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■ 赤朽葉家の伝説 桜庭一樹
赤朽葉家の伝説赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹

東京創元社 2006-12-28
戦後間もない頃の鳥取県紅緑村、幼かった万葉は「辺境の人」に村に置き去りにされ、村の若い夫婦に引き取られ育てられる事となった。見た目も普通の少し子供と違い、文盲でもあったが、一方で不思議な予言をしたり通常は見えないものが見えたりしたため「千里眼」と呼ばれるようになる。やがて、村の名家「赤朽葉家」の大奥様、赤朽葉タツと出会い赤朽葉家に輿入れするように言われ、「赤朽葉家」三代の物語が始まる。
読み応えのある長編で、面白かったです。構成がしっかりしていて、エピソードに緩急があり、最後までだれずに読み終える事が出来ました。ライトノベル作家だった桜庭さんが、一般文芸の世界で認められるきっかけとなった一冊、だそうですね。うん、納得です。

たかだか60年か70年の間に、日本の経済や産業や文化の発展に伴い、村社会も、若者たちの考え方も、こんなに変化したんだなあ、というのが興味深かったです。それが良い事なのか、悪い事なのかは置いておいて。その時代、その時代ごとに、逃れようのない試練があり、それをしたたかに生き抜いた女性たちが描かれていて、感慨深かったです。

このミスでランクインした本であることを知らずに読んでいたので、第3部で突然ミステリーになった時、ちょっと面食らいました。でも、それまでの伏線がしっかりと生きて、まあまあ面白かったです。第1部と第2部がすごく迫力があったので、第3部のなぞ解きがあっさりしすぎていて、ちょっと薄く感じられたのが残念ではありましたが、それでも大満足の読書でした。
JUGEMテーマ:読書
| さ行(桜庭一樹) | 11:51 | - | - |
■ 少女七竈と七人の可愛そうな大人 桜庭一樹
少女七竈と七人の可愛そうな大人少女七竈と七人の可愛そうな大人
桜庭 一樹

角川書店 2006-07

桜庭一樹さんが、少女を主役に、大人向けの本を書き、ハードカバーで出す。おいおいおい、大丈夫?うーん、ちょいとばかり心配だ・・・。というのが、読む前の正直な気持ちでした。ちまたでは高評価らしい「少女には向かない職業」が、わたしには、そんなにすごいとは思えなくて、ライトノベルの域を、まだ一歩も出ていないな、と、思ってしまったので・・・。

でも、うん。この本は、これで、あり、だと思います。もしあの「桜庭一樹」の本だ、と、知らずに読んでいたら、「新しい才能を発見しました!期待大です!」くらいの感想を、私は書いたかもしれません。独特の雰囲気づくりが上手で、読ませますね〜。

大人向けの本とはいえ、主人公は高校生です。川村七竈、17歳。旭川の小さな町に住んでいます。東京からしつこくアイドルにならないかとスカウトが来るほどの、有名な美少女であり、小さな町で目立つことは彼女にとっては息苦しいことでしかなく、そのことを「遺憾である」と言います。鉄道マニアで、しゃべり方も古風な、とても変わった子です。

帯にあるような「最高の恋愛小説」として読めば、この本は、七竈と、幼馴染の少年、雪風との、初恋の物語という事になります。七竈と雪風は、母親同士が親友ということで、幼い頃から親しくしており、鉄道と言う同じ趣味を持ち、同じく「異形」に見えるほどの美系であるという事で周囲から浮いており、お互いがお互いだけに心を許している魂の片割れです。2人の切ない初恋に、涙するのも良いかと思います。

でも、わたしには、七竈と、その母親、優奈との関係のほうが、印象的でした。こちらは同じ女性として、恐ろしかったです・・・。母と娘の関係と言うのは、仲が良ければ良いで、悪ければ悪いで、なかなか難しいものですね。優奈という女性は、25歳のある日、突然「辻斬りのように男遊びをしたい」などと思って、1ヶ月の間に7人の男と関係を持ち、誰の子供とも知れない七竈を出産します。しかしその後も七竈を父親にあずけて、たびたびいなくなり、恋をし、時々そのにおいをまとわりつかせて、七竈のもとに帰ってきます。「いんらん」な「育児放棄」の人で、彼女の娘であることは、七竈に肩身の狭い思いをさせてきました。この本で一番読み応えがあったのは、優奈が七竈の髪を切るシーンでした。
要するにわたし、おかあさん、あなたの事を生涯許せない気がするのです。時が、解決するのでしょうか。いんらんなあなたを。なにも省みず、旅を続けたあなたを。
この本の中では、優奈の心情もきっちり描かれており、だから、2人の気持ちが両方読者には知らされていて、痛いほど切実なシーンになっていました。

この本を読んで、思い出さずにいられなかったのが、昔の少女漫画たちです。特に、吉野朔実さん!「ジュリエットの卵」とかあの辺の雰囲気です。その点は、著者も自覚的に書かれたようで、下記のインタビューを読んで、「おお、わたし、一応ちゃんと読めていたみたい。」と、嬉しくなってしまいました。

http://books.yahoo.co.jp/interview/detail/31736441/01.html
| さ行(桜庭一樹) | 00:26 | - | - |
■ 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 桜庭一樹
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
桜庭 一樹

富士見書房 2004-11

自分を人魚だと言いはる、美少女の転校生。引きこもりの兄は、貴族のような美青年。「砂糖菓子の弾丸」を撃つ人々の中で、自分は「実弾」を打つのだと、自衛隊に入ると事を決めている主人公。

