CATEGORIES
LINKS
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
▲ クリスマスの4人 井上夢人
クリスマスの4人クリスマスの4人
井上 夢人

光文社 2001-12

1970年12月25日、20歳の男女4人組がはめをはずし、ドライブ中の事故で人を殺してしまいました。4人は死体を処分し、事故は発覚することなく時が流れていきますが、4人の罪悪感は消えることがありません。しかし10年後、再会した4人の前に、死んだはずのその男が現れます。彼は死んだのではなかったのか?彼が口にする謎のセリフの意味は?4人の人生は?

小説は10年ごとの4章に分かれており、4人の30年間が描かれていきます。ミステリィであり、サスペンスでもあり、SFやファンタジーでもあるかもしれないような小説で、私の好みのタイプです。さらさらっと読めて面白かったです。

4人の人物像や、人間関係が、もっとしっかり描けていればいいのになあと思いました。個性的なキャラクターを楽しめたり、それぞれの悩みや苦しみに共感できたりすれば、あまりにあっけないように感じられる終盤の展開や、ラストシーンも、感動的だったのかもしれません。それと、この形式なら、もうちょっと時代ごとの風俗を描きこんだほうが、その角度からも読めて面白いんじゃないかなあと思いました。1970年のビートルズetcだけでなく、80年、90年、00年についても描きこんで欲しかったです。
| あ行(井上夢人) | 13:34 | - | - |
■ メドゥサ、鏡をごらん 井上夢人
メドゥサ、鏡をごらんメドゥサ、鏡をごらん
井上 夢人

双葉社 1997-02

ネタバレあり!!

作家・藤井陽三は、「メドゥサを見た」という奇妙な文を残して自殺しました。藤井の娘・菜々子の婚約者である「私」は、菜々子と共に陽三の遺稿を探すうちに、彼の自殺の理由に興味を持ち、調査を始めます。

わたしはミステリィが大好きなのですが、ミステリィの何が好きって、すべての謎がおさまるべきところにおさまっていく収束感が好きなのです。その快感を求めてミステリィを読んでいます。

ところがこの本にはそれがありません。最後まで読んでも答えが出なくて、謎が深まるばかりなんです。色んな解釈をすることができるんだけど、どの解釈でも完全には納得できなくて、誰か答えを教えて〜と言いたくなります。サイコサスペンスなのかホラーなのかすら定かではなく、今はいつで、誰が誰で、何が起こって、何が起こらなかったのか、すべてが不安定なまま終ってしまいます。読み終わった後、誰かと解釈を語り合いたくなるような本です。

作中で描かれる大量の死と、そして長野の田舎町で起こった悲劇的な事件と、それ以降その町に伝わる「呪い」。作中の出来事と雰囲気だけでも、十分に異様で恐いのですが、最後まで答えがわからないというという不安感が、読者の恐さを倍増させてくれて、読み終わったあとが1番恐い、そんな本でした。

私の好きなタイプのミステリィではないけれど、こういうのも、たまに読むとすごくいい!面白恐くて途中で読むのをやめられませんでした。楽しい読書タイムでした。
| あ行(井上夢人) | 14:36 | - | - |
■ オルファクトグラム 井上夢人
オルファクトグラムオルファクトグラム
井上 夢人

毎日新聞社 2000-01

連続殺人犯に姉を殺害されたミノルは、たまたまその場に居合わせて殴られ、1ヶ月も昏睡状態にありました。目覚めたとき、ミノルの世界は一変していました。犬並みの臭覚を身につけ、しかもそれを目で見ることができるようになったのです。

ミノルの見ている世界の描写が、ファンタジックで、美しく、魅力的でした。ミノルは匂いを、分子レベルで把握することができます。一つ一つの臭いの要素は独自の色と形を持った結晶のように見え、空気の流れと共に、常に動いています。それは海をただようクラゲのように見えるのです。ぜひ1度見てみたいです。綺麗なんだろうなあ!それに、彼が自分の見ているものが何の匂いであるかを学習していく過程が、すごくリアリティがあって面白かったです。少しずつ彼がその特殊な能力を使いこなせるようになり、料理を作ったり、行方不明になった友人を追ったり、姉を殺した犯人を捜そうとしたりする物語も楽しく読めました。長い本なのですが、一気読みしちゃいました。ラストの余韻も良かった!

ただ、ミノルの匂いの世界にまつわるストーリーと、連続殺人事件の謎が、上手に溶け合っていないような気はしました。

特殊能力を持ってしまったミノルの物語は、伝統的な超能力もののSFのパターンを踏襲していて、超能力の魅力でワクワクさせてくれると共に、超能力者が味わう孤独と悲哀が描かれていて、充実していました。匂いの世界の描写だけでなく、双子の弟であるトオルのエピソードも、恋人であるマミとの関係も、すっごく良かったんです。でも、連続殺人事件の犯人を追う、という、推理小説の縦糸とは関係のない動きが多すぎました。ミノルの匂いの世界にまつわるストーリーが良すぎて、ミステリィの方のストーリーが、かすんで見える。ちょっと惜しかったです。
| あ行(井上夢人) | 14:25 | - | - |
■ ザ・チーム 井上夢人
the TEAMthe TEAM
井上 夢人

集英社 2006-01

盲目で難聴の人気霊導師、能城あや子。彼女の百発百中の占いは、実は、仲間たちの調査によるものです。あや子には、マネージャーとして万事をしきる鳴滝昇治、ハイテクに強くハッキングや盗聴など様々な手段で情報を集める藍沢悠美、尾行や家宅侵入なども含めて、調査の実働部隊である草壁賢一、という3人の仲間がいます。このチームが、能城あや子の占いの的中率を高め、彼女を有名人にしました。

インチキ占い師を支える、犯罪者のチームの物語。それぞれに暗い過去あり。でも、けして暗い話にはなっていません。このチームが、あや子のいかさまを暴こうとするジャーナリストと戦いつつ、いくつかの犯罪の真実を明らかにして、人々を救ってしまう連作短編集。爽快で、痛快で、面白かったです。「霊視」や「占い」を、敵も味方も、主要人物の誰1人信じていないというのが、そういう、読後感の良さを生んでいるんだと思いました。私、オカルト、大嫌いなので。(細○数○とか、オー○の泉とか、大嫌い。)

ラストの引き際も見事で、「ああ、もっと読んでいたかったのに」と思いました。

軽い読み心地で、サラッと読めて、楽しい本なのですが、主人公、能城あや子の人生は、なかなかヘビーです。たくましい女性だなあ、と感動してしまいます。彼女と鳴滝の2人に関しては、今にいたる過去も、現在の心情もかなり明らかになっており、感情移入できました。チームの残りの2人について、また、4人が結びつくようになったいきさつについて、もっと、深く突っ込んで欲しかったなあという不満がなくもないです。

というわけで、続編希望!
| あ行(井上夢人) | 01:40 | - | - |
| 1/1PAGES |