| 銀朱の花
金 蓮花
集英社 2003-12 |
両親を流行り病で亡くした14歳のエンジュ。彼女は叔母の家に引き取られ、召使のようにこき使われています。意地悪な従妹もいたりして、本当にシンデレラそのまま。村の人々も誰一人、エンジュに同情してはくれません。なぜならそれはエンジュが、左右の瞳の色が違い、額には赤い花の形の痣がある、という異形の持ち主だったからです。
それを気味悪がられ、虐げられてきたエンジュですが、実はそれが「聖痕の乙女」のしるしであることがわかります。エンジュはあれよあれよと言う間に都に迎えられ、貴族のお屋敷で貴婦人となるべく教育を受け、何も知らされないまま、即位したばかりの王様と結婚式をあげるはめに・・・。
というわけで、びっくりするほど型どおりのシンデレラ・ストーリーです。でも、結婚してめでたしめでたし、で、終ってはいません。奥手で真面目なエンジュの性格せいか、はたまた「白馬の王子様」であるはずなのに、不器用で口下手でいじめっ子にしか見えないカウルのせいか、本3冊分、しっかり苦労しています。でも、基本的には、読んでいるほうが照れて照れてしょうがない、激甘悶絶ラブストーリー。王様と王妃様は、おのろけ全開バカップルになってしまっています。
でも、女性なら下は小学生から上は視力のある限り、たまにはこういうお話もいいよね、と、思うんじゃないかな。愛あるシンデレラ・ストーリーは、乙女の永遠の憧れですよね。ミステリィとSFを偏愛し、連続殺人犯の動機を探ったり、人類滅亡を回避できそうになかったりする小説ばかり読んでいる私でさえ、たまにはこの種の物に手が出ます。
内容はしっかり「コバルト」ですが、金蓮花さんは文章が綺麗だし、心情描写も上手いし、読みやすいです。でも、一般文芸に移ってはこないだろうなあ。本当に「異世界ファンタジー×ラブストーリー」がお好きなんだと思います。あとがきなどから伝わってきます。
1話完結でないシリーズものは、完結した時に感想を書こう。と、思っているんですけど・・・。金蓮花さんのシリーズは、どこからどこまでを1つのシリーズだと思えばいいのか、よくわからない。
というわけで、最小単位のまとまりで、感想を書いてしまうことにしました。いくらなんでもエンジュ編は、これで終わりだと思うんですけど・・・違うかな?考えが甘いかな?またいつかひょっこりあらわれるのかもしれません。