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無痛 久坂部羊
無痛無痛
久坂部 羊

幻冬舎 2006-04

見るだけですぐに症状がわかる二人の天才医師、「痛み」の感覚をまったく持たない男、別れた妻を執拗に追い回すストーカー、殺人容疑のまま施設を脱走した十四歳少女、そして刑事たちに立ちはだかる刑法39条―。神戸市内の閑静な住宅地で、これ以上ありえないほど凄惨な一家四人残虐殺害事件が起こった。凶器のハンマー他、Sサイズの帽子、LLサイズの靴痕跡など多くの遺留品があるにもかかわらず、捜査本部は具体的な犯人像を絞り込むことができなかった。そして八カ月後、精神障害児童施設に収容されている十四歳の少女が、あの事件の犯人は自分だと告白した、が…。
エグイっていうかグロイっていうか恐いっていうか気持ち悪いっていうか。解剖学的描写が、私には生々しすぎました。お医者さんにとっては、なんてことはないのでしょうけど、私は明るく楽しく穏やかに読書生活をしたい一般人なのでね。ここまでインパクト勝負の描写を入れる必要があったのかなあ?ホラーとしてそういうのを楽しみたい人向けのサービスだったのかしら。

終盤のテンポの速い展開は一気に読めて、面白かったのですが、そこまで読むのがなんだかとっても大変でした。

それに、色々と中途半端な気がする小説で。

凄惨な殺人事件の謎を解き明かすミステリーかと思いきや、メインのストーリーはそこじゃなかったみたいで、ミステリーとしては途中でぐだぐだになっていましたし。

刑法三十九条に関する問題提起小説にしては、インパクトで他の部分に負けている上に、著者が何を主張したいのかよくわからないままでしたし。問題があるってことはわかったし、すごく考えさせられたんだけど、だからどうするべきだと著者が思っているのか、そこが描かれていなかったのが残念でした。だから問題提起のインパクトがないんだと思う。手術シーンの生々しすぎる描写ではなく、そういうところで、現場を知っている医師ならではの記述が欲しいところでした。

それに、2人の天才医師の、見るだけで症状がわかるという、せっかくの面白く料理できそうな能力が、ストーリー全体からすると上手に生かされていない気がしたのも残念。痛みを感じない男という登場人物に関しても、同じように設定がもったいない感じで終わってしまった気がします。無痛症という病気も、テレビのドキュメンタリーなどでよくみかけていて、個人的には目新しくもなかったし…。

無痛治療が実現したらどんなにいいか、とは、真剣に思いますけどね。痛いの嫌い(笑)
| か行(久坂部羊) | 06:54 | - | - |
● 廃用身 久坂部羊
廃用身廃用身
久坂部 羊

幻冬舎 2003-05

もう、誰に最初に薦められたのかわからなくなってしまったくらい、色んな人に薦めていただいていて、やっと読めました、「廃用身」。廃用身とは、麻痺し、直る見込みのない手足のことです。介護する側にとっては、重く邪魔なものですし、本人にとっても、動く部分のリハビリの邪魔をしたり、無駄に体重を増やしたり、ないほうがまし、と、思えることがあるようなものだそうです。

そういう手足を切り落としてしまうことで、患者のQOLを上げ、介護者の負担も減らそうとした医師がいました。漆原医師は、それをAケアと呼び、自分の勤めるデイケア施設で、その治療を始めます。最初の患者は、両足と片腕が麻痺した大柄な男性でした。彼は、両足を切り落としたことで40圓曚病僚鼎減り、残った足の付け根の部分だけで自力歩行し、車椅子にも自分で乗れるようになり、重い床擦れが直り、精神的にも見違えるほど明るくなりました。この治療法には、いいところばかりのように見えました。やがて同じ施設の何人もの患者がこの手術を受け始めます。

正直言って、序盤、文章が下手だな、と、感じました。少なくとも、小説の文章ではない。素人の書いたノンフィクションのような文章だと思いました。それに「医療ミステリー」とあるのに、まるっきりノンフィクション調で、それがずっと続いたので、どういうことだろう?と、思いました。しかし、そのことが、こんな伏線になっていたとは!すっかりやられました!

