2013.08.16 Friday
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夜の光 坂木 司 新潮社 2008-10 by G-Tools |
慰めはいらない。癒されなくていい。本当の仲間が、ほんの少しだけいればいい。坂木さんの作品の中では、初期のひきこもり探偵シリーズが好きで、だから、最近の健全路線からたまにはちょっと外れて、昔みたいにちょっと病んだ感じの小説も書いてくれないかな、なんて思ってました。だから、この作品が病んだ感じの小説だったので、それだけでちょっと嬉しかったです。天文部のメンバーの、一風変わった友情の描き方も好きでした。特につるむわけでもなく、協力し合って何かを目指すわけでもなく、打ち明け話や悩み相談で絆を深めるわけでもない。つかず離れずの微妙な距離感で付き合っているんだけど、深い所で、心を許し合っている。王道ではない友情や仲間を描いていて、新鮮だったし、いいなあと思いました。
本当の自分はここにはいない。高校での私たちは、常に仮面を被って過ごしている。家族、恋愛、将来……。問題はそれぞれ違うが、みな強敵を相手に苦戦を余儀なくされている。そんな私たちが唯一寛げる場所がこの天文部。ここには、暖かくはないが、確かに共振し合える仲間がいる。そしてそれは、本当に得難いことなのだ。
先生と僕 坂木 司 双葉社 2007-12 |
大家族の長女に生まれ、天下無敵のしっかり者にして直情一本勝負系の女子大生、ヒロちゃん。ところがバイトにやってきた那覇のボロ宿、ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違った。最初の洗礼は頼りにしていた先輩による置き去り。そしてあやしげな同僚達の存在が平穏な日常をいやがうえにもイベント化する。昼夜二重人格のオーナー(代理)や、沖縄的テーゲー(アバウト)を体現するような双子の老ハウスキーパー、ひっきりなしにやってくるワケありのお客さんたちにも翻弄されながら、ヒロちゃんの夏は過ぎてゆく――南風が運ぶビルドゥングスミステリ、待望の書籍化!!「シンデレラ・ティース」のサキの親友、ヒロちゃんの一夏の物語。沖縄に旅行に行きたい!それも、長期滞在したい!と思ってしまう本でした。観光地にも行きたいけれど、沖縄の人々の暮らしというものを、観光よりももう少し深く覗いてみたい、そう思いました。特に、出てくる食べ物が美味しそうでね。食べてみたいな、うん。
シンデレラ・ティース 坂木 司 光文社 2006-09-21 |
切れない糸 坂木 司 東京創元社 2005-05-30 |
動物園の鳥 坂木 司 東京創元社 2004-03-23 |
仔羊の巣 坂木 司 東京創元社 2003-05 |
「一度聞いておきたかったんだけどな。鳥井はともかく、お前はあいつと世界のたった一つの窓口でいることに、納得しているのか?それとも、誰にもなつかない動物のオンリーワンであることを、杖にしてすがってるのか?」二人の関係を、なんか変だよな〜とまでは思えても、それを外側からここまで鋭く分析するのは難しいと思う。しかもそれをぶつけるべき相手に、しっかりぶつけているあたりが、大人の親切。単なる体育会系の大味な男かと思っていたら、違いました。やるなあ、滝本。そしてやっぱり坂木、かなり病んでますねー。
「お前は、鳥井を独り立ちさせるために、あいつを突き放すことが出来るのか?」
「僕はやはり、この生き物を手放すことなどできない。」□ 銀河鉄道を待ちながら
多分、栄三郎さんは、利明くんや鳥井に何かを教えようとしてくれているのだと思う。それは彼らが教わる機会を持たなかった、強い父親からの言葉なのかもしれない。そう、真正面から自分を見つめてくれる、年上の男が僕らには必要だ。優しい女性からは教わることのできない、何か。3作目で、鳥井・坂木の関係を、どうたたんでくれるのか、楽しみ。この作者はなんで、坂木に自分の名前を与えたんだろう。そこも、ちょっと気になります。
それは観念としての拳。げんこつの正しい使い方なのだ。
青空の卵 坂木 司 東京創元社 2002-05 |