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▲ 夜の光 坂木司
4103120517夜の光
坂木 司
新潮社 2008-10

by G-Tools
慰めはいらない。癒されなくていい。本当の仲間が、ほんの少しだけいればいい。

本当の自分はここにはいない。高校での私たちは、常に仮面を被って過ごしている。家族、恋愛、将来……。問題はそれぞれ違うが、みな強敵を相手に苦戦を余儀なくされている。そんな私たちが唯一寛げる場所がこの天文部。ここには、暖かくはないが、確かに共振し合える仲間がいる。そしてそれは、本当に得難いことなのだ。
坂木さんの作品の中では、初期のひきこもり探偵シリーズが好きで、だから、最近の健全路線からたまにはちょっと外れて、昔みたいにちょっと病んだ感じの小説も書いてくれないかな、なんて思ってました。だから、この作品が病んだ感じの小説だったので、それだけでちょっと嬉しかったです。天文部のメンバーの、一風変わった友情の描き方も好きでした。特につるむわけでもなく、協力し合って何かを目指すわけでもなく、打ち明け話や悩み相談で絆を深めるわけでもない。つかず離れずの微妙な距離感で付き合っているんだけど、深い所で、心を許し合っている。王道ではない友情や仲間を描いていて、新鮮だったし、いいなあと思いました。

ただ、なんだろう、この小説は、何だかとても、わかりにくかったんですよねー。共感しにくいというか、無理があるというか。

天文部のメンバーは、仲間以外の人といるときは、自分を押し殺し、本心を隠して生きていて、そんな自分たちの事を「スパイ」と呼ぶんです。自分たちは「スパイ」なので、お互いはコードネームで呼びあわなければならない、なんていう掟もあったりして、それはまあ、一種のゲームというか遊びなんですけれども、その遊びにかなり依存してしまっているメンバーの痛々しさが、その病んだ感じが、私の求めていた「初期みたいな坂木さんの本」って感じで、良かったんです。良かったんですけれども、その設定の説明が足りない上に、無理がありすぎる。なんだか残念な気がしてしまった一冊でした。
| さ行(坂木司) | 16:01 | - | - |
■ 先生と僕 坂木司
先生と僕先生と僕
坂木 司

双葉社 2007-12

大学に入ったばかりの僕、伊藤二葉は極度の恐がりで、人が死ぬような推理小説やミステリーの類は絶対読めません。それなのに、押しに弱い僕は友人に誘われて、推理小説研究会に入るはめになってしまいます。しかたなく、夕暮れの公園で推理小説を読んでいた僕は、ミステリーファンの中学生隼人にナンパ(?)され、彼の家庭教師をやることになります。二葉と隼人が身近で起こる謎を解く連作短編集です。

この本の中で隼人が二葉に、何冊かの「人が死なないような」ミステリーを紹介しますが、この本もそんな感じで、人が死なない、日常の謎系のミステリーです。隼人に言わせるとそういった謎は「ロマンがない」そうですけど。確かにインパクトは薄いですが、それなりに楽しめました。

隼人の中学生らしからぬ小悪魔キャラと、二葉の恐がりでイケてない田舎者キャラの対比が面白く、2人とも好きになれるキャラクターで、続編が読みたいなあと思いました。

二葉の記憶力ってかなり特殊だし使えると思うので、まだまだ色んな物語が作れそうだと思います。二葉が推理小説研究会に所属しているという設定も、もっと生かしてほしかったと思うし、坂木さんの初期の作品が好きだった私は、隼人の家庭環境や内面にもっと踏み込んで、不健康な作品になってみるのもアリだな、なんて思ったりもしてます。うん、本気で続編が読みたいです。
| さ行(坂木司) | 10:06 | - | - |
■ ホテルジューシー 坂木司
評価:
坂木 司
角川書店
¥ 1,470
(2007-09)

