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深く深く、砂に埋めて 真梨幸子
深く深く、砂に埋めて深く深く、砂に埋めて
真梨 幸子

講談社 2007-10-16

「今夜も、そして明日も、あなたとこうしていたい」

ただ、本能の赴くままに、天衣無縫に生きる一人の女。
そして、翻弄される男たち。その行く末は、
あまりに儚く、悲しい結末だった。
著者が何をしたかったのかわからない本でした。

叙述トリックをやりたかったんだっていうのはわかるんだけど、効果的に作用していないというか何というか。

帯の通りに一人の魔性の女とその周辺の男性の人間模様を描きたかっただけなら、あまりに人物が薄っぺらく、型どおりで、エピソードにもリアリティがなくて、物足りない。

昼ドラの原案企画書を読んでいるような感じがしました。映像化されたら楽しめるのかも。
| ま行(真梨幸子) | 21:26 | - | - |
● 女ともだち 真梨幸子
女ともだち女ともだち
真梨 幸子

講談社 2006-06-23

「決まっているじゃない、
私たちはいつまでも友達よ」

女同士の親密で濃厚な関係の底に沈殿しているのは闇のように黒い何か・・・・・・。女性の暗部を克明に描く!

帯より。
物語の中心人物は、ライターの楢本野江。単なるフリーライターから、名前つきで記事がのるようなノンフィクションライターにステップアップしたいと思っていた時期に、連続殺人事件がおこり、取材を始めます。

連続殺人事件の被害者の1人、ごく普通のOL、田宮瑤子。彼女は、高層マンションの最上階の部屋を、築3年の中古物件という事で、新築時に買った人の半分の値段で手に入れ、そのことから、嫉妬を買い、嫌がらせを受けます。

もう1人の被害者は、田宮瑤子と同じマンションの2階に住む吉崎満紀子。彼女のスキャンダラスな生活は、ネット上の様々な場所に克明に残っており、マスコミによって暴かれていきます。

そして、元モデルで、現在は「プチセレブ」生活を謳歌しているように見えた井沢詩織。彼女は、田宮瑤子の購入した部屋の、最初の住人だったのですが、近所に出来たもっといいマンションに住みたくて、その部屋を売ってしまいました。

瑤子の学生時代からの友人・小松佳苗は、野江の取材を受けるのですが、その時小さなウソをつきます。

そして、野江に「ヒステリックで無能」という記事を書かれてしまう、女検事。彼女は、司法試験に合格せずに検事になった特例検事だったため、コンプレックスの塊です。

読み終えて、えーと、誰と誰が女ともだちだったっけ?と、よーく考えないとわからなかったのは私だけでしょうか(笑)?よく考えればところどころに、過去の友情だの、ネット上のみの友情だの、ラストの大どんでん返しで明らかになる、隠された友情だのが散りばめられてはいるのですが、この本は帯にあるような、わかりやすい「女ともだち」の本ではありませんでした。なかなか複雑な構成で、2度読まないと、人間関係が把握できない感じです。

それぞれに「負けず嫌い」の女の心理のドロドロを、これでもかっていうくらいデフォルメして描いた、読み応えのある本でした。中心となる、立場は違うけれど、ほぼ同世代の6人の女性それぞれの暗部は、鳥肌がたつくらい、そら恐ろしいです。嫉妬や、優越感や、虚栄心でいっぱい。でも、どうせドロドロを描くなら、このくらいはやって欲しい、と、私は思います。これくらいデフォルメしてくれないと面白くない。それに、誇張されたほうがリアルに感じられることもあります。この本の6人の性格はリアルで、それに、痛々しくて切実でした。それに、このドロドロを、女だから、の一言で片付けないで、その生い立ちから人格形成の過程を描いていたのも良かったと思います。嫉妬も、優越感も、虚栄心も、女だけのものではありませんからね。

「ドロドロ」以外の部分で、ミステリーとしても面白い本でした。連続殺人の真相と、野江の記事や今後はどうなるのか、という2つの謎にひっぱられて、ぐんぐん読めます。事件のキーパーソンを間違えるあたりは、ちょっとわかりやすすぎたかな?無理があるというか・・・。瑤子さんの転職が、ステップアップのためのものだったかどうかなんて、ちょっと調べればわかったはずなのにね。でもまあそんなのは、些細な穴ですね。

