1人の女性として、ハルカを尊敬します。かっこいです。どこまでも前向きなところ、誰からもいい所を見つけるところ、年齢に甘えずにきちんと暮しているところ、女を捨てないところなど、ハルカに見習いたい!こんな大人の女になりたい!と思った部分は、たくさんありました。
でも。必要以上にストーリーをドラマチックにしないためでしょうか。ハルカは、この時代の人としては、恵まれ過ぎているような気がします。お金持ちというほどではなくても、教育界のエリートの娘として生まれ、嫁ぎ先の舅も姑も本当にいい人たち。戦争によって、新婚早々夫とは離れなければなりましたが、運命が狂う、というほどの事でもなく。逆に、戦争中にも豚肉だの寿司だのを入手できる立場にいて、妊娠する事もできた。戦争で、夫を初め家族を誰も失わなかった。戦後も、棚ボタのように仕事にありつけた。時代の割には、苦労が少なく、ラッキーだったのではないでしょうか。
だから、結局この本は、ハルカと夫の関係を軸にした、男と女の物語になってしまっていて、やっぱり姫野さんだなあ、って感じです。その部分では、ハルカはずいぶん苦悩し、深いんだか浅いんだかわからない恋愛哲学が次々に登場するけれど、それ以外の部分は薄かった・・・。ちょっと期待はずれでした。
お互いに浮気して、見てみぬふりをしつつ、それをスパイスに安定するような結婚生活を、私はラッキーとは思えないし、思いたくもない。ハルカは、素敵な女性だと思うけれど、大介さんとの関係は不幸だと思う。ハルカには経済力があったんだし、大介は女遊びが激しく、経済的にも不安定な、はっきり言ってダメ男。性病をうつされてまで一緒にいたいほど、愛していた風でもない。離婚しなかったのは、やはり、時代のせいでしょうか。大介が、最後に古女房の元に戻ってくる辺りも、ずるくて嫌い。まあつまり、私は大介が嫌いだ、ってそれだけなんですけど(笑)。
帯を信じて、激動の時代をごく平凡に生き抜いた女の一生、というのを期待すると、薄くて浅い物語に感じると思います。これは、80を超えても「女」であることから手を放さない、ハルカの男性遍歴、として読むのが一番満足できると思います。ハルカ・エイティ、素敵な女性です。読み応えのある一冊ではありました。