大家族の長女に生まれ、天下無敵のしっかり者にして直情一本勝負系の女子大生、ヒロちゃん。ところがバイトにやってきた那覇のボロ宿、ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違った。最初の洗礼は頼りにしていた先輩による置き去り。そしてあやしげな同僚達の存在が平穏な日常をいやがうえにもイベント化する。昼夜二重人格のオーナー(代理)や、沖縄的テーゲー(アバウト)を体現するような双子の老ハウスキーパー、ひっきりなしにやってくるワケありのお客さんたちにも翻弄されながら、ヒロちゃんの夏は過ぎてゆく――南風が運ぶビルドゥングスミステリ、待望の書籍化!!
「シンデレラ・ティース」のサキの親友、ヒロちゃんの一夏の物語。沖縄に旅行に行きたい!それも、長期滞在したい!と思ってしまう本でした。観光地にも行きたいけれど、沖縄の人々の暮らしというものを、観光よりももう少し深く覗いてみたい、そう思いました。特に、出てくる食べ物が美味しそうでね。食べてみたいな、うん。

ヒロちゃんは、好き嫌いが分かれるタイプの主人公だと思います。私は、ヒロちゃんよりかなり年上なので、ヒロちゃんがこれから年を重ねて少しは落ち着いて、色んな経験をして色んな事がわかるようになったら、どんなに魅力的な女性になるだろう、と、考えて好感を持ちました。自分の損得しか考えていない人が多い中で、他人に興味を持ち、親切にしてあげたいという気持ちを持っていて、それを行動に移す事を厭わないという、それだけで、彼女は今でも素敵な人だと思います。それに、いいお母さんになるだろうなあ〜。

でもまあ、現時点でのヒロちゃんは、若さゆえに、ちょっと行きすぎではある。おせっかいで、暑苦しくて、こんな子嫌い!っていう人もいるだろうな、と、想像はつきます。特に、都会で育って、核家族で、家族全員が健康で、ひどい災害や犯罪に巻き込まれた事のないような、ま、要するに私の周りにいるごく普通の人たちは。何不自由なく恵まれた暮らしをしている時には、こういう人のありがたみって、わからないものなんですよね〜。

だから、「シンデレラ・ティース」のように、軽い気持ちで人にオススメできる本、とは言えないかもしれないです。でも、私は好きでした。いい本だと思いました。
JUGEMテーマ:読書


| さ行(坂木司) | 02:29 | - | - |
■ シンデレラ・ティース 坂木司
シンデレラ・ティースシンデレラ・ティース
坂木 司

光文社 2006-09-21

主人公は、歯医者が大嫌いなサキ。大学2年の夏休み、歯科医である叔父の勤めるデンタルクリニックで、受付のアルバイトをするはめになってしまいました。とても個性的だけれど、仕事に対しては本当に真面目で、理想を追求するスタッフたちと共に、訪れる患者さんの虫歯だけでなく、小さなお悩みも解決していきます。坂木さんらしい、日常の謎系連作ミステリー短編集でした。いい人と、優しい人ばかりが出てきます。

歯医者が嫌いというのは、「歯科治療恐怖症」という立派な病気なんだそうです。私も、歯医者は苦手なので、サキの気持ちはよくわかりました。デンタルクリニックの裏側を扱った、お仕事小説として面白かったです。まあ、とても理想的なクリニックで、「裏側」とまでは言えないかな。本当にこんなクリニックがあるのなら、私もここに行きたいです!

「遊園地のお姫様」という短編が、1番印象的でした。このクリニックの人は、本当に優しい、いい人ばかりです。いいお話でした。たとえば、サキの一夜漬けの話。歯医者嫌いだったサキにプロ意識が芽生えたりなんだり色々あって、サキは歯科の勉強をするのですが、恐くて、症例写真を直視できず、飛ばし読みをしてしまうんです。それについて、後からサキが涙を流さんばかりに反省するのですが・・・本当に、サキはいい子だ!本当に優しい子だ!もちろん、謎解きをする歯科技工士の四谷さんもかっこいいし、お姫様こと常連の知花ちゃんもかわいいし、叶先生は理想的な歯科医です。

それから、この本では、サキの初めての「本物の恋」も描かれます。私、サキに(悪いところが)そっくりの性格なんですよねー。サキの過去と同じような、受け身で、辛くない恋愛ばかり、若い頃はしていました。さすがにそこからはとっくに卒業しましたが、サキのように、新しい自分に変わる事が出来ないまま、現在に至っています。だから、個人的には、サキに超共感の小説でした。

それに、確実に上手くなっているように思います。著者と作品の間に、いい感じの距離ができて、文章が読みやすくなっていると感じました。それに、1冊の本になったときの構成のバランスも、全然違和感を感じなくなりました。(今までの作品には、こういう事をちょっと感じてたんです。なんとなくアンバランスな作品を書く人だよな、って。)

この作品なら、安心して人にオススメできます。「普段あまり本を読まない友達」や「バイト先の本好きの生徒」に、面白い本ありませんか?って聞かれるという、超難しいシチュエーションにも対応できます。この本は、いい!普通に、いい!