読み終えてみれば、私、女検事さんは、かなり好きですね。ぜひ友達になりたい。瑤子さんや満紀子さんは、好きというにはあまりに現実離れした人でしたが、同情はできます。

絶対好きになれないのは、井沢詩織ですねー。いつも人と自分を比べては優越感を持ったり、悔しがったり、怒ったりしている。しかも、感情的で、その制御がきかない上に、あらわし方が陰険。女として甘い汁を存分に吸って生きていくつもりだったのに、そうはいかない人生に不満が蓄積して、噴き出している傍迷惑な人。この人が1番「女」の嫌な部分を体現しているように思いました。

中心人物の野江さんに関して、ネタバレなしで感想を書くのは難しいのでやめておきます。事件を記事にするライターという立場は、彼女をこの事件から少し距離を置いたところにおいていますが、間違いなく彼女こそ、この本の中心人物です。
| ま行(真梨幸子) | 11:41 | - | - |
▲ えんじ色心中 真梨幸子 
4062132109えんじ色心中
真梨 幸子
講談社 2005-11

by G-Tools

16年前に起きた「西池袋事件」。被害者は受験戦争を潜り抜けて超難関校に合格した中学生。自供した加害者は、その中学生の家庭内暴力に苦しみ、子供の将来を憂えた父親でした。しかし、懲役3年の刑が下った後、父親は突然無罪を訴え始めます。

派遣社員として、ストレスの多い生活に擦り切れる、久保という男の現在の生活が描かれる部分があり、落ちこぼれの少年と帰国子女の少女の触れ合いをノスタルジックに描いた過去の部分があり、そのほかに「西池袋事件」について語られる部分もあり、第1章は、とても複雑な構成になっています。そしてそれに、解決編である第2章がたった30ページほどくっついた構成になっています。

物語の構造がはっきり見えるのはもちろん、真の「事件」と「謎」が表面化するのも、第2章に入ってからです。ほぼ同時に、「西池袋事件」の真相もはっきりします。一応第2章で、すっきりはできるのですが・・・構成を複雑にしすぎたために、かえってあっけなさすぎる幕切れだと感じてしまいました。罪を犯した加害者にも、殺された被害者にも、共感したり同情したりできるほどの長さがありませんでした。

真梨さんは1作目の「孤虫症」では、その描写力で、私に恐怖の鳥肌をたたせてくれたのですが、あの力はどこへ・・・。この本も、おぞましい犯罪を扱った本なのですが、恐さを感じる前に、本は終わってしまいました。

独特の文章は、雰囲気作りに一役かっていて、よかったと思います。構成の複雑さは、よく組み立てたなあ、と、感心はしました。でも、それが、いいほうに作用していると思えませんでした。オーソドックスに「事件」を最初に出しておいたほうが、よかったのではないでしょうか。

真梨さんが、この独特の描き方で、何をしたかったのか、読者に何を感じさせたかったのか、さっぱりわからなかったです。真梨さんの評価は、次作を読むまで保留です。待ってます!
| ま行(真梨幸子) | 19:46 | - | - |
■ 孤虫症 真梨幸子
406212811X孤虫症
真梨 幸子
講談社 2005-04-01

by G-Tools

メフィスト賞も受賞したバイオ・ホラー・ミステリー。「なかなか勝ち組」の幸せな家庭の主婦には、誰にも言えない秘密の生活があった。彼女の周辺で全身に紫色の瘤が出来て死亡する奇病が発生する。やがて彼女自身にも恐怖はやってきて…

ミステリーなのでネタばれはしませんが、最後まで読んでみると、かなり工夫を凝らされた本であることがわかります。よーく考えないと、誰が誰で、本当は何がおこったのかわかりません。感心しました。

ここには好きな本の感想しか書かない、のですが、この本は正直「好き」とは言えません。色んな意味でグロテスクで、気持ち悪いし、恐いしで、鳥肌が立ちました。何度も読むのをやめようとしたのですが、やめたら余計に恐くなりそうで、最後まで読みました。作中何度か「えんがちょ」という言葉が出てくるのですが、一言で言うとそういう本です。とにかくすごいです。

写真ではわかりませんが、装丁が凝っています。表紙の手触りにものすごくこだわってるの。本屋で見かけたら、さわるだけでも、さわってみてください。それだけでこの本の雰囲気がわかります。

最初は携帯連載だったそうで、これを連載で少しづつ読むって…そりゃあスリル満点ですね。
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