は、ソルト、と名乗るものから突然攻撃を受ける。またその直後、現実世界で、ペッパー、という名のピエロが忽然と消失するのを目撃する。ソルト&ペッパーはいったい何ものなのか。

パソコン雑誌に書かれた作品という事で、コンピューターに関する専門用語がかなり出てきます。私は素人なので、ちょっと難しく感じました。量子論が出てきたあたりで、「あ、お手上げだ」と、思いました。でも、たぶん専門家が読んだら穴だらけなのではないかという予想もつくのです。(<これには根拠はないんですけど。菅さんって、こういう系の作家さんじゃないと思うし・・・。)

だから、コンピューターの技術的な事にページがたくさん使われているからといって、それに注目しすぎてはいけない本なんだろう、と、思います。

で。ずっと、創作におけるオリジナリティとか、ラベリングとか、そんなことがテーマなんだろうと思って読み進めていました。そのあたりで、色んな事を考えさせられました。

ところが。最後まで読んだら、違ったんですよねー。全然違うわけじゃないんだけど、けっこう違う。ラストのネタバレになっちゃうので、これ以上は書きませんけど。

なんというか・・・全体的に、菅さんらしくないような気がしてしまったんですけど。よく考えたら、菅さんらしいって何でしょう?という気もします。もともとファンタジーも、SFも、推理も、ホラーも書く、引き出しの多い方なんですよね。私は「永遠の森」や「五人姉妹」がすごく好きで、そのイメージが強かったので、ちょっと期待はずれな感じがしてしまいましたが・・・。

私の知らなかった引き出しが、まだあったって事ですね。
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