でも・・・。なんか、坂木司さんが普通になっちゃったなあ、っていうのは、私には寂しい感じがして・・・なんとなくそれは残念で・・・。

デビュー作の「青空の卵」シリーズは、色んな意味で、つっこみどころ満載で、文句をつけたい事がたくさんあったんですけど、でも、強い魅力があったんです。私の少ないボキャブラリーでは、理由が言葉にならないけど、強い強い引力。それを、この本からは、感じられなかった。どうしてだろう?

次作の予告があとがきにあったので、ファンとしてはそれを読むまで、なんとなく落ち着きません。
| さ行(坂木司) | 01:20 | - | - |
● 切れない糸 坂木司
切れない糸切れない糸
坂木 司

東京創元社 2005-05-30

うん。これは、素直に良かった!オススメ!

日常の謎系ミステリィの、連作短編集です。主人公は、新井和也。大学卒業が近づいても就職が決まらず困っていたところ、急に父親が亡くなって、思いもよらなかったことに、家業のクリーニング屋を継ぐことになってしまいました。クリーニングに関しては素人の和也ですが、母親とパートのおばちゃんトリオがカウンターを仕切り、アイロン職人のシゲさんが土台を支え、師匠のように和也を教え、店はなんとか回っていきます。和也も、少しずつプロのクリーニング屋としての自覚を持ち、商店街での責任を果たし、経験を積んでいきます。地に足のつかない学生が、成長していく青春小説として、また、お仕事小説として、いい本でした。その面では、シゲさんという人物がとっても素敵なキャラクター。シゲさん、いい人だなあ。

もちろんミステリィなので、ちゃんと謎があって、探偵がいて、解決編があります。謎解きメインで読んでしまうと、ちょっと弱い小説かもしれませんが、クリーニング屋という仕事と関わる謎が多くて、へぇ〜、と勉強になることがたくさんありました。どんな仕事でも、奥って深いのね。

探偵役は、和也の大学の友人で、近所の喫茶店で働く沢田です。彼は、和也が持ち込んでくる謎の真相を、和也の話を聞くだけで見抜いてしまう、いわゆる安楽椅子探偵です。この2人のコンビがいいんです。

「青空の卵」シリーズの「鳥井」と「坂木」ほど、「和也」と「沢田」の関係は、病的ではないし歪んでいません。それぞれが、自分の足でちゃんと立とうとしている。捨てられた動物や困った人を、助けずにはいられないという、和也の「生き物係」体質と、どんな人にも親切だけど、どんな人とも距離を置いて接してしまう「根無し草」系の沢田。2人の友情は、それぞれにとって特別なものではあるけれど、病的に依存しあうようなものではない。だから、「青空の卵」シリーズより、ずっと読みやすかったし、より多くの人に受け入れられると思います。こんな友情なら、うらやましい。ラストも、爽やかで好きです。
| さ行(坂木司) | 11:07 | - | - |
▲ 動物園の鳥 坂木司
動物園の鳥動物園の鳥
坂木 司

東京創元社 2004-03-23

ネタバレ警報!
ついでにちょっと酷評かもしれない警報!