確かにこの本は、医療ミステリィでした。中盤からは、やられっぱなし。構成もすごく上手いし、物語の展開も波乱万丈で、一気に読んでしまいます。Aケアが老人たちに、そして、漆原医師にもたらしたものは何だったのか。中盤以降の怒濤の展開には、言葉もありませんでした。これでもか、というくらい、ショッキングな本でした。

好き嫌いの問題ではなく、一読の価値がある本でした。すごかった!

現在の老人介護の悲惨な実態を知り、要介護者がどんどん増えていく将来の、超高齢化社会に対する危機感を、もっと持つべきなのだと訴えている、社会派の問題提起小説なのだと思います。

しかし、それだけではない本です。人間が心のどこかに持っている残虐性や、ある種の人の異形や奇形に対する憧れ、そんなものについても迫ろうとしています。サディズムとか、フリークスとか、そのあたり。医療ミステリィという性格上、そのあたりは突き詰めきれていないところが残念ですが、これも文学の1ジャンルとして、あり、ですよね。
| か行(久坂部羊) | 09:33 | - | - |
■ 破裂 久坂部羊
破裂破裂
久坂部 羊

幻冬舎 2004-11
医者は、
三人殺して初めて、
一人前になる。
帯より。

日本では、患者が未熟な研修医の練習台にならざるを得ず、たくさんの医療ミスが闇に葬られている。新聞記者である松野は、そんな「痛恨の症例」についてのノンフィクションの執筆を思いつきます。大学病院に勤務する若き麻酔科医、江崎は、そんな松野の取材に協力することにし、妨害に合い迷いながらも、証言を集めていました。

そんな折、江崎の勤務する大学で、事件は起きます。エリート外科医、香村が、手術時の医療ミスで患者を死なせてしまったのです。香村は次期教授候補であり、教授選を前に、このミスを隠そうとやっきになります。しかし、夫の死に疑問を持った、亡くなった患者の妻、枝利子は、江崎と松野の協力を得て、大学病院と、香村を相手に医療裁判を起こすことにしました。

たくさんの壁が立ちはだかる、松野のノンフィクションはどうなるのか?枝利子の起こした裁判の行方は?

という、ストーリーの小説かと思いきや、それだけではありませんでした。この本にはもっと奥行きと広がりがあります。江崎も、香村も、関係する医師は、厚生労働省のマキャベリと言われている、佐久間という官僚に監視され操られていました。佐久間は、日本の超高齢化対策として、子供を減らすのではなく、老人を減らせばいい、と、考えていました。要するに、死にたい老人は死なせてやればいいという思想を持っているのです。佐久間は、そのために、香村を利用しようとします。

佐久間は人脈を増やし、地位を手にし、世論を操り、ハードを整え、着実に計画をすすめていきます。彼は日本を変えられるのでしょうか?

・・・という感じで、かなり複雑なストーリーでした。長さの割りに主要登場人物も多く、テンポ良くどんどん事件が起きて、飽きない。目新しさはないものの、楽しく読めました。現役の医師の方が、副業として書かれたとは思えないほど、文章も読みやすかったです。

ただ、問題提起小説として読むなら・・・。

新人医師の研修制度問題。麻酔医にかかるストレスの問題。大学病院内の出世争いと派閥対立などが、患者の不利益になる、いわゆる「白い巨塔」問題。組織ぐるみの医療情報の隠蔽の問題。患者側が裁判で医療ミスを証明するのがいかに難しいかという事。寝たきり老人の介護問題と、安楽死の善悪。超高齢化社会対策。etc。

たくさんの問題を詰め込みすぎて、頭がパンクしそうになって、何もじっくり考えられなかったのが残念です。医療ミス関係で1冊、ぴんぴんぽっくり関係で1冊、そんな風に分けたほうがよかったと思います。
| か行(久坂部羊) | 23:35 | - | - |
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