ネタバレあり!!
作家・藤井陽三は、「メドゥサを見た」という奇妙な文を残して自殺しました。藤井の娘・菜々子の婚約者である「私」は、菜々子と共に陽三の遺稿を探すうちに、彼の自殺の理由に興味を持ち、調査を始めます。
わたしはミステリィが大好きなのですが、ミステリィの何が好きって、すべての謎がおさまるべきところにおさまっていく収束感が好きなのです。その快感を求めてミステリィを読んでいます。
ところがこの本にはそれがありません。最後まで読んでも答えが出なくて、謎が深まるばかりなんです。色んな解釈をすることができるんだけど、どの解釈でも完全には納得できなくて、誰か答えを教えて〜と言いたくなります。サイコサスペンスなのかホラーなのかすら定かではなく、今はいつで、誰が誰で、何が起こって、何が起こらなかったのか、すべてが不安定なまま終ってしまいます。読み終わった後、誰かと解釈を語り合いたくなるような本です。
作中で描かれる大量の死と、そして長野の田舎町で起こった悲劇的な事件と、それ以降その町に伝わる「呪い」。作中の出来事と雰囲気だけでも、十分に異様で恐いのですが、最後まで答えがわからないというという不安感が、読者の恐さを倍増させてくれて、読み終わったあとが1番恐い、そんな本でした。
私の好きなタイプのミステリィではないけれど、こういうのも、たまに読むとすごくいい!面白恐くて途中で読むのをやめられませんでした。楽しい読書タイムでした。