「引きこもり探偵」鳥井が、友人、坂木の持ち込んでくる謎を解決するミステリーシリーズの最終巻。とうとう連作短編形式は放棄され、長編で締めにかかっています。鳥井が引きこもりになった原因が明らかになり、そこに坂木がどう関わったのかも示され、その「原因」と対決が行われます。さすが、最終巻で、読み応えがありました。

誰から見ても「いい子」の松谷さんという人が、この巻で新しく登場するのですが、彼女を鳥井が嫌いだといいます。私は、松谷さんにそっくりの女の子を知っていて、彼女のその松谷さんとそっくりの「こだわり」に、ものすごく迷惑をかけられ続けた経験があるので、すかっとしました。ほんっと、ああいう子は、嫌いです。

ただ、ラスト。二人の関係に関しては。これは・・・何の解決にもなってないんじゃ・・・と、思うのは、わたしだけ?解決の第一歩にも達してないと思うんですけど・・・。

坂木と一緒じゃなければ、外出できなかった鳥井が、1人で坂木の家まで来た、というのはたしかに進歩かもしれませんが、それは鳥井自身の意思ではなく、坂木に言われたから、しかも・・・ほとんど脅迫されたから。これじゃあ、鳥井、今までと何にも変わってないじゃん。しかもこの間の鳥井の苦悩に関しては描写がなく、読者の想像力にゆだねられていたりするわけで、著者の踏み込みも浅い。

とりあえず、坂木の側に、本気で自分たちの問題を解決しなければならないという意識が芽生えたのが、収穫っていうか、成長っていうか、この本の解決編ってことなんでしょうね。でも、二人の共依存の問題は、鳥井のほうが自立したい、あるいは、自立しなければ、と、自分で思わなければ、解決の第一歩にもならないと思うんですけど。

鳥井、成長しろ!抜群に頭が良くて、人の気持ちもわかるあなたが、本3冊かかって、本質的にまったく成長しなかったというのは、残念です。

ラスト直前までは、かなりいい感じで進んでいたんですよね。ヒューマンドラマとしてもミステリーとしても面白いストーリーの中で、鳥井の心を柔らかくし、鳥井が外に出てくるのを、うまく助けてくれそうな人材も少しずつ揃って。坂木も前作で、自分の問題を自覚して。あとは、鳥井が外に出たいと、自分で思ってくれるのを待つ、という状態になっていたのに。その後もきっと、たくさんの問題が出てくると思うけど、せめてそこまでは、書いて欲しかったのに。

小説の終るポイントが、その手前の「ここ」だという事に、ひきこもりや共依存に関する取材不足と、著者の力量不足を感じます。(ああ、ごめんなさい。生意気なこと言って・・・。もちろん、私がちゃんと読めていない、っていう可能性も多々あります!)まあ、これ以上まじめに描いてしまうと、暗くなりすぎるし、温かくもなくなるし、違う雰囲気の本になってしまうから、しかたなかったのかな。うーん。

BL本、あるいは、ライトノベルとして出ていれば、私もかなりの高評価をしたと思います。でも、大人の読む本としては、もう一息、頑張って欲しかったです。もう一歩、踏み込んで欲しかったです。残念!
| さ行(坂木司) | 23:38 | - | - |
■ 仔羊の巣 坂木司
仔羊の巣仔羊の巣
坂木 司

東京創元社 2003-05

シリーズ第2作目。

「卵から巣へ」という、とても読みやすくて、しかも的を射た解説がついていて、私が言うべきことなど何もなし、という感じです。

□ 野生のチェシャ・キャット
相変わらず、鳥井くんの推理の見事さにはあっと言わされて、面白い短編でした。でもそこよりもっと印象的だったのは、前作「青空の卵」で鳥井・坂木と再会した滝本の鋭さですね。
「一度聞いておきたかったんだけどな。鳥井はともかく、お前はあいつと世界のたった一つの窓口でいることに、納得しているのか?それとも、誰にもなつかない動物のオンリーワンであることを、杖にしてすがってるのか?」