噂にたがわず、いい本でした。そしてあらゆる意味で、正しくライトノベルでした。

つまり、子供向けの本は卒業したけれど、大人向けの本は、まだ読みづらい、難しい、と感じる人のための本。テーマもエピソードも、大人向けの本では飽きるほど使われているもので、だからまた使ってはいけないという事はないけれど、やはり大人向けの作品のほうが、レベルが高い、と、感じます。深みもあるし、視野も広いし、演出力も、文章力も、もっと優れた、同じテーマの大人向けの作品を、読んだ事があるように思う。

でも、この本には、ライトノベルならではの良さがあります。少女が少女趣味で何が悪いの!?という、誰かの名言がありましたが、そういう甘ったるい雰囲気がイラストと共に全編を覆っていて、ストーリーの痛さや残酷さを軽減してくれる。ストーリーはまったく一般的ではないけれど、一般的なその年代の子供たちの感情の暗い側面が、存分に描かれている。大人向けの本であれば、無視したり、軽視したりすることが不自然なような人物の視点を、描かずにすませてしまっても、すべてが情緒的に処理されていくので、違和感がない。悲惨ではあるけれど、ある意味ハッピーエンドなラストもライトノベルだから許せるんだと思う。ライトノベルにしては、主人公の「痛い」少女2人が、しっかり自分の「痛さ」を自覚しているあたりが、大人が読んでも同情や共感ができる部分だったりもして。

いい本でした。

内容に触れていないのは、ネタバレをしたくない本だからです。ミステリィじゃないんだからネタバレにこだわる必要もないかもしれないけど・・・この本は・・・。私、途中で全部わかっちゃったんですよね〜。本をある程度読みなれている人なら、たぶん、全部わかっちゃう。わかりやすすぎ!だから、ちょっとのヒントもあげたくないわ。自分で謎解きしてください(笑)
| さ行(桜庭一樹) | 03:09 | - | - |
■ ブルースカイ 桜庭一樹
4150308209ブルースカイ
桜庭 一樹
早川書房 2005-10-07

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肝心な部分は、絶対にネタバレしてはいけないような気がする本。慎重に感想を書きます。

3部構成になっています。1部は中世ドイツを舞台に、ある村で始まった魔女狩りを描いています。主人公は村のよそ者で、おばあちゃんと2人で暮らす子供のマリー。ここで描かれたのは、「子供」がある日突然「大人の女」に変わる時代です。「少女」という存在のまだない時代です。

2部の舞台は、近未来のシンガポール。男女の役割が逆転し、「少女」が絶滅した世界です。主人公はグラフィックデザイナーの青年。ここで1部についての驚きの真相(?)が明らかになります。

そして3部が、現代の鹿児島です。なんと、ここでやっと真の主人公が登場し、物語り全体の筋が見えてくる仕掛けになっています。3部で「アオイソラ」が出てきたとき、タイトル、なんて安易なんだ!と、拍子抜けしたのですが・・・最後まで読んだら違いましたね。ちゃんと意味がありました。

というわけで、プロットがかなりこっていて、努力賞ものです。意欲は買いますし、1部、2部は、それぞれ単独で読めば面白かったです。歴史ものも、近未来ものも、大好きですから。(ただ2部は近未来すぎるというか、現実的に考えれば、もう数十年先の設定にしたほうがリアルだと思いますけど。)

ただ・・・いかんせんバランスが悪い。メインになるべき3部が、内容は薄いし、短いし、軽いのです。もっと3部にページを割き、真の主人公に感情移入できるようにしてくれたら、ラストで何かしら、感情を揺さぶられるものがあったように思います。3部があまりにあっけなくて、惜しいなあ、と、思ってしまいました。

逆に、1部にページを割きすぎです。1部をあんなに丁寧に、色んなエピソードや、登場人物を交えて、描く必要がいったいどこにあったんだろう・・・。絶対主人公はマリーだと思ってしまいました。せめて2部と同じ程度の長さと重さにすれば、バランス取れたんじゃないかなあ。1部・2部・3部、それぞれ同じ位の重さで描いて欲しかったです。

でも、ちょっと桜庭一樹さんを見直した、かも。読み応えのある本でした。
| さ行(桜庭一樹) | 00:49 | - | - |
■ 少女には向かない職業 桜庭一樹
4488017193少女には向かない職業
桜庭 一樹
東京創元社 2005-09-22

by G-Tools

あたし、大西葵13歳は、中学2年生の1年間で、人をふたり殺した。

この帯の言葉の通り、人をふたり殺すにいたる、葵の1年間を描いた物語です。初恋の少年とのエピソードが、かなり切ないです。

ライトノベルから出てきた作家さんとしては、かなり頑張ったなあ、という感想。桜庭一樹らしいです。章タイトルのつけかたとか、好き。「少女」の描き方も、好き。ラストも、好き。でも、ミステリ・フロンティアというレーベルの中では、ちょっと浅いかな〜。表紙やタイトルが素敵なので、期待しちゃうとだめかも。イラスト表紙のほうがあってる。大人の鑑賞にはたえない本・・・のような気がする。

「永遠の仔」を、最近再読したのが、私の敗因かも。つまりは「永遠の仔」の子供時代をリアルタイムで描いたのがこの本なんだなあ、と、思って比較してしまいました。比較対象のレベルが高い、というか、深すぎますね。テーマのわりに、人物の描写も、展開も、浅いし軽いしどうしよう、と、思ってしまいました。残念。
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