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▲ 桃 姫野カオルコ
桃
姫野 カオルコ

角川書店 2005-04-01

「ツ、イ、ラ、ク」の登場人物たちのその後が描かれた6つの短編集。

「ツ、イ、ラ、ク」では、小さな田舎町で、教師が14歳の教え子と激しい恋をしました。それを見ていた人々が、その時何を感じていたのか、その後どう成長して、今毎日をどう生きているかが描かれています。

わたしは「ツ、イ、ラ、ク」が、好きなタイプの小説ではないし、そんなにすごい小説だとも思いませんでした。都会育ちの私には、田舎町に暮す思春期の若者の閉塞感は、想像することしかできないので、あまり共感はできません。14歳の頃の自分とは、主人公があまりに違いすぎて、やっぱり共感のしどころがなくて、だから結局、ふーん、っていう感想でした。

あれって、14歳の少女の生活と気持ちをとにかく全部書きました、っていう小説でしたよね。そこに激しい恋があったので、小説としてきちんと成立しているわけですが、「さあ、全部書きましたよ。あなたが、読み取ってください。」と著者に言われたような気がする本でした。でも、とにかく私が共感できるところが全然ないような本だったので、あんまり読み取れなかったんですよね。私は読み取れていないぞ、ということだけは、わかる。そんな本でした。

この「桃」で、「ツ、イ、ラ、ク」を、どう読んだら良かったのか、色んな指針が示されているような気がしました。この2冊は、両方読むべきなんですね。「桃」は、「ツ、イ、ラ、ク」を補完する小説としては、素晴らしいと思います。
| は行(姫野カオルコ) | 23:55 | - | - |
▲ ツ、イ、ラ、ク 姫野カオルコ
ツ、イ、ラ、クツ、イ、ラ、ク
姫野 カオルコ

角川書店 2003-10

昔は、14歳で結婚する人もいたくらいだし、女子の精神年齢的には、14歳でのこの恋愛は、不自然でもなんでもない。でもまあ、要約してしまえば、14歳の少女と教師の不純異性交遊(死語・・・)なわけで、これは犯罪小説と言えなくもない。あのラストがあるから、なんとか成立している恋愛小説ですね。

主人公、隼子の子供時代を描いた前半が、私には退屈で、彼女に感情移入できませんでした。おかげで最初から最後まで、この本には入り込めないまんま。ああ、退屈だ〜と思いながら読んでいたら、性描写がどどっと入ってきて、表紙から予想済みではあったけれどエロいな、と、思っていたら、唐突なラストで終了、って感じでした。別に泣けなかった・・・。

ものすごく評判のいい作品なんですよねー。私には合わなかったなあ。もうちょっと短くまとめることは出来なかったのかなあ。多くの人の共感を読んだのであろう細かいエピソードや心理描写が、私の鈍い感性には無駄だったようで・・・ごめんなさい。特に好きでも、嫌いでもない一冊でした。「桃」を読んだら、感想が変わるのかもしれませんね。

あ、でも、この手の本に、ユーモアを持ち込んだ姫野さんは、さすがだと思います。大人ですね。笑える部分は好きでした。(特にあの、マークシート式のテストには笑わせてもらいました。図書館本なのにチェックしたかった(笑))。最近本当に多い、若手の純文学系女性作家の皆さんとは、そこが一味違うと思いました。

かなり遅ればせながら、この本を読んだきっかけは、「『ツ、イ、ラ、ク』の法則によると、14歳にセックスをさせると、直木賞は取れない」という定理を、どこかで見かけたからです。今日は、直木賞の発表日。
| は行(姫野カオルコ) | 08:17 | - | - |
■ ハルカ・エイティ 姫野カオルコ
4163243402ハルカ・エイティ
姫野 カオルコ
文藝春秋 2005-10-14

by G-Tools

1人の女性として、ハルカを尊敬します。かっこいです。どこまでも前向きなところ、誰からもいい所を見つけるところ、年齢に甘えずにきちんと暮しているところ、女を捨てないところなど、ハルカに見習いたい!こんな大人の女になりたい!と思った部分は、たくさんありました。

でも。必要以上にストーリーをドラマチックにしないためでしょうか。ハルカは、この時代の人としては、恵まれ過ぎているような気がします。お金持ちというほどではなくても、教育界のエリートの娘として生まれ、嫁ぎ先の舅も姑も本当にいい人たち。戦争によって、新婚早々夫とは離れなければなりましたが、運命が狂う、というほどの事でもなく。逆に、戦争中にも豚肉だの寿司だのを入手できる立場にいて、妊娠する事もできた。戦争で、夫を初め家族を誰も失わなかった。戦後も、棚ボタのように仕事にありつけた。時代の割には、苦労が少なく、ラッキーだったのではないでしょうか。

だから、結局この本は、ハルカと夫の関係を軸にした、男と女の物語になってしまっていて、やっぱり姫野さんだなあ、って感じです。その部分では、ハルカはずいぶん苦悩し、深いんだか浅いんだかわからない恋愛哲学が次々に登場するけれど、それ以外の部分は薄かった・・・。ちょっと期待はずれでした。

お互いに浮気して、見てみぬふりをしつつ、それをスパイスに安定するような結婚生活を、私はラッキーとは思えないし、思いたくもない。ハルカは、素敵な女性だと思うけれど、大介さんとの関係は不幸だと思う。ハルカには経済力があったんだし、大介は女遊びが激しく、経済的にも不安定な、はっきり言ってダメ男。性病をうつされてまで一緒にいたいほど、愛していた風でもない。離婚しなかったのは、やはり、時代のせいでしょうか。大介が、最後に古女房の元に戻ってくる辺りも、ずるくて嫌い。まあつまり、私は大介が嫌いだ、ってそれだけなんですけど(笑)。

帯を信じて、激動の時代をごく平凡に生き抜いた女の一生、というのを期待すると、薄くて浅い物語に感じると思います。これは、80を超えても「女」であることから手を放さない、ハルカの男性遍歴、として読むのが一番満足できると思います。ハルカ・エイティ、素敵な女性です。読み応えのある一冊ではありました。
| は行(姫野カオルコ) | 08:15 | - | - |
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