「お前は、鳥井を独り立ちさせるために、あいつを突き放すことが出来るのか?」
二人の関係を、なんか変だよな〜とまでは思えても、それを外側からここまで鋭く分析するのは難しいと思う。しかもそれをぶつけるべき相手に、しっかりぶつけているあたりが、大人の親切。単なる体育会系の大味な男かと思っていたら、違いました。やるなあ、滝本。そしてやっぱり坂木、かなり病んでますねー。
「僕はやはり、この生き物を手放すことなどできない。」
□ 銀河鉄道を待ちながら
□ カキの中のサンタクロース
この2編は、二人の関係はあまり成長がなく、相変わらずラブラブ(?)です。(坂木さんは覆面作家だそうですが・・・絶対この方は女性だと思います・・・。だってもう、やっぱりどう読んでもBLなんだもん。)でも、鳥井のいくつもの推理がさえている物語。父親との関係に悩む中学生の少年、利明の悩みを解決してあげたくだりは読んでいて気持ちよかったです。この事件で、地下鉄の駅員のおじいさん、栄三郎さん、女子高生の矢崎さん、PTSDによる閉所恐怖症と折り合いながら明るく生きている寺田さん、と、二人にまた友人が増えました。特に、栄三郎さんには今後、期待できそうです。
多分、栄三郎さんは、利明くんや鳥井に何かを教えようとしてくれているのだと思う。それは彼らが教わる機会を持たなかった、強い父親からの言葉なのかもしれない。そう、真正面から自分を見つめてくれる、年上の男が僕らには必要だ。優しい女性からは教わることのできない、何か。

それは観念としての拳。げんこつの正しい使い方なのだ。
3作目で、鳥井・坂木の関係を、どうたたんでくれるのか、楽しみ。この作者はなんで、坂木に自分の名前を与えたんだろう。そこも、ちょっと気になります。
| さ行(坂木司) | 12:37 | - | - |
■ 青空の卵 坂木司
青空の卵青空の卵
坂木 司

東京創元社 2002-05

再読。出版されてすぐ読んで、続編が出たら読みたいと思っていたにも関わらず・・・続編が2冊も出て、シリーズが完結していることを最近まで知りませんでした。

帯には「ひきこもり探偵」の文字。これは、面白いキャラ設定ですよね。これだけで読んでみようという気にさせられます。まあ、自宅でできるとはいえプログラマーという職を持っていて、坂木という友人だけとはいえ部屋にもいれるし、一緒に食事をし外出もするのですから、彼は「ひきこもり」ではないような気がしますけれど。

この本は、そんな「ひきこもり探偵」鳥井が、友人の坂木司が持ち込んでくる謎を、優れた推理力で解決する、日常の謎系連作ミステリィ短編集です。鳥井が謎を1つ解くたびに、鳥井が接触できる人間(友人)が増えていく。坂木と2人だけっだった鳥井の世界が、ほんの少しずつ広がっていく。そんな本です。優しい人ばかりが出てくる、あったかくていい本って感じです。

でも、続編が出たのであれば、これはこのまま、単なる優しい本では終りませんね。

この本では、鳥井に「ひきこもり」という問題があるという点に、焦点があてられています。料理が得意で、全国の銘菓を取り寄せることを趣味にしていて、どうやら家族というものに憧れているらしい。まだすべてが明らかになってはいないようですが、過去に家族に関わるなんらかのトラウマを抱えているのでしょう。人間を極度に恐れ、外出を恐れ、坂木だけが世界との唯一の窓口。たしかに、鳥井は異常です。

でも、鳥井と坂木は、明らかに共依存関係にあります。二人が共依存関係にあるなら、坂木もまた異常なはずです。外資系の保険会社に勤め、面倒見がよく、一見普通の社会人に見える坂木ですが、鳥井にたいする態度は、単なる友情というには、執着が強すぎるように見えます。このシリーズはおそらく、坂木の異常も明らかになり、二人の共依存関係が正常な友情に改善される物語なのでしょう。鳥井が外の世界に出られるようになるのは、その後のはずです。

共依存で依存度が高いのは、往々にして「一見依存されているように見える側」なんですよね。親子のようなものです。子供が巣立っていくとき、子供は喜びと希望で胸がいっぱいだけれど、親は寂しく感じ、気が抜けて、鬱状態になったりもする。鳥井がどう成長し、坂木がそれをどう受け入れるのか、その過程には絶対に苦しい葛藤があるはずで、そこをどう描いてくれるのか、興味深いです。

っていうか、今のところほとんどライトノベル(しかもBL)であるこの本の著者に、それをちゃんと描けるのか?わたしはそんな意地悪な気持ちで、続編を読もうとしている、悪い読者です(笑)。

・・・とか言って、全然違うストーリー展開になったらどうしうよう(笑)。
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