「プラネタリウム」の続編にあたる、書き下ろし短編集。「プラネタリウム」も良かったのですが、これも良かったです。ファンタジックな児童文学、というかYAです。それなのに、心理描写は容赦なく現実的で、けっこう苦いです。表紙も綺麗だし、これは、「プラネタリウム」もセットで買っておこうかな。
・第1話「笑う石姫」
合唱部元部長の美香萌の初恋の物語。美香萌は、心に抱え込んだしこりの重みに耐えられなくなると、石を作って落としてしまう、という特異体質を持っています。
泣きたいけれど、わたしは小さい頃から不器用に出来ていた。
涙よりも、小石を落とすほうがうまいのだ。
ラスト、不覚にも、共感してしまいました。いい年して、中学生の初恋に共感(笑)。でも、実際のこの年齢の人は、こういう風に言葉には出来ないと思うので、一人称はちょっと不自然かなあ、って、今ちょっと思いました。石を落とす、という特異体質が、ストーリー自体にはあまり生かされていないのはもったいない気がするんだけど・・・それは「プラネタリウム」シリーズの決まりみたいなもので、そこがいいのかも。
美香萌と晴実と樹莉愛は「プラネタリウム」の「水に棲む」と共通の登場人物です。それから、むかーし川原泉のラブコメマンガで、笑うと花が出てしまうという主人公がいて、それを思い出しました。
・第2話「地球少女」
こういう不思議系気取りの女は、どこかにいそうな気がする。この年で、その裏を読んで言葉にできてしまう少年は、いないような気がする。でも、もしもどこかにいたら、この少年のように苦しいと思う。
・第3話「痩せても美しくなるとは限らない」
「あおぞらフレーク」の美野里のその後が出てきます。主役は、美野里の友人で、BL小説家をめざしている雅世。太っていて、でもダイエットをする気もない雅世が、どんどん痩せていく理由は?
わたしも、十時半を過ぎたら、窓の鍵を開けておこうかなあ。
・第4話「好き。とは違う、好き」。
「とべない翼」に登場した、副委員長の智恵理が出てきます。彼女に憧れていた久覇が主人公です。彼は、智恵理に告白というものをし、お付き合いというものをはじめるのですが・・・。
久覇と智恵理の恋の物語なのですが、それがなんだか余分、という気がします。第1話の「笑う石姫」でもそうでしたが、この年頃の恋愛の、苦いところをちゃんと書くのはすごく上手いなあ、とは思うのです。でも、この物語は、久覇の家族の物語にしたほうが、ずっとすっきりしたはず。なんとなく、結末だけが大筋からずれてしまった印象です。そして結末がすごく印象的だったので・・・大筋がいらない気がするという、なんとももったいない作